「54軒に1軒は差し押さえ」……アメリカの住宅差し押さえ件数、2008年は233万0483件、前年比81%増
2009年01月25日 19:00
金融市場の混乱を筆頭に現在進行中の、アメリカ発の世界同時不況。この不況の根幹となった要素の一つが、アメリカの住宅市場の低迷・混乱。サブプライムローン(低所得者層向けの特殊ローンで最初は低利、途中から高利に返済額が跳ね上がる)の焦げ付きと差し押さえが多数に及んだことが、このローンを組み込んだ金融派生商品を紙くずにし、住宅市場の需給バランスを崩壊させた。【USA TODAY】ではこの状況を裏付ける一つの情報として、2008年におけるアメリカの「foreclosure filings(物件の差し押さえ登録請求。債務不履行の通知や競売の通知、さらには担保権実行などをあわせたもの)」件数は過去最高を記録したと伝えている(データソースは差し押さえ物件の専門業者【Realty Trac社】の発表資料【2.3 Million Properties with Foreclosure Filings in 2008】によるもの)。
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2008年における州別物件差し押さえ比率(棒グラフは物件全体に占める差し押さえ物件比率)。西海岸・フロリダ周辺、そして五大湖近辺で特に多数の物件が差し押さえられているのが分かる(色が濃い方が数字が大きい、以下同)。
Realty Trac社による、もう少し細かい地図。一部の州では州全体というよりは、特定地域で差し押さえが進行していることが分かる。
差し押さえ申請件数。当然ながら差し押さえ比率とほぼ同じ傾向。
差し押さえ件数の2007年と比較した2008年の増加率。サウスダコタ州では前年比15.75倍という異常な値を示している。
カリフォルニア州におけるデフォルト(物件差し押さえ件数)の推移。昨年夏に施行された猶予期間設定によって、一時的だが件数が減少しているのが分かる。
2008年において、いかにアメリカで多くの差し押さえ請求が行われたかを示す事例がいくつも元記事では寄せられている。それを箇条書きにすると次のようになる。
・2008年の差し押さえ件数は233万0483件を確認。これは2007年比で81%増、2006年比で225%増となる。平均して「アメリカの住宅の54軒に1軒は差し押さえ物件」という計算。
・2008年夏に各州でローン支払いの猶予特例法(モラトリアム)が施行され、一時的に差し押さえ件数は減少した。しかしその特例法の期限が切れると再び件数は増加。「結果」を遅らせるだけという、応急処置的な効果しか発揮しなかった。
・ネバダ州では実に7.3%の住宅が、「少なくとも」1回の差し押さえ通知を受け取っている。
・カリフォルニア州では52万3624件の差し押さえ申請。2007年比で110%増、2006年比で498%増の値。
・差し押さえが増えると地価が下がり、周辺地域の住宅の担保価値も下がるため、ローンの組み換えを求める住宅保有者が急増している。
・金融危機対策予算7000億ドルのうち、議会承認待ちで保留状態にある3500億ドル。そこから500億ドルを、この物件差し押さえへの対策にあてることが期待されている。
・Realty Trac社副社長のRick Sharga氏曰く「2009年は(月間ベースで)さらに記録を更新するに違いない。2009年は2008年以上に厳しい年になりそうだ」。
なお物件差し押さえによってその住居が空き家になることによって、周辺地域の地価が下がるだけでなく、犯罪率も増加する傾向がある(空き家が犯罪の温床となりうる)。そしてますます地価は下がり、ローンで住宅費を払っていた人たちの支払い、借り換えが難しくなり、さらに支払い不履行・差し押さえを誘発する事態が発生しうる。
先の記事【今が住宅お買い得? 「まだまだ安くなる」は4割に達する】で、アメリカの人の4割近くが「今が底値でお買い得」という判断を下しているという調査結果があったが、このようなデータを見ると「まだまだもう少し時間はかかるかな」という気がしてならない。
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