【更新】半期が赤字に転落した毎日新聞の最新版「おサイフ事情」をチェックしてみる

2008年12月27日 19:00

毎日新聞イメージ以前【朝日新聞の最新版「おサイフ事情」をチェックしてみる】で(自称)日本のクオリティ・ペーパーこと朝日新聞の直近中間連結決算内容について吟味してみた。日本の新聞業界が置かれている現状をかいま見るには非常に良い材料であり、お金の面から問題点などを見出すことも出来た。今回、毎日新聞と産経新聞という大手新聞社が相次いで中間短信を発表し、両社とも営業赤字に転じていることが判明。非上場企業のため上場企業と比べ多少苦労したものの、何とか諸表を手に入れたので、簡単ながら、公開資料をもとにチェックを入れて見ることにする。

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毎日新聞社は【TBS(9401)】と関連性が深いことでは知られているが、その歴史上毎日新聞がTBSの筆頭株主になった時期もあったものの、現在では「友好関係」程度の間柄でしかない。よって上場企業のTBSが公式サイト上に毎日新聞の財務諸表を掲載する必要はなく、実際に掲載されていない。

そこで【EDINET】において「有価証券報告書等」を選択、その上で「提出者名称」に「毎日新聞社」を入力しそのまま検索すると、「E00706 株式会社毎日新聞社 東京都千代田区~」が出力される。これを選ぶと同社の各種諸表を確認できる。最新のものは12月25日に提出された、第32期(平成20年4月1日 ‐ 平成21年3月31日)半期報告書。いわゆる中間決算報告書だ。上場企業のものではないため、業績予想などの表記はないが、結構細部にまで踏み込んだデータが用意されている。

連結経営成績は次の通り。

売上高……1380億3100万円(▲4.2%) 営業利益……▲9億1900万円(-) 
経常利益……11億5500万円(-) 中間純利益……▲16億1900万円(-)

※比率は前年同期比、「▲」はマイナス(以下同)


本業の収益(新聞売買)である営業利益の時点ですでに赤字となってしまっている。これは毎日新聞自身にとっては非常にゆゆしき事態といえよう(何かデジャヴを感じるが気にしない)。営業利益のマイナス以上に経常利益、さらには中間純利益の赤字額が大きくなっているということは、その他事業でも足を引っ張っていることを意味している。

さらにさかのぼれる過去のデータを売上高に限って確認してみると、

・2009年9月期中間……1380億3100万円(直近期)
・2008年9月期中間……1440億7500万円
・2007年9月期中間……1476億1700万円

と、少しずつではあるが売上が減少しているのが再確認できる(これより以前は半期報告は無し)。

損益計算書を確認する

それでは以前朝日新聞の短信で行ったように、まずは中間連結損益計算書でお金の流れを確認してみることにする。

毎日新聞の中間連結損益計算書(今期2009年3月期と、前期2008年3月期のそれぞれ中間決算)
毎日新聞の中間連結損益計算書(今期2009年3月期と、前期2008年3月期のそれぞれ中間決算)

先の朝日新聞の損益計算書と比べ、毎日新聞のそれは非常に分かりやすい様相を見せている。ぱっと見で分かるように前年同期比の部分で「▲」、つまりマイナス項目ばかり。言い換えれば「どこもかしこも悪化している」ということになるのだが、あえてチェックを入れるとすれば2点。

本業である新聞事業の赤字

新聞部数の発行数減や経費削減などで売上原価が-2.3%と縮小しているが、それ以上に売上が落ち込み、-4.2%を記録している。%値はさほど大きく無いが元々の額が巨大なため損失額も大きく、「本業の新聞事業だけで約9億2000万円の赤字」を計上している。去年同期では27億円近い黒字を出していただけに大問題……というより新聞事業そのものがこのままではビジネスとして立ち行かなくなっていく可能性もある。この辺の事情は朝日新聞とほぼ同じ。固定費などもあり、売上高と同じ割合だけ売上原価を落とすのが難しいのが厳しいところ。

また、良く見ると本業の部分での減少率は「販売費及び一般管理費」が一番小さい。人件費の削減がうまく行っていない、あるいは行っていないことが推測される。

特別利益・特別損失

去年と比べて約10億円の特別利益マイナスが確認できる。特別損失も5億円程度減っているが、差し引き5億円程度の減少。本業である営業損益が9億円強であることを考えると、かなりの痛手であることが分かる。ただしこれは「特別」の言葉からも分かるように、イレギュラー的なものに過ぎず、事業の継続を考える会計の上で重視するのは問題がある。「まちぼうけ」の童話にあるように、切り株にたまたまぶつかり手に入れたウサギを再度期待して、ずっと切り株の前に待っているわけにはいかないのだ。


「②」は額としては大きいが事業的には手のうちようがない部分もあり、やはり「本業の新聞事業が立ち行かない」のが、今回の赤字の大きな、そして根本的な原因と見て良いだろう。

報告書の文言を確認する

続いて報告書に書かれている各種説明を抽出する。事業概要には現況について次のような説明がある。

わが国の経済は、2007年夏に顕在化したサブプライム住宅ローン問題を発端とする金融不安の深刻化により円高・ドル安、株価の下落が加速している。

このような状況での当社グループを取り巻く新聞業界は、若年層を中心とした深刻な購買離れによる販売部数の低迷、広告収入の減少など引き続き多くの課題を抱えている。


詳細な行動者層のデータは開示されていないが、毎日新聞内部でも「若年層が離れている」ことを認識していることがうかがえる。また、「広告収入の減少」がどの部分にかかっているのか読み取れ難いため色々と解釈ができるが、広告収入をはじめとした収入の減少も理解している。

なお本業である新聞・雑誌・書籍は売上を4.9%ほど減らしているが、サイドビジネスたる「その他の事業」(映画製作・貸室・ホテル・その他のサービス)は意外に堅調で、売上は+16.7%、営業利益は+62.4%と大幅に伸びている。ただし全体に占める割合が4%足らず(売上比)でしかなく、毎日新聞社全体を支えるまでには至っていない。

ちなみに「対処すべき課題」の項目では「当中間連結会計期間において、当社グループの事業上および財務上の対処すべき課題について、重要な変更はない」とだけ表記されており、社を挙げて何か改革をしなければならないという判断には「まだ」至っていないようだ。


【毎日新聞社の広告局ページ】には主要新聞社の各種読者データが掲載されているが、調査が2005年のものでかなり古く、あまり参考にはなりそうもない。それでもあえて内容を見ると、性別年代構成において毎日新聞は他新聞と比べ、50~60代の読者層が多く若年層の読者は少なめのように見える。ましてや少子化が(わずか3年ではあるが)進んだ昨今では、もう少し中堅層以上の数が増えているだろう。

新聞と若者イメージにも関わらず「若年層を中心とした深刻な購読離れ」と銘打っていることは、それだけ大規模な若年層の「毎日新聞離れ」が進んでいると推測される。

同じく【広告局の販売部数データページ】によると、直近1~6月平均の販売部数は全国で朝刊388万0632部・朝夕刊セット329万5579セット・夕刊のみ132万3715部。この部数では半年で新聞事業だけで9億円強・全体で16億円強もの赤字を出し続けることになる。

元々「新聞社」なのだから新聞を主事業とし、それで財務的に立ち行かないのでは存在意義を疑われてしまう。販売数の減少は単に情報伝達環境の変化だけでなく、読者、そして社会が「ノー」を突きつけた部分も多分にある。「金融不安」も確かに一因だが、それ以上になぜ、特に「若年層を中心」に購買離れが進んでいるのか、今一度考える必要がある、のかもしれない。

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