円高が響く…2008年12月分の景気動向指数は現状9か月連続の下落、先行き3か月連続の下落

2009年01月14日 08:00

景気イメージ内閣府は1月13日、2008年12月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、先行き指数も先月同様に減少傾向を見せるようになった。基調判断は先月以上にキツい表現の「景気の現状は一段と厳しさを増している」。厳しい状況に違いはない(【発表ページ】)。

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景気・雇用情勢の悪化やボーナスの減少で購買意欲は減少、クリスマス商戦も軟調に

文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】上ので解説済みなので、そちらで確認してほしい。

12月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス5.1ポイントの15.9。
 →9か月連続の低下。「悪化」がさらに約15ポイントも増えている。「やや悪くなっている」が減少し、その分が「悪化」に。
 →家計は景気や雇用情勢の悪化以外にボーナスの減少などで購買意欲が減退。クリスマス商戦が振るわず。企業は世界的な景気後退や円高の影響で受注減少、在庫調整、設備投資見送り、資金繰り悪化など悪材料の宝石詰めトラック状態。
・先行き判断DIは先月比マイナス7.1ポイントの17.6。
 →3か月連続のマイナス。
 →景気や雇用の先行き不安、所得の減少見込みなどが懸念。世界的な景気後退による在庫調整なども大きく作用。


2001年パターンを踏襲中・現状判断は「底抜け」モードへ

それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

上でも触れているように、景気全体の後退や雇用不安により消費マインドが急速に冷え込み、先月はやや持ち直した飲食関連も含めすべての項目で大きく下落しているのが分かる。住宅関連の下げがやや小さいが、これは「これ以上数値が下がりようがない」水準に達しているからが主要因。雇用関連の値はついに1ケタに突入してしまった。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

「現時点ですでにITバブル崩壊後の不景気時期にあたる2002年~2003年(日経平均株価が7000円台を記録)の時期の水準に近い状態が続いている」とは3か月の言。先月にはそのラインを下にぶち抜き、12月では底抜けの状態を加速する状況にある。理論的にはDIが0未満になることはないので、そろそろ限界に達する様相だ。特に雇用関連指数では8.5と下限値0に近づく様相すら見せており、言葉通り「底抜け」モード。この下落振りに、昨月のグラフが「15~85」を縦軸の範囲としていたのに、今回は「0~75」に切り替わっているあたりからも、事態の異常さが改めて確認できる。しばらく前から「今回の下げ・底は前回よりもヒドいことになるのでは」という警告をしていたが、それが今現実のものとなりつつある。

・加速度的下落傾向。
・「雇用と全体の下落逆転」は
継続中。
・合計のDIは2002~03年の
不景気時代水準を突き抜けた。
→確実に前回不況時より悪化。
雇用関連の下げは
下方限界に近づく。

注意すべきは今年に入ってから繰り返し指摘しているように「前回(2001年~2002年)の急落時には、家計や企業、雇用動向DIにぶれがあったのに対し、今回の下落では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」こと。景気状況があらゆる局面で、息をもつかせぬスピードで悪化したことを表しているが、これは2007年後半の「サブプライムローンショック」「8.17.ショック」と呼ばれるサブプライムローン問題関連、資源高、リーマンブラザーズショックなどの連鎖的市場不況がそれぞれのポイントにおける引き金。ただし資源高そのものはそれ以前から兆候が見られていたことが確認されている。やはり市場の大幅下落が景気後退の引き金となったのだろう。たとえそれが当初は実体経済を伴っていないものだったとしても、実体経済とのリンクがされており、その部面でのお金の周りが悪くなるのだから当然だ。

現状は資源高はやや沈静化を見せつつあるも、景気そのものの悪化で各種マインドは低下の一途をたどっている。資源高値で景気が悪化し需要が減り、その後資源が安値をつけても、景気は回復せずに需給バランスは崩れたままという、おかしな状況が続いている(恐らくは投資ファンドが、需給バランスを調整すべき「資金」を根こそぎ引き抜いてしまったため、バランサーがなくなったからだろう。過去に事例が無い事象・要素が複雑に絡んでいるため、今後の予想も意見が分かれている)。

一方これまでの傾向として見られた「直近の最底値の際には雇用関連の指数が全体指数より下側に大きくクロスして落ち込む傾向」が4月以降継続していることが注目に値する。12月では全体指数も下げを見せたがそれ以上に雇用関連指数は下げている。「全体」「雇用」間の乖離と表現してもよさそうなレベルに離れた感はあるが、「下落の後の横ばい」傾向を見定めるまでは「底打ち」と判断するには早急と思われる。つまりまだ現況景気感は下げる可能性が高い。

景気の先行き判断DIについても、先月に続き今月も下げてしまった。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

