パン市場、原材料費の高騰に伴う「金額ベース」で拡大中
2009年02月10日 08:00
矢野経済研究所は2009年2月9日、2008年度におけるパン市場に関する調査結果の報告書「2009年版パン市場の展望と戦略」の発売を発表し、その結果の一部を明らかにした。それによると2007年度(2007年4月から2008年3月)のパン市場は原材料費の高騰に伴う価格上昇によって、市場規模が拡大する傾向であることが明らかになった。種類別では価格の上乗せが容易だった「食パン」と、コンビニでプライベートブランドの品数が増えつつある「デニッシュ」が成長株であるという(【発表リリース】)。
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今調査結果は2008年10月から12月にかけて、同研究所研究員が直接面談して得たデータ、さらには文献調査を併用したもの。
それによると2008年度(2008年4月から2009年3月)にかけてのパン市場規模は前年比で+2.6%の1兆4013億円規模になるとのこと。20年来ほぼ横ばいで推移してきたパン市場が久々に拡大傾向を見せているが、これは「消費量が増大した」のではなく、原材料高騰に伴い「各社が一斉に価格アップした」ことによるもの。要は「金額ベースでの市場が拡大した」のであり、「消費量ベースでの市場が拡大したわけではない」ことに注意を払う必要がある。
パン市場動向(メーカー出荷金額ベース、冷凍パンの生地を含む)
パン市場動向(2003年度の値を100%とした時の各年度の値の割合)
過去五年間の流れとしては「デニッシュ」と「菓子パン」が継続的に伸びを見せている。これは各メーカーが積極的な商品開発を行ったことや、コンビニなどにおけるプライベートブランドの展開が功を奏したという。一方で食パン・調理パンが減少傾向にあったのは、やはりコンビニにおける商品開発の優先順位の低さによるもの。ただし調理パン以外は2007年度における「原材料費高騰による販売価格の上乗せ」で「金額ベースとしての市場規模」はいずれも拡大を見せている。
今後のパン市場動向だが、各社が商品開発に一層勤しむ一方で、新しい販売スタイルの展開や「駅ナカ」の展開などで販売エリアは拡大しつつあるものの、全般的には高齢化の進行と人口減少を背景に成長率は鈍化。5年後の2012年度までには市場規模も横ばいから微減に達すると推測している。
昨今の小麦価格などの高騰でパンの値段が一斉に引き上げられ、パン市場には割高感がまん延した(各消費者アンケートでも「食パン」などのパン類は「値が上がった」商品の筆頭に挙げられる)。しかし各社とも新しい商品を続々と送り出し、また商品の大きさを小さくすることで価格を抑えるなど、さまざまな仕組みで市場の維持拡大を模索している。高齢化の進行でパン市場が縮小してしまう可能性に懸念はあるが、例えば「お年寄りでも飛びつきたくなるような趣向のパンの開発」など、各社のアイディアが市場に反映されることになるのだろう。
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