Frederick Stephens氏と彼が愛用する「年代モノ」の電子レンジ、パナソニックのNE-691

この電子レンジを使っているのはFrederick Stephens氏(78)。現在では台所の家電としては欠かせない電子レンジだが、1960年代では最先端の技術を結集したハイテクマシンだった。彼はこの電子レンジ(パナソニックのNE-691)に当時のお金で230ポンド(現在の3000ポンド以上……日本円で36万7000円・現時点のレート)を支払い、それ以来毎日の如く40年間も使用し続けている(との話)。

当時は電子レンジそのものが珍しかったので、利用方法についてStephens氏ら夫妻はデモンストレーションをしてもらうことになった。目の前で料理が出来上がる様子を見て「これはすごい」と腰を抜かさんばかりに驚いてしまう。そしてそれからというもの、Stephens氏らの人生は一変し(本人談)、今やこれなしでは生きていけないほどになったとのこと。

かつての「長生きトースター」でも部品の交換の話が出てきたが、この「長生き電子レンジ」でも一度内部(扉部分)の電球がトラブルを起こし、交換する必要があった。大きな故障はそれだけで、あとは特に問題はなく、稼動を続けている。彼は2005年に伴侶を亡くしてからは一人暮らしをしており、今では食事を温めたり、Stephens氏が寝る前には欠かさずに飲むHorlicks(麦芽飲料。ミロみたいなもの)を加熱するのに用いられているという。消費電力の問題もあり、長持ちさせることがそのまま美談というわけにはいかないだろうが、興味深い話ではある。

……ただし。

「1960年代から電子レンジが存在していることは確認できた。それにしてもデザインが少々新めではないか?」とちょっとかんぐって調べてみたところ、該当商品が存在するのは確かだが、1960年代のものではないことが明らかになった。

調査過程で見つけたNE-691のマニュアルから。

同じくマニュアルから。1983年製の文字。

NE-691そのものは1980年代前半の製品(1983年という記述が確認できた)。1960年代の電子レンジは右の写真にあるようなもので、操作系がデジタル・LEDで構成されているはずがない。そんな電子レンジがあったら、まさにオーパーツ級の扱いをする必要が生じてくる。

元記事のコメントでも

など、記事内容と新聞社自身に対して非難ごうごうの嵐が吹き荒れている。

実際に1980年代製のものでも相当な年季もので、それはそれで興味深い話なのだが、それにしても少々お粗末な話。単にStephens氏が年数を勘違いしているのか、それとも初代の電子レンジは本当に1960年代に購入したが、1980年代に現在使用しているものに買い替え、「同じように使用している」ということを新聞社側が聞き違えたのか。あるいは美談的なものとして(以下略)なのかもしれない。

ともあれ、元記事のタイトルは「40年前」ではなく「20余年前」、「15万食」は「約8万食」に書き換える必要がありそうだ。

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