【更新】アメリカ有力紙NYTが「聖域」の1面広告を解禁
2009年01月07日 08:00
アメリカの有力新聞社ニューヨーク・タイムズ(The New York Times、NYT)は1月5日、同社新聞が1月5日の朝刊から、1面(トップのページ)に写真付きの広告掲載を始めると発表した。これまで同紙では内部に広告を載せることはあっても、1面に掲載することはなかったという(【発表リリース】)。
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該当する「NYT初のトップページ広告」
リリースなどによると同紙は以前から文章による広告を新聞内部に折り込み、数年前からは画像付きの広告枠の販売も開始した。しかしトップページは「伝統的にこの部分への広告展開は『商業主義を前面に押し出しすぎる』との懸念」から、慣習的に広告を掲載してこなかった。ちなみに同じような方針を採っているアメリカの新聞社はワシントンポストなど数社で、ウォールストリートジャーナル、USAトゥデー、ロサンゼルスタイムズはすでにトップページの広告枠を販売している。
今回、1月5日から広告を掲載しはじめたことについてNYT側では
1929年の世界大恐慌以来最悪の経済的な状況に陥ったことに対する最大限の譲歩
(In its latest concession to the worst revenue slide since the Depression)
と説明している。
同時にこの場所への広告展開については「この場所は本当に目立つ」「非常に魅力的」と広告主に対するアピールを欠かさない。
ちなみに第一号となった広告はアメリカの3大ネットワークの一つ、CBSの番組宣伝広告。突然の広告掲載開始に驚いた読者も多いだろうから、効果の高さが期待できよう。
リリースでは最後にNYTの経営状況についてざっと説明しているが、それによると
・2008年11月の時点で2007年11月から収入は13.9%減少。
・1月から11月までは7.6%減少。
・NYTメディアグループ(NYT、インターナショナルヘラルドトリビューン、WQXR-FMラジオ、ベースラインスタジオシステム、オンラインデータベース)の11月における収入は前年同月比で21.2%減少。
というさんさんたる状況であることが分かる。
1面下の広告枠がいくらで取引されたのか、NYTでは非公開としている。インパクトの高さからニーズはかなりあるものと思われるが、いわく「現在の市況でどれほどの価値が(市場原理によって)形成されるかはまだ不明」とする一方、「企業の広告出稿費が急速に低下している(ので、あまり期待は出来ないかも)」と言及し、「特等席」新たに用意しても順風満帆ではないことを匂わせている。
日本の新聞社ではごく当たり前のように、トップページの下面に広告が展開されている。例えば[読売新聞]でシミュレートすると、「夕刊一面」「カラー」「3段」「全国」(朝刊で「一面」指定はできず。特殊枠なのかもしれない)で1463万8000円という見積もりが立つ。また【「私は、ここにいる」アニメ版『涼宮ハルヒの憂鬱』第二期制作正式発表】で紹介した、朝日新聞に掲載された『涼宮ハルヒの憂鬱』第二期の全面広告は数千万円(3~4000万円?)との話がある。これらを総合すると、日本で同じようなことをすれば数千万円単位の額が動くものと思われる。それだけ「貴重なスペース」であるというわけだ。
経済的な事情があるとはいえ、トップページのいわば「聖域」に広告を掲載することはNYTにとっては苦渋の選択に違いない。今件はアメリカの新聞各紙は非常に難しい状況にあることを指し示す、一つの「事件」として注目すべき出来事だろう。
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