ワークシェア 心底賛成約1割 渋々ながらは半数に達す
2009年02月14日 12:00
gooリサーチと読売新聞は2009年2月13日、「ワークシェアリング」に関する調査結果を発表した。それによると、企業の正社員は賛意の度合いの違いこそあれ、過半数の人が肯定の意を示したことが明らかになった。さらに自分の勤め先が行う可能性を示唆した場合にどのような心境になるかを「具体的な事例を挙げずに」尋ねたところ、こちらも賛意の度合いに差はあるものの、肯定派が7割近くに達していた。別機関で以前行われた、似たような調査と比較すると非常に興味深い結果内容といえる(【発表リリース】)。
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今調査は2009年1月下旬、インターネット経由で行われたもので、有効回答数は1077人。男女比・年齢階層比は非公開。また、本文中に「企業の正社員はどう受け止めているのか」という表記があることから、対象は正社員に限定されているものと思われる。
↓
1.労働力の調整→雇用調整
(一人当たりの労働量は維持)
2.一人当たりの労働量の調整
→ワークシェアリング
(労働力=従業員数は維持)
「ワークシェア」「ワークシェアリング」とは言葉の通り(「仕事(ワーク)」を「分ける(シェア)」)、つまり仕事の絶対量の減少に対して従業員の解雇などで対応するのではなく、従業員間で仕事量の再分配(主に労働時間)を行い、出来るだけ雇用そのものを維持するという考え方。従業員数=労働力の調整ではなく、従業員一人当たりの負担を減らして対応するという考え方が、従来の雇用調整とは異なる点。ただし負担仕事量が減るのだから、当然一人当たりの手取りも減らされることになる。海外では特にヨーロッパにおいて浸透が進んでいる。
この「ワークシェアリング」という考え方について、単一回答でどのような考えを持つかについて尋ねたところ、肯定派は56%と過半数に達していた。
ワークシェアリングに対してどう考えているか
ただし心底肯定する意見は8%に過ぎず、表現を変えれば「心情としては否定だが、現状を考慮すると賛成せざるを得ない」という「イヤイヤ賛成」だけで半数近くに達していることも確認できる。この意見と否定派の筆頭「なるべくなら、やるべきではない」とは表裏一体の意見とも言え、「(最終的に肯定・否定はともかく)やりたくは無い」と考えている人が8割超である(「絶対にやるべきではない」も含める)と考えることもできよう。
さらに多少具体的に、自分の勤め先が「ワークシェアリング」を行うとしたら、どのような考えを持つか尋ねたところ、心境は別として賛成する人は全体の68%にも達していた。
あなたの会社が「ワークシェアリング」を実施するとしたら?
ただしこちらも「ワークシェアリング」の考え方そのものの問いと同じように「積極的に賛成」はわずか11%に過ぎず、「渋々ながら」、つまり「心境としては反対意見ではあるが」「受け入れざるを得ない」という回答だけで過半数を占めている。
心底賛成約1割
渋々賛成半数に登る
リリースでは一貫して「ワークシェアリングに賛成している人が多い」ことを強調しているが、調査の上での選択肢の文面・数字によく目を通すと、「概論(考え方そのもの)・各論(もし自分の会社で!?)共に心底賛成している人は一割程度しかない」「全体の半数は『考え方としては反対の方向。できることなら拒否したい。ただ、社会情勢などをみると、賛同せざるを得ない』という不満に満ちた賛成」であることが分かる。この結果は先に【ワークシェア 考え方はやや賛成 だけどホンネは「対岸の火事」】でお伝えした、ネットエイジア調査の結果に近く、納得のいくものといえる。
今件では単に「自社で」としか条件づけをしていなかったが、ネットエイジア調査では「給与6割・労働時間を6割」と具体的な数字を挙げて「これならどう思うか」を尋ねている。その結果としては「賛成1割」「どちらともいえない4割」「反対4割」で、今調査結果より強い拒否反応が出ている。やはり単純に「自社で実施」より、「自社でこれだけの数字で実施」と具体例を挙げた方が、リアルな状況を想像でき、その上での反応を返せるのだろう。
人材は企業の宝であり、短期では取得し得ない大切なもの。企業が中長期に継続稼動する「ゴーイングコンサーン」の考えで経営が行われるのなら、解雇を乱発するのも問題。長期的な成長には欠かせない経営資源を自ら切り捨てているのと同じだからだ。それはまるで来年の種もみを、今年のうちに食べてしまうようなものである。その一方、あまりに極端なワークシェアを行うことで、従業員全員の生活水準・モチベーションが落ち、それが業績をさらに悪化させてしまうのでは、元も子も無くなってしまう。
平等論やトリアージ的な考え方、「カルネアデスの板」の話などもあわせ、人間の心理や社会情勢、そしてもちろん企業の中長期的な維持と成長を考慮し、個々の事例に沿って雇用の維持と整理は検討されるべきだろう。一律「ワークシェア賛成」「反対」で世論を統一し、「それに従わなければ全部罪悪」という考え方は、きわめて危険といわざるを得ない。
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