テレビ-5%、新聞・雑誌-10%……2年間で起きた視聴時間の変化

2009年01月16日 06:30

テレビイメージメディア環境研究所は2008年7月8日、毎年2月に実施している「メディア定点調査」の最新版「メディア定点調査・08」の抜粋編を発表した。それによるとメディアの接触時間そのものが2年連続して減少傾向にあることが確認された。その一方で、パソコン・携帯電話からのインターネット接続時間は増加傾向にあり、「メディア接触のデジタル化」が緩やかながらも進行している状況が把握できる結果となっている(【発表ページ】)。

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今調査は郵送調査方式で行われ、2008年2月4日に発送、2月22日投函を締め切りとしたもの。東京・大阪・高知の三地区を対象にRDD方式で選ばれた15~69歳の男女に対し調査票が計2186通送付され、1877通が回収された。デジタル手段ではなく、郵送方式で調査が行われたこと、調査実施期日が去年の2月であり、約1年が経過していることに注意する必要がある。

一連の調査において、各主要メディア毎の一日あたりの平均接触時間を時系列にたどって見ると、2006年から2008年の間に全体では5%ほどの視聴時間減少の傾向が見られる。

メディア接続時間時系列推移(分、一日当たり平均)・赤文字はその年における各メディア一日分総計
メディア接続時間時系列推移(分、一日当たり平均)・赤文字はその年における各メディア一日分総計

今調査を見る限りでは2006年から2008年の間で新聞や雑誌などの紙媒体が10%前後、テレビが約5%、ラジオにいたっては20%程度の時間減少が確認できる。なおテレビの視聴時間については2時間半前後を示しているが、これは先のNHK放送文化研究所の調査の結果(【テレビ視聴時間の推移をグラフ化してみる】)と比較すると、ちょうどほぼ民放分に合致する。

今回の調査では「民放のみを対象としたもの」「NHKも含めた全体のデータで、NHK放送文化研究所のものとは60分間ほどの差異が生じている」いずれかの可能性が考えられる。いずれにせよ、テレビが「全メディアの中では最大の時間帯を確保している」と共に、「絶対時間が減少傾向にある」ことは間違いが無い。

それぞれのメディアの増減を、もっとも古いデータの2006年時の値を100%として経緯を見たのが次の図。

メディア接続時間時系列推移(分、一日当たり平均)(個々媒体の2006年の値を100%とした時の推移)
メディア接続時間時系列推移(分、一日当たり平均)(個々媒体の2006年の値を100%とした時の推移)
パソコン経由のネット接続は
飽和状態・分散化の傾向

各媒体の動向が非常によく理解できよう。携帯電話は絶対時間が少ない(2008年ですら「平均で」1日17.7分)から成長率が著しいのは理解できるが、気になるのはパソコンによるネット接続時間が横ばい~やや減少傾向に見られること。これは資料他項目などで説明されているように「パソコン経由のネット接続が飽和状態にあること」「個々サービスの利用経験が拡大、分散化する傾向にあること」が原因。

また、メディアの接触時間全体が減少していることについては、このデータだけでは原因がはっきりしない。時間が減ったメディアと増えたメディアのことを考えると、「既存メディア離れ」がメディア全体の接触時間を圧縮しているのかもしれない。

メディア接触時間全体が減少しているのは
既存メディアへの接触時間が減っているから?

新メディアの情報の圧縮度・効率度を考えると
単純に「メディア離れ」を起こしているとは
考え難い

このあたりは新聞媒体の広告費と関係が似ている。つまり、新媒体に利用者の注目はスライドしつつあるが、新媒体が旧媒体を補完するほどまでには成長しておらず、全体としては縮小傾向に歯止めがかからないというあんばいだ。ただ、これはあくまでも単純な「時間」だけの問題であって、その効率性・情報の圧縮度を含めて考えると単純に「時間が少なくなった」=「情報そのもの、メディアそのものから離れつつある」と考えるのは早計である。

繰り返すが今データは2008年2月時点のものなので、現時点ではもう少し各媒体の傾向が進展しているものと想像される(他調査機関のデータでも似たような推測は容易に成り立つ)。2009年版は(もし公開されるとすれば)7月前後に掲載されるはずなので、その時に機会があればあらためて検証したいところだ。


実はこの調査結果、別記事の調査時に偶然見つけたもの。多少内容としては古くなってしまったものの、非常に簡素で分かりやすく、そして重要と思われるデータがまるで宝石箱のように蓄積されており、今回(も含めて何度かに分けて)取り上げることにした。

公式サイトのリニューアルなどもあり、定点観測そのものは2004年から行われているということだが、以前のデータが公開されていないのは非常に残念。ともあれ、これからいくつかを抜粋して紹介・図式化すると共に、分析を重ねていくことにしよう。


■関連記事:
【民放連曰く「諸君らが愛してくれたテレビの広告費は減った。何故だ!?」】

(最終更新:2013/07/31)

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