シートベルトとエアバッグのデータをグラフ化してみる~「戦後の交通事故・負傷者・死亡者をグラフ化してみる」後日談

2009年01月07日 12:00

シートベルトイメージ先日【戦後の交通事故・負傷者・死亡者をグラフ化してみる】で警察庁発表のデータを元に、戦後の交通事故絡みのデータをグラフ化し、その中で1990年以降の「劇的な交通死亡事故の減少」について触れた。減少原因にはいくつもの要素があり、それらが積み重なった結果といえる。そのうち「シートベルト」と「エアバッグ」について貴重な意見をいただいたので、ここでまとめてみることにしよう。

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その意見とは、ソーシャルブックマーク【newsing】のコメントによるもの。いわく、

医療技術もさることながら、個人的には、シートベルト着用の浸透とエアバッグの普及が効果大だと思いますね。今時は、もう怖くてシートベルトなしで運転する気にならないもんね。また、90年代後半からエアバッグ搭載が急速に普及したのとグラフのトレンドが一致しているように思えます。幸い、まだお世話になったことはありませんが・・・【参考資料】
(rastmanさん)


というもの。

一連の記事で参考にした警察庁の資料【平成19年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について(PDF)】には、やはり死亡者数減少の原因の一つとして「シートベルトやエアバッグの普及」が言及されている。そして実際に、それが事実であることがデータからも裏付けられている。

シートベルト着用有無別致死率推移
シートベルト着用有無別致死率推移
エアバッグ・ABSの生産車両に対する装着率推移
エアバッグ・ABSの生産車両に対する装着率推移

上のグラフは「死傷」事故における死亡者のうち、シートベルトをつけていたか否かで区分した、致死率の割合。この値が小さいほど「交通事故を起こしたけどケガで済んだ」ことを意味する。例えば2.0%だった場合は「50人分の死傷事故のうち、1人の死者が出た」計算。一様にシートベルト着用者の致死率は低く、0.50%(200人に1人)を切っている。一方非着用者の割合も少しずつ減少しているが、これはシートベルト以外の要因(法令順守、取り締まり強化、車体構造の改善など)によるもの。

シートベルト着用の有無で
交通事故の致死率は9.6倍も変わる

ちなみに直近データの2007年において、シートベルトの着用の有無で致死率は(確率論的に)9.6倍も違う計算になる。つまり、死傷事故を起こした場合、シートベルトをしていないとしていた場合と比べ、死ぬ確率が9.6倍も増えるわけだ。

ABS(Anti-lock Brake System、緊急時にブレーキを踏みっぱなしにしても自動的に解除・作動を繰り返し、ブレーキの効き目をよくする装置。ブレーキがロックして安定性が損なわれるのを防ぐ働きを持つ)やエアバッグについては致死率との関連性を示すデータは公開されていないが、普及率の向上が交通死亡事故を防ぐ一因となっていることは間違いない(なおエアバッグの装着率データは2006年から公開されていない。実質的に100%になったからだと思われる)。

さて、肝心のnewsingで指摘された資料だが、これは【日本自動車工業会】のサイト内における資料の一つ。【衝突安全装備の普及率(保有ベース)】という題目で、シートベルトの特殊装置やエアバッグなどの普及率がグラフ化されている。両者とも1990年代から普及しはじめたもので、1990年においてはほとんどゼロを示しているのがポイント。

衝突安全装備の普及率(保有ベース)
衝突安全装備の普及率(保有ベース)
1946年~2008年の交通事故発生件数・負傷者数・死者数(人)
1946年~2008年の交通事故発生件数・負傷者数・死者数(人)(再録)

・サイドドアビーム……ドア内部に装着された補強材。側面衝突時の安全策。
・シートベルト非着用警報灯……シートベルトを着用していないと点灯するランプ。ブザータイプなどもあり、あわせて「シートベルトリマインダー」と呼ばれる。
・エアバッグ(デュアル)……運転席だけでなく助手席にもエアバッグが装備されているもの。
フォース・リミッターイメージ・シートベルト フォース リミッター……衝突時にシートベルトによる拘束力を一定レベルに保ちながらシートベルトを少しずつゆるめることで、胸の部分に加わる衝撃を緩和する装置。
・シートベルト プリテンショナー……衝突時にシートベルトを瞬時に巻き取り、身体の上体部分の前方移動を素早く抑え、シートベルトの効果を高める装置。


なお上記イラストにもあるように、シートベルトとエアバッグはセットで装備されてこそ最大の効果を発揮する。どちらか一方だけでは効果は半減以下となってしまうので注意が必要。

ともあれ、これらの技術の導入・普及が、交通事故による死者減少に大きく貢献していることが改めて把握できよう。関係各社・各員に感謝しつつ、さらなる普及と効率化、性能のアップに期待したいところだ。


■関連記事:
【並べられた肖像画を見てハッとさせられる交通安全のチラシ】【戦後の交通事故・負傷者・死亡者をグラフ化してみる】

(最終更新:2013/07/31)

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