音楽CDの売れ行き推移をグラフ化してみる
2009年01月26日 08:00
日本レコード協会は1月19日、2008年におけるCDやDVD、カセットテープなどの音楽ソフトの生産額をはじめとする各種データを発表した。それによると2008年の音楽ソフト生産額は3617億7500万円・生産数量は3億0349万枚となり、それぞれ前年比で8%減・5%減と減少傾向を見せた。最高値を記録した1998年(6074億9400万円、4億8017万7000枚)と比較するとそれぞれ40.4%、36.8%の減少となる(【発表ページ】)。
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2008年における主な生産実績は次の通り。
・シングルCD(8センチ・12センチ合計)
5372万7000枚(-13%)、399億4500万円(-15%)
・アルバムCD
1億8872万4000枚(-5%)、2513億2100万円(-10%)
・音楽DVD
5546万9000枚(+8%)、652億0100万円(+14%)
・音楽ソフト合計
3億0349万枚(-5%)、3617億7500万円(-8%)
※()内は前年比
音楽DVDが健闘しているものの、音楽ソフト全体の減少を穴埋めするまでには至らず、全体では減少していることが分かる。
全体的に減少している最大の理由はいうまでも無く、インターネットやモバイルによる有料音楽配信による普及。日本レコード協会では現時点で2008年第3四半期までのデータしか無く、年ベースでは2005年から2007年までのデータしかないが、それをグラフ化すると特にモバイル系の売上が伸びているのが分かる。
有料音楽配信売上実績(2005-2007年)
それでは2008年において減少が見られたCDの売上は、過去においてはどのように推移していたのか。以前に類似テーマの記事を掲載した(【落ち込むCD、支えるネット配信~音楽CDの販売動向などをグラフ化してみる】【「最近ミリオンセラーって減ってない?」趣向の多様化と大ヒット音楽CDの減少】)が、今回は日本レコード協会を掘り返してグラフ化することにする。
まずは音楽CD(シングル、アルバム)、そしてカセットテープの生産実績を金額と本数の両面でグラフ化する。
音楽CD・カセットの生産実績(億円、1985年~2008年)
音楽CD・カセットの生産実績(枚・巻、1985年~2008年)
シングルCDが1987年以前はゼロとなっているが、これはそもそもシングルCDの発売が1988年のため。そしてシングルは1996年から1997年にピークを迎え、以降は売上が伸び悩んでいる。一方、アルバムのピークは1998年に到来している。いずれも以降何度か小規模な反発を見せながらも、いずれも下降基調にあることは否定できない。今年のデータでも音楽DVDの健闘が見られたものの、メインとなる音楽CDが軟調なため、音楽ソフトが落ち込んでいるのも理解できよう。
確認のために用意したのが次のグラフ。データ区分が2002年以前と以降では異なるため、2003年以降のものしか用意できなかったが、音楽DVDが順調に推移していること、音楽ソフト全体は不調であることが分かるはずだ。
音楽ビデオ(DVD媒体)の生産実績(2003年~2008年)
音楽ソフト合計の生産実績(2003年~2008年)
音楽CDはシングル・アルバム共に生産額・本数を減らす一方。その一方、【「最近ミリオンセラーって減ってない?」趣向の多様化と大ヒット音楽CDの減少】や【音楽協会の新譜数推移データ】を見れば分かるように、新譜数のピークは売上ピークよりも早い1989年で、その後は緩やかに減少をたどっている。しかし2002年を底に、それ以降はじわじわと新譜数は増え、2007年時点では合計で2万0023件を数え、2002年の1万4079件から42.2%も増加している。
・趣向の多様化?
・「浅い」ファンがケータイや
インターネットに流れた?
「生産本数・生産額の減少」「新譜数の増加」を兼ね合わせて出てくる答えは「1曲あたりの生産本数・生産額の減少」。「ミリオンセラーが出ない」現象の裏づけにもなる。個々の新曲の魅力が減少したからなのか、消費者の趣向が多様化したからなのか、選挙でいえば「浮動票」に相当する「広く浅く音楽を好む層」が携帯電話やインターネットで曲を購入するようになったので「ファン」しかCDを手にしなくなったのか、詳しい原因は特定できない。あるいはいずれもが複雑に作用した結果なのだろう。
ともあれ、音楽CDの売上が減少し、それが音楽ソフト全体の売上を落としていることは事実。ただしこれに「音楽有料配信」の売上を上乗せすると、【落ち込むCD、支えるネット配信~音楽CDの販売動向などをグラフ化してみる】にもあるように、むしろ全体では売上を伸ばしている形になる。
音楽ソフト・有料音楽配信の売上推移(再録)
音楽業界には音楽CDのよいところ、有料音楽配信のよいところ、そして現状で音楽DVDが伸びている理由を精査し、消費者のニーズにあった販売戦略を立ててほしいものだ。
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