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「涼宮ハルヒの物欲」(春の日差しと鼻毛カッター)


「ねぇキョン、あんた鼻毛伸びてない?」

うららかな春の日差しが教室の窓越しにやさしく差し込み、俺にひとときの睡魔との契約を結ばせようとした春のある日、ハルヒは突然俺に向かってこういった。顔にはいつもの、ハルヒにとって何か面白いことをたくらんでいる、「悪魔のほほえみ」のような表情が満ちあふれている。ハルヒにとっては面白いことでも、ハルヒ以外にとってはとんでもないことの方が多いから、悪魔というより疫病神という表現がいいかもしれない。それにしてもなんでいきなり「鼻毛」なんだ。乙女な高校生が口にするようなセリフじゃないぞ。

ハルヒは俺の「なんで鼻毛のことを」という言葉をいつものごとくさえぎるかのように、手のひらサイズの小さな筒をポケットから取り出し、ピントあわせを無視した素人カメラマンがミニチュア模型の撮影をするかのごとく、その筒を俺の顔に近づける。なんだこりゃ。

「これ、鼻毛カッター! 昨日アマゾンから届いたの! すっごく面白いんだからっ!」

またハルヒの「面白い」病が始まった。ハルヒは最近アマゾンというインターネット上の通販サイトで「妙な」、もとい「不思議な」商品を探し出し買い求めるのが習慣になっている。部室の団長用パソコンのデスクトップには、ハルヒがチェックした色々な「不思議」商品のブックマークでいっぱいだ。少しはブックマークを整理しろ、と注意はしたが「私がわかればいいの」といって聞き分けない。……どうやらそういうこまごまとしたことは嫌いなようだ。

ハルヒは先日も「メイド服が一杯入ったんだ、ウサ耳もある!」と一人で絶叫してはマウスをクリックしまくっていた。秋葉原に徘徊する目的のためなら手段もいとわない、史上最強の物欲集団とも言われている萌えオタクらじゃないんだから、ウサ耳で大騒ぎするのは止めてくれ。前にハルヒと朝比奈さんをバニーガール姿にさせたとき通販で買ったといっていたが、それもここで買ったのだろうか。

ハルヒはその時はそんな俺の思いも気にせずに、ぶつぶつ言いながら次々とブックマークをディスクトップ上に増やしていた。また色々なオプションを買い集めて朝比奈さんを泣かせるつもりなのだろうかと思うと胸が痛い。……だが少し、見てみたい気もする。

ハルヒは俺のそんな思いを見透かしたのかどうかは知らないがちょっとだけ口をムッとへの字に曲げて、

「なにぼけっとしてるのよ! ほら、鼻出しなさいよ」

と俺の首根っこをつかみ、顔を引き寄せて例の筒を鼻に突っ込んだ。おいハルヒよ、うら若き乙女が昼間から鼻毛切りを振り回して純然たる男子生徒の鼻に突っ込むのを百歩譲って良しとしたとしても、その鼻毛切りとやら、前に誰か別の人に使ってたんじゃないのか?

以上、別名「涼宮ハルヒと鼻毛カッター」の試し書きおしまい。今後、「動き」がある場合には→【Here】をはじめGarbagebooks.comの方で色々やります。まぁ原作の小説を読んでもう少し心理描写などを学ぶなど前準備が必要だろうけど。反応なければそのままかもしれないし。



……にしても、「涼宮ハルヒ」「鼻毛カッター」(涼宮ハルヒと鼻毛カッター)でキーワード検索される可能性など皆無だと思うのだけどな(笑)。実証実験にもほどがある、と

谷口「うい〜っす。WAWAWA 忘れ物〜♪」
「おうあッ!」
「……すまん。ごゆっくり〜!!」

おい、ここにもかよ。