小麦+8%・鶏肉+13%・バター+45%の実質価格上昇……農水省、2018年の食料需給見通しを発表

2009年01月20日 06:30

小麦イメージ農林水産省・農林水産政策研究所は1月16日、2006年を基準とした2018年における世界の食糧需給見通しに関する試算を発表した。それによると各種目の食料需要の拡大により価格は上昇を続け、2018年には小麦が+8%・鶏肉で+13%・バターで+45%(いずれも実質価格試算、名目価格試算では+35%・+41%・+81%)の価格水準に達する予想が立てられたことが明らかになった。中期的にはバイオエタノール産業の登場で食料に関する需要が増加し、それが価格上昇に少なからぬ影響を与えているという(【発表ページ】)。

スポンサードリンク

農林水産省ではこれまで使用してきた「世界食料需給モデル」について、食糧需給情勢の変化に伴い方程式やパラメータを抜本的に改定。今回の発表にいたるシステムを構築し、データを編さんした。主な傾向としては

・人口増加や所得水準向上で食糧消費量は増加。
・特に新興国(アジア、アフリカ、中東)における所得向上で肉類消費量が増え、それに伴い飼料用の穀物消費量も増加する。食料の偏在化傾向強まる。
・食料の需給関係では中南米が純輸入国へ転換するのをはじめ、各地域で輸入量増加・輸出量減少の傾向が見られる。
・とうもろこしなどはバイオエタノールや飼料用需要増加で消費量が増える。
・特に欧米におけるバイオエタノールの需要で食料の需給バランスに与える影響は少なくない。


穀物及び大豆の国際価格の推移の予測(実線:名目価格、点線:実質価格)
穀物及び大豆の国際価格の推移の予測(実線:名目価格、点線:実質価格)
主要品目別にみた2006年から2018年における推測価格増減率
主要品目別にみた2006年から2018年における推測価格増減率

今レポートにおいてアメリカ農務省やOECD(経済協力開発機構)・FAO(食料農業機関)との間に差異が生じている点について農水省側では「アメリカ農務省との差異は、農水省側ではアメリカの飼料用需要の伸びも予測しているから」「OECDなどとの差異は、アジア地域で消費量が大きく拡大すると予想しているから」と説明している。

実際の予測値を見ると、「実質価格」で今から9年後の2018年には、2006年比で冒頭部分にあるように小麦が+8%・鶏肉で+13%・バターで+45%・米で+7%の上昇が予想される。2009年時点では2006年と比べて価格がほぼ同等、あるいは割高のものがほとんどのため、「現行と比べれば」さらこの上昇幅は(感覚的に)低く抑えられるはず。

物価上昇は
名目価格ではなく
実質価格で比較する
必要がある

なお一部報道で「穀物で34~46%、肉類で31~41%、乳製品で43~81%」という表記が見受けられるが、これは「名目上の価格」比較によるもの。今から9年後の2018年にはそれなりの経済の成長が見込まれるため(OECD予想ではGDPで2006年の7234ドルから2018年には9303ドル/人となる)、OECD予想によるアメリカの成長率を元にGDPデフレータを勘案し、物価上昇の影響をのぞいたものが「実質価格」である。

分かりやすく説明すれば、2006年の100円玉1枚と、物価が上昇した2018年の100円玉1枚では価値が違う(2006年の方が価値が高い)のに、同じ数字上の価格で比較(名目上の価格比較)しても大きな意味は無い、ということ。

チーズイメージ上記グラフを見ればおわかりのように、2007年あたりから(商品先物市場の「暴走」で)急騰した食料価格には及ばないものの、多項目の要因で(実質でも)価格は漸次上昇を続けることが予想されている。

農林水産省ではこの予測を今後毎年更新して、政策決定などに活かす予定とのこと。個人ベースでできることはさほど多くは無いが、口にする食品について良く理解をする(食育)ことや、食べ残しをしないことくらいなら誰にでもできるはずだ。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