大企業は「まだ雇える」中小企業は「もうダメ、人手はあまり気味」状態に
2008年12月25日 12:00
内閣府経済社会総合研究所および財務省財務総合政策研究所は12月24日、法人企業に対する企業景気の予想を調査した「法人企業景気予測調査報告」の2008年10月~12月期データを発表した。それによると現時点では「全体的には」企業の従業員はやや不足気味ではあるものの、今後景気の冷え込みなどを反映してか従業員数への判断は厳しいものとなり、特に製造業において「従業員数が過剰である」と判断する企業が増加する傾向が見られることがあきらかになった。大企業でもこの傾向に変わりはなく、今後製造業に従事している人たちは薄氷を踏む思いが待ち受けていそうである(【発表ページ】)。
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今調査は日本の経済活動の主要部分を占める企業活動を把握することにより、経済の現状及び今後の見通しに関する基礎資料を得ることを目的として、資本金1千万円以上の法人企業を対象に実施している、調査票による調査。年4回のペースで行われ、今回発表されたのは2008年11月25日時点の調査によるもの。調査対象となった法人は1万4337社、そのうち回答法人は1万1408社。なお本調査において大企業とは資本金10億円以上の企業を、中堅企業とは資本金1億円以上10億円未満の企業を、中小企業とは資本金1千万円以上1億円未満の企業を指す。
調査の主内容としては景気判断を示すBSI(Business Survey Index)の値は国全体の景気・自社の状況共に「現状で大幅悪化」「見通しは”現状よりは”マシ」「大企業より中小企業、非製造業より製造業の方が見通しが暗い」などの結果が出ている。このような状況の中、従業員数(正社員以外に臨時雇用・パートも含む)について経営側がどのような判断を下しているのか。前回調査分と今回調査における現時点、そして来年の3月と6月における見通しについて尋ねた結果は次の通りとなった。
なお各数字は「不足気味」と回答した社数の割合-「過剰気味」と回答した社数の割合で導き出されており、単位は%ポイント。マイナスの場合は「過剰気味」の方が多いため、そのセクターでは「人手は余っている」のが平均的な状況となる。
従業員数判断BSI(「不足気味」-「過剰気味」社数構成比)(マイナス……人員過剰判断)
・今後は景気の悪化を懸念してか従業員数の需要が減少、中小企業にいたっては「余剰」判断が下されている。
・企業規模を問わず、製造業は現在~直近の将来において従業員が過剰と判断しており、人員整理を求めている。
・全体、および非製造業の将来に向けた従業員需要は、企業規模にほぼ比例する。中小企業においては直近将来においても「まだ過剰」という判断が続く。
特に製造業の厳しさが、従業員数に対する経営側の判断という観点においても再確認できたという点で注目すべき結果といえる。
また、【企業の利益配分「まずは将来にそなえて貯金」。そして大企業は設備投資や株主還元、中小企業は従業員還元へ】で同じ調査結果から「企業規模が大きいほど従業員への利益配分割合が少なく、内部留保を溜め込む傾向がある」ことについて触れたが、これが単にケチくさいという観点だけではなく、企業そのものの継続性と雇用の確保に重点を置いているがための手段として用いられていることも理解できる。企業体力がなければ雇用の維持・増大は期待できず、そのためには(リスクを減らす)内部留保と(将来性を確保する)設備投資が欠かせないからだ。
同時に、日本の企業数では圧倒的多数を占める中小企業(【中小企業庁資料】によれば、中小企業数は法人格のみでも150.8万社・全法人に占める割合は99.2%に達している)の従業員に対する需要がプラスに転じない限り、景気回復(の判断)は難しいともいえよう。
(最終更新:2013/08/01)
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