ヒツジやヤギは紙を食べるの?

2008年12月24日 06:30

ヤギイメージ先に【牧羊犬を買えない羊飼いが取った行動は】で牧羊犬代わりにオオカミのポスターを使う羊飼いの話を記事にした際、気になることが一つあった。当初最後の一文「牧羊犬と比べたら全然エサ代がかからないんだから」を「羊たちは紙(=ポスター)を食べないくらいに恐れている」と誤訳したために浮かんだもので、その疑問とは「ヒツジって紙を食べたかな?」というもの。

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ヒツジやヤギで「紙を食べるか否か」について考えた時、一番最初に頭に思い浮かぶのは、例の童話「やぎさんゆうびん」。「♪白やぎさんからお手紙ついた。黒やぎさんたら読まずに食べた(以下略)」というものだ。ヤギが紙を食べてしまうので、手紙をいくら出しても意思の疎通ができないという、たあいもないお話をうたっており、情景を想像しただけでクスリと微笑んでしまうほほえましいもの。

この童謡では「ヤギ」は紙を食べる、ということになっている。ではヒツジはどうだろうか。色々調べて出た結論は「昔の紙ならヤギはもちろんヒツジも食べられる。しかし今の紙は決して食べさせてはいけない」というものだった。

ヒツジとヤギの違い

と、その前に。まずは「ヒツジ」と「ヤギ」の違いについて。当方も含めてやや混同しがちな両種。【畜産技術協会】によれば、

・動物形態学的に見て
 ヤギ……尾が立っていて常におしりが見えている
 ヒツジ……尾でおしりを隠している
・目の下と蹄(ひづめ)の間、後あしの付け根に
 ヒツジ……分泌腺がある
 ヤギ……分泌線がない


とのこと。

また、生態学的・行動学的に「ヒツジは群れを成して集団行動を取る傾向が非常に強い」「ヤギはヒツジと比べれば集団行動性は弱い」「ヤギは長距離を移動する傾向があり、ヒツジは定住性の傾向を持つ」などの特徴、違いを持つ。一部に「ヤギは紙を食べて、ヒツジは紙を食べない」という区分があるが、これは間違いのようだ。

ヒツジやヤギは紙を食べるのか

さてそれでは本題の「紙を食べるのか」について。先の畜産技術協会のページにズバリ答えがある。いわく、

 「ヤギさん郵便」の歌にあるように
 紙を食べるのがヤギで食べないのがヒツジ!
 なんて思われるかも知れませんが、ヒツジも紙を食べることができるのです
 しかし、最近の紙は製造の過程で薬品などを使っているため
 むやみにヤギやヒツジたちに紙を食べさせないようにしましょう。


とのこと。もう少し詳しく、他の資料(【無駄総合研究所】【全国山羊ネットワーク】などによると)

・ヤギ……好奇心が強く、特に飼いなされたものは人間が差し出したものを口にする習性がある。だから人間が差し出した紙を口にする。
・ヒツジ……ヤギほど好奇心は強くない。でも食べる場合もある。

・ヤギもヒツジも、「昔の」紙の主成分だった植物を構成するセルロースを分解し、オリゴ糖にする酵素を持っている。なので「昔の」紙ならば問題なく食べることができた。

・しかし現在の紙は成分が異なり、化学成分がほとんどを占めている(薬品や顔料なども含む)。もちろんこれは消化できないので、消化できないどころか有害なものもあるし、体内に蓄積されてしまう。だから現在の紙をヤギやヒツジに与えては絶対にいけない


ヤギイメージ特に最後の「現在の紙をヤギやヒツジに与えては絶対にいけない」は非常に重要。童話などのイメージから「ヤギは紙を食べるもの」という印象が強く、子どもはつい与えてしまいがち。ヤギに触れる機会がある保護者は、必ず子どもに「今の紙はヤギさんに与えちゃいけないんだよ」と諭しておかねばならない。

ちなみに現在でもごく少数、植物だけを使ってつなぎにもノリなどを用いた、化学物質を使っていない昔ながらの和紙ならば、ヤギが食べても問題は無い。しかしそのような和紙に見えて、実は合成繊維・化学繊維製のものもあるので、飼育側(動物園など)が渡してくれたもの以外は与えないのが一番。

結局のところ、直前の記事にある「オオカミのポスター」は、紙であっても羊たちに積極的に食べられることはない(羊たちは興味を持たない)。言い換えれば(誤訳で解釈していたような)「オオカミの絵があるなしに関わらず、ポスターを食べることは無い」ということだ。

……あれ。セルロースを分解してオリゴ糖に変える酵素って、バイオエタノールに使えないか?


(最終更新:2013/09/05)

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