ワークシェア 考え方はやや賛成 だけどホンネは「対岸の火事」
2009年02月04日 08:00
モバイルリサーチを展開するネットエイジアは2009年2月3日、ワークシェアリングに関する携帯電話による意識調査の結果を発表した。それによると、ワークシェアリングという考え方そのものには賛同する意見が過半数を占めているものの、実際に「労働時間と手取りを4割減らして実施する」という具体例を挙げた上での賛否となると、多くが反対の意向を示していることが明らかになった。「総論賛成・各論反対」ではないが、具体的に自分に火の粉が降りかかるような状況を想定すると、やはり自己防衛本能が働くようだ(【発表ページ】)。
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今調査は2009年1月23日から27日、20~59歳の携帯電話利用者に対して行われたもので、有効回答数は543人。男女比は51.0対49.0、職業形態比は正規雇用61.7%、非正規雇用38.3%。
↓
1.労働力の調整→雇用調整
(一人当たりの労働量は維持)
2.一人当たりの労働量の調整
→ワークシェアリング
(労働力=従業員数は維持)
「ワークシェア」「ワークシェアリング」とは言葉の通り(「仕事(ワーク)」を「分ける(シェア)」)、仕事の絶対量の減少に対して従業員の解雇などで対応するのではなく、従業員間で仕事量の再分配(主に労働時間)を行い、雇用を維持するという考え方。従業員数=労働力の調整ではなく、従業員一人当たりの負担を減らして対応するという考え方が、従来の雇用調整とは異なる点。ただし負担仕事量が減るのだから、当然一人当たりの手取りも減らされることになる。海外では特にヨーロッパにおいて浸透が進んでいる。
昨今の雇用不況の状況下において、この「ワークシェアリング」の考え方を企業が導入することについてどのように感じるか、単一回答で尋ねたところ、全体では過半数が「賛成」の意向を示していた。反対は2割強に過ぎず、「判断がつきかねる」という中立派が3割近くに達している。
企業がワークシェアリングを導入することについてどのように思うか
興味深いのは若年層よりも高齢層、平社員よりも部課長、さらには役員クラスの方が賛成する意見が多いこと。中長期的な成長スタンスを考えた上で、「企業にとってはもっとも価値ある財産ともいえる人材を手放すのは惜しい」という考えが、経営を考えるようになる頭では思い浮かんでくるのだろう。特に現場と密接に関わりがあり、企業全体の戦略をも頭に入れねばならない部長が「賛成」「やや賛成」をあわせた「賛成派」の意見において、もっとも大きな数字を示しているのが印象的だ。
一方、「ワークシェアリング実現のため、給与を6割・労働時間を60%に短縮する」という具体的な数字を挙げ、賛成するか否かを尋ねてみたところ、先の意見とはうってかわり半数近くが反対の意を唱える結果となった。
「ワークシェアリング実現のため、給与を6割・労働時間を60%に短縮する」についてどう思うか
全体では「賛成」はわずか8.1%、反対が45.5%と半数に迫る勢い。一方で、「どちらともいえない」という意見も半数近くに達しており、具体的な数字を突きつけられて戸惑う様子が容易に想像できる。
注目すべきは今件「ワークシェアリング」において論争のきっかけともなった、そしてもっとも適用される可能性が高いともいえる非正規雇用者ですら、賛成は5.8%に過ぎないことだ。雇用は維持されるかもしれないが、ただてすらキツい手取りがさらに減らされるのはたまらない、というのがホンネだろう。
「総論賛成・各論反対」という言い回しを冒頭に使ったが、まさにワークシェアリングはこの言葉通りの様相を呈している。仕事量が同じ状態で雇用を守るためには、一人当たりの仕事量を減らさねばならず、それはすなわち一人当たりの労働対価の減少も意味する。さらに注意すべきは、雇用が維持される以上、会社が負担する固定諸経費(福利厚生費など)もそのままだから、基本的に「労働量減少分以上の手取り減少の可能性がある」ということ。
これを「差額は企業が負担する」ということになれば企業側の負荷が高まり、今度は企業自身の破たんリスクが上昇してしまう。従業員の雇用を維持しようとして企業そのものが倒れてしまったのでは実もフタも無い。
単純に「労働量を分け合おう」では済まないのがワークシェアリングの難しいところ。今回の調査結果も、その一端を示したものといえよう。
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