家畜にも自由と人道的配慮を!? カリフォルニア州の「鳥かご禁止令」の詳細判明
2009年01月17日 12:00
先に【カリフォルニア州に吹き荒れる「逆」ゴールドラッシュ】で、アメリカのカリフォルニア州がさまざまなトラブルを抱え財政危機状態におちいっていることを紹介した。その中で「養鶏業者への鳥かご禁止令」について触れた。この条例のおかげで州内の業者の多くが逃げ出し、卵の価格が高騰してしまったという話だ。これについて詳細を解説した記事を見つけることができたので、ここに紹介しておく。2008年11月10日に掲載された、ナショナルジオグラフィックの【住民投票で家畜が勝ち取った権利】である。
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詳細は元記事で確認してもらうとして、概要を箇条書きにすると次のようになる。
・カリフォルニア州では全米の食用卵の6%が生産。2000万羽の産卵鶏がいて、90%はバタリーケージ(専用の小さな鳥かご)で飼育されている。鶏卵産業の規模は3億3700万ドル。
・民主党によって提出された法案。全米人道協会が強力に後ろ盾。州人口の2/3近くが賛成して可決。
・産卵鶏、妊娠した豚、肉牛の子牛は現状より大きな囲いの中で飼育しなければならない。
・具体的には自由に家畜たちが行動できるスペースを確保する必要がある。バタリーケージやきゅうくつな木箱などは規制対象。
・2015年1月1日までに段階的に撤去する義務がある。
・「愛情を持って動物に接している多数の農業従事者・牧場労働者」への中傷という意見も。
・法案可決前後の時点で「コスト急騰による産業の弱体化、失業者の増加」などを懸念する声が上がっている。
案の定、法案可決からわずか2か月で、カリフォルニア州は卵の高騰にさいなまれる結果となった(ただし、今法案が民主党主導で可決されたこと、先にカリフォルニア州の現状を語った記事が共和党員であることを考えると、養鶏業者の現状については多少誇張が混じっている可能性もある)。
法案を可決した側は「コスト増加といっても卵1つあたり1セント以下だ」と、鼻からコスト増による懸念を問題視しない姿勢をとっている。さらに病気のリスクが減るとの研究結果も提示しているという。しかしながら「1セント以下/卵1個」の計算がどのような式で算出されたのかは不明。そして一時期に大量の資金を関連業者に求めることに違いはない。そのようなリスクを考えれば、仕事をたたむ・他の州に逃げ出す業者が相次ぐのは容易に想定がつくはず。
果たして今後、法案の賛成派が主張するように「病気のリスクも減り、家畜たちも喜ぶ。そしてそれらを見て賛成派もご満悦」な状況になるのか、それとも「カリフォルニア州で養鶏業などの家畜業が衰退し、行き場を失った家畜たちと、職を失った業者たち、高値で商品を買わされる住民たちが悲しむ」状況を生み出すのか。その状況は今しばらく様子を見ないと明らかにならない。
とはいえ、先の記事でも触れたように、一部の声高な人たちの主張に扇動されて(「先導」ではない)世の中の仕組みが変えられ、彼ら自身は満足するかもしれないが、結局多くの人たちが苦しむ状況に陥るありさまは容易に想像ができるだろう。
(最終更新:2013/07/31)
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