【更新】日本綜合地所倒産の直前に起きたことを覚え書きしておく
2009年02月08日 12:00
先日【今年倒産した上場企業をグラフ化してみる(2009年2月5日版)】でもお伝えしたように、2009年2月5日に不動産業の[日本綜合地所(8878)]が会社更生法を申請し、事実上の倒産を迎えた。負債総額が2000億円近く(グループ会社もあわせると2000億円以上)と規模が大きいことで多くの報道機関がこれを取り上げていた。その過程で、あまり伝えられていない話ではあるが気になる事柄があったので、ここで覚え書きも兼ねてまとめておくことにする。
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今や大型倒産企業として名を馳せてしまった「日本綜合地所」だが、つい先日までは別件で名前が挙がっていた。いわゆる「内定取り消し」に関する問題だ。昨今の「派遣切り」問題で世間が盛り上がっていることもあり、取り消しをされた学生・労組側に有利に話は展開。[日経新聞][全国一般東京東部労組]によれば、2月3日の時点で日本綜合地所側から謝罪を明記した文面の他、学生一人当たり100万円の補償金(53人いるので計5300万円)、さらに組合に対して「解決金」(金額は非公開)が支払われたという。
「解決金って何よ? 」というツッコミがあるのはさておき。今件については2月5日の時点で【レイバーネット】で労組側スタッフの言及として、「こうした中で会社側は当初42万円だった補償金を100万円に増額し、さらに「解決金」を支払わせる成果を勝ちとることができました」「今後も内定取り消し問題に取り組み、企業の社会的責任を追及していきます」などとその成果を(先の労組の正式発表文面に加える形で)宣言していた。
そしてその日の夕方に、日本綜合地所は会社更生手続を申し立てることになる。
負債総額が2000億円あり、今後も資金繰り・業界情勢が不安定な中で、たかだか5300万円(+解決金・金額は不明)で何かが出来たとは思えない。恐らくは2月5日の会社更生手続きが一日伸びて週末にずれ込むくらいだろう。また、「不動産不況の中で不安定な不動産関連会社にわざわざ就職するなんて」と学生たちを責めることもできない。仕事の好き嫌い・夢もあるし、少なくとも直近の決算概要を見れば(今期予想はともかく)過去数年間は絶好調にあったからだ。それに就職活動をしていた時期には、ここまで情勢が悪化することなど、誰も予想はできまい(直近の業績予想を見ればためらったかもしれないが)。
日本綜合地所の連結決算概要
また、日本綜合地所側にしても2月初頭の時点で「もう立ち行かなくなるから、せめて内定取り消しの学生たちには十分な手当てをしておこう」という考えが働いていたがための、組合側曰く「支払わせる成果を勝ち取る」結果がもたらされたのかもしれない。このあたりの真相は関係者の胸のうちにしまわれるのだろうが、債権者や株主にとっては複雑な気分には違いない。
景気後退期の中で、企業が業績不振に陥り、人員を整理するのはリストラクチャリングの手段の一つである。ワークシェアリングという考え方もあるが、固定費などの問題もあり思ったほどの効果は生み出さないし、個々の従業員の心理がそれを許すかという問題もおきてくる。ベストな道は皆が考えていくしかない。いわゆる人員削減も「泣いて馬謖を斬る」ではないが、行わざるを得ない場合もあるだろう。
今回の日本綜合地所の破たんと、その直前におきた「内定取り消しへの補償金と解決金の満額支払い」は、現在の不動産業界だけでなく、雇用問題をもあわせ、色々な問題提起を投げかけるのではないか。そんな気がする。
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