先月やや持ち直しを見せた「飲食関連」が反動で大きく下げているのをはじめ、どの部門でも少なからぬ下げ幅を見せている。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに4か月前で2001年後半時期における最下方の値に達している。それ以降はやや横ばいかほんの少しだけの上げで推移していたが、昨年10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。昨年10月におきた株安や景気の悪化(「リーマンブラザーズ・ショック」)がいかに大きなインパクトを与えたのかが分かる。先月コメントしたように11月分ではわずかに上向く気配を見せた雇用関連の値はやはり「だまし」だったようで、今後も先行きは軟調のようだ。

少なくとも2003年以降よく見受けられるようになった上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」がまだ確認できず、クロス・逆転も起きていないことからも「まだ底ではない」ことは確認できる。

発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)に関して事例を挙げてみると、

・不景気感が強い状況だが、ガソリンや灯油の値下がりに伴い、価値のあるものであれば消費をする傾向がみられる。そのため相対的には変わりがない(美容室)
・年金暮らしの客が多いためか、ガソリン価格が異常に高く物価も高騰していた数か月前の方がより深刻であり、ニュース等で報じられる状況ほど悪くはない(一般小売店)
平均気温が高かったためでもあるが、ジャケット、コート類の動きが悪く、客は既に買った物で間に合わせている様子である。また、コート類を買う客は値引きが当たり前というような状況で、買い控えの様子が見られる(衣料品専門店)
・製造業を中心にボーナスが減っているほか、景気後退のニュースも増えているため、客の財布のひもが固い(家電量販店)
・お歳暮やおせち、クリスマスケーキが比較的健闘しているが、クリスマス商戦は曜日配列が悪く、前年に比べ2けたの減少となっている。また、特選ラグジュアリー商品がかつてないほどの落ち込みを記録している(百貨店)
・12月は本来稼げる月であるが、平日の来客数は例年よりも30%減少し、忘年会の予約も例年の半分である。前もっていろいろ手を打ったのに、クリスマスの盛り上がりも無く、20年間営業しているなかで、最悪の推移をしている(その他飲食)


など、資源高からの価格安定回復で、庶民生活の一部に復調傾向が見られるものの、年末商戦が「空振り三振」状態にあり、特に富裕層において消費の減退が起きていることが確認できる。

掲載は略するが企業関連では「円高」「海外からの注文減少」「金融機関の資金締め付け」「取引先の倒壊」などの傾向が見られる。また、雇用関連では

・前年比で、医療や福祉関連の求人件数が5%程度のプラスとなったが、それ以外の主要
業種すべてがマイナス、特に建設業や小売業、貨物運送業等は30%程度の減少となった。
また、北海道外の業務請負求人は80%の落ち込みとなった(求人情報誌製作会社)
・業種に限らずほぼすべての取引先で、人材需要が減っている。新規求人ゼロ、前倒し契約終了、契約更新期間の短縮化が発生している。12月度契約終了者の40%が今回の派遣先の雇用調整により、何らかの影響を受けている(民間職業紹介機関)


といった現場からの声から「職種によっては求人数・求人倍率が増加している」「前倒し契約終了、契約更新期間短縮」などの現況や、求職数減少状態・派遣社員が受けている影響が具体的な数字と共に表されており、注目すべき内容となっている。


金融危機の悪化で
景気感は一挙に急落。
実体経済にも深い傷あと。
富裕層にも節約機運高まり
消費は一挙に減退へ。
海外の景気後退が大きく
国内にも影響を及ぼしている。

一連の「景気ウォッチャー」に関する記事中でも以前から何度か指摘しているが、今回の景気悪化が2001年から2002年にわたった景気悪化のパターンを踏襲するのなら、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数との乖離(かけはなれること)」現象が見られるはず。しかしながら2008年12月のデータを見る限り、9月の時点でかすかに見えた景気感反転の兆しは消え去り、下落が再び加速してしまった。

外部的要因(海外景気情勢)に振り回される感が大きいだけに、なかなか手の打ちようが無い、さらに成果が現れるのには時間がかかるのも事実。また、上記文中でも触れたが本来の経済原理・原則である需給バランスによる自然的な調整も、投資ファンドが中抜きをしたまま場を離れてしまったため、自然回復には時間を要する可能性が高い。そして現況となった金融危機(「金融工学危機」)は終わりを見せるところがない。

残念ながらここ数か月は厳しい状況が続くと推測せざるを得ない。しかし前回の金融危機(2000年初頭)と異なり、国内だけでなく世界中で同じような現象が起きているため、日本国内一国だけで手立てをしても、劇的な効果を求めるのは事実上不可能、という判断が正しい。国内的な混乱・策動をできうる限り押さえ(手立てを妨害して状況の混乱を望み、国内政治・経済をおもちゃのように扱い、情勢をカードゲームの「大富豪」のように考える者もいるが、彼らの「扇動」に惑わされることなく)全体が下落する中でもダメージを最小限に備えつつ、反転の時のための活力を保持しておきたいものだ。

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