日銀、金融機関保有の株式買い入れ再開を発表
2009年02月03日 19:30
日本銀行は2009年2月3日、同日開催した政策委員会・通常会合において、金融機関が保有する株式の買い入れを再開することを発表した。買い入れ総額は1兆円、上場株式でBBBマイナス相当以上、1金融機関につき2500億円が上限。現在財務大臣・金融庁長官に認可を申請しており、認可取得以降所要の準備が整い次第、買い入れを開始する(【発表リリース、PDF】)。
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今回日本銀行が決定した、金融機関保有の株式買取はかつて2002年11月から2004年9月までにも行われていた。もっとも前回は法律上の規制(Tier1と呼ばれる中核的な自己資本以上に保有していた株式をそれ以内に減らさねばならない)によるものだったが、今回は「金融機関による今後の株式保有リスク削減努力を支援し、これを通じて金融システムの安定確保を図る観点から」(リリースから抜粋)実施が行われる。
要は金融機関の決算対策であり、これ以上株価が下落した場合に各金融機関がさらに損失を広げて破たんするリスクを軽減するために行われるもの。もっと簡単に表現すると「銀行さん、持ってる株式、さらに値が下がったら損失もっと増えて決算が大変だよ。うち(日銀)が買い取ってあげようか? 」とアプローチをかけた次第。
今回発表された買い入れの概要は次の通り。
・買い入れ総額……1兆円。
・買い入れ期間……2010年4月まで。
・買い入れ対象株式……上場株式(BBBマイナス相当以上)。銘柄別の買い入れ限度も設ける。
・買入価格……時価。
・買い入れ対象金融機関……「株式保有額が自己資本(Tier1)の5割・または5000億円を超える先」「自己資本比率規制上国際統一基準を採用している先のいずれか」で希望する先。
・買い入れ金融機関毎の上限……2500億円。
・買い入れ後……2012年3月までは売却せず。その後2017年9月末までに売却。
※前回は総枠3兆円が用意され2兆0180億円が購入された。
なお日銀に株式を買い取ってもらった場合、当然ながらその時点で利益・損失(恐らくは損失)が確定してしまう。金融機関側としては「これ以上保有株式の株価が下がって損失が拡大したら……」という懸念がある一方、「ここで売ってしまうと損失が確定してしまう……」という不安もある。後者の場合、現在の株価水準がほぼ底値圏と判断しているのなら、「これ以上は下がらず、今後上がるだろうからねわざわざここで売る事はない」という結論が導き出されうるため、今回の「日銀による株式買取」は金融機関にとってそれほど嬉しい話ではない。
ただし銀行側にしてみれば「さらに株価が下がり、しかも買い手が少なくてさらなる株価下落を誘発してしまう」という状況が発生した場合、時価で相当量を買い取ってもらえる相手が登場したことになるわけで、それなりの効果は期待できる。
注意しなければならないのは、今回の日銀の決定は「日銀が市場から株式を買い取ること」でもなければ、「日銀が直接金融機関の株式を買い取り株主になること」でもないということ。あくまでも金融機関の財務安定策として、不安定要素の上場株式の買取をしますよ、ということに過ぎない。注意が必要である。
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