自動車大手10社の決算予想をグラフ化してみる
2009年02月11日 12:00
先に【人件費2割削減、スポーツ活動休止、生産量2割減……赤字転落の日産でゴーン氏が断行する「コストカット」】で示したように、【日産自動車(7201)】は2009年3月期連結決算の業績見通しの下方修正を発表、純利益も赤字に転落した。またこれまで幾度と無く報じられているように、自動車大手も北米をはじめとした海外市場の不調により軒並み2009年3月期の決算予想を下方修正している。今回は大手10社の決算予想・第3四半期決算が出揃ったこともあり、直近の業績予想をグラフ化してみることにした。
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大手10社とはマツダ、三菱自動車、富士重工業、いすゞ、トヨタ自動車、日野自動車、日産、ホンダ、スズキ、ダイハツ(順不同)。それぞれ所有している有価証券の評価損はもちろん、日本国内、北米や欧州をはじめとした諸外国市場での販売不振により、業績予想を大きく下ぶれさせている。その最新の予想と「前回」予想をグラフ
主要自動車メーカー10社の2009年3月期連結業績見通し(クリックで拡大表示)
主要自動車メーカー10社の2009年3月期連結業績見通し(営業・純損益のみ)(クリックで拡大表示)
上のグラフは売上、営業損益(本業の損得)、純損益(本業、本業以外、特別な損得を加えた最終的に「どれくらい儲かったか」)を「前回予想」と、直近の見込みで比べたもの。現時点でまだ2009年3月期は終了していないため、あくまでも見込みでしか無いが、直近のデータを参考にしているので、よほどのことが無い限り大きなぶれはないはず。また、直近の一つ前のデータからの比較となるため、例えばトヨタ自動車のように何度と無く業績修正をしている企業の場合、前回との差異があまりない(、そして前回も結構目が当てられない業績)状態であることも。
上のグラフでは売上が大きすぎ、正直、営業利益や純損益が分かり難い。そこでその二つだけを抽出したのが下のグラフ。
概要を箇条書きにすると次のようになる。
・自動車大手10社といっても、売上規模だけを見ると大手(トヨタ+日野、ホンダ、日産)とその他の中堅とに分類される。
・各社とも売上を落としているが、営業損益の落ち込み「額」は売上ほどではない(「割合」なら逆に、売上の減少割合をはるかに超えた割合で利益を落としている)
・現時点で営業損益が赤字なのは5社、純損益が赤字なのは7社に達している。
・ホンダは前回予想からかなり値を落としているが、それでもなお相当な利益を予想している。
当然今期開始時にはすべて「今年は最終黒字」を予想していたのだから、大変な急落ぶりであることがあらためてわかる。特に昨年後半以降の(自動車・金融)市場の冷え込み振りと円高により、自動車産業の受けた影響が大きいことが把握できるというもの。
また、売上高の予想変化の減少率と比べ、営業・純損益が大きく下ぶれしているのは、先の電機大手の説明と同じ。つまり景気下降に伴いさまざまな特別損失(有価証券評価損や、事業の撤退・リストラクチャリングなどに伴う損失)を計上していることによるもの。また、固定費の存在(ひとつも商品が売れなくとも発生する費用のこと)も忘れてはならない。
営業利益合計はマイナス3760億円。
昨年度実績はプラス4兆7000億円。
ちなみに現時点での最終予想において、10社の営業損益をすべて足すと-3760億円。昨年度実績が4兆007億2100万円だから、自動車産業だけでこの1年間において、約4兆3000億円の営業損失(本業の損)が発生した計算になる。ちなみにこれが、昨年度と今年度の10社の営業損益を足したグラフ。
自動車大手10社の営業損益における昨年度実績と今年度予想比較
これら大手自動車メーカーは、電機製品メーカー同様に、売上を製品の輸出に頼るところが大きい。直接製品を売るだけでなく、部品なども大きく関与してくる。海外でも去年までは原油価格の高騰、昨年後半以降は急激な景気後退で消費が減退していることに加え、急激な円高で日本商品の価格的魅力が薄れたのが痛いところ(例えば、日本国内で同じコストで生産しても、円高が2倍に進めば、海外での販売価格も2倍に跳ね上がる)。特に日本の自動車産業の象徴ともいえるトヨタ自動車が、何度も下方修正を発表したことで、多くの人に「自動車産業って大変なんだな」という実感がわいてきたはずだ。
2009年度(2010年3月期、2009年4月~2010年3月)は、2008年度以上の厳しさが予想される。家電業界と比べれば景気が悪化する秋以前からガソリン高騰で自動車が買い控えられていたため、業界不況のタイミングによる2008年度と2009年度との格差はさほど大きなものではない。もちろん為替や消費動向の点で、安心できるような状況ではないのは事実。今後各社とも、先に日産が発表したように、新しい商品戦略はもちろんのこと、全般的な研究開発生産体制の見直しがせまられることだろう。
また、家電業界同様に今回の自動車業界でも、「営業損益」と「純損益」の間にある「特別損益」の中には、この「戦略」「見直し」を大規模に行う、体制変革用の費用が含まれていることを忘れてはならない。発生した追加費用の少なからぬ額は、体制のスリム化と今後の展開に備えたものでもある。単に純損益が大幅にマイナスへと触れたから、即「もうダメだ」という考えは短絡に過ぎるといえよう。どれだけ有効に費用を活用できるか、体質を現状に合わせられるかで、来年度の業務・財務成績も変わってくるに違いない。
もっとも、一年間で大規模な成果が見られるような生易しい状況でないのも事実ではあるが……。
※2009.2.11.グラフと本文を一部差し替えました。ご指摘いただき、ありがとうございました。
■関連記事:
【電機大手の決算予想をグラフ化してみる(完全版)】
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