アメリカの家庭内借金事情をグラフ化してみる
2008年12月21日 12:00
直前の記事でアメリカの家庭を総計したおサイフ事情を連邦準備理事会(FRB)のデータを元にグラフ化したが、その際に気になるデータが目に留まった。先に【「借金のワナ」……アメリカ家計の借金実情をかいま見る】でも触れた、「借金」に関する項目だ。「借金のワナ」では各個世帯の平均値だったが、全アメリカ世帯で積み重ねるとどのような額になるのか、そして昨今の増減具合は……気になるところが多いので、早速調べてみることにした。
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データの抽出元は先の記事とまったく同じ。項目で「債務(Liabilities)」に該当する部分が今回見る部分。実データでは細かい項目分けが行われているが、ここでは「住宅ローン」「消費者信用(クレジット支払い)」「銀行ローン」「その他」の4つに大別することにした。時間軸が均等ではないこと、ドルベースのため対外価値を計算する場合には為替レートが大きく関わってくることなどの注意点も同じ。
アメリカ家計の債務額推移(兆ドル)
借金総額は確実に増加している。そして住宅などの不動産を抵当に借入した「住宅ローン」が多数を占めているのも一目瞭然。このあたりの事情は「「借金のワナ」……アメリカ家計の借金の時代推移をかいま見る」とまったく被るので省略するが、最近ではようやく増加に歯止めがかかりつつあるように見える(住宅ローンが色々な事情で解約したりしたのだろうか)。もっとも日本でも住宅ローンを組んで戸建住宅などを購入した人は、それなりに借金を抱えていることになるので、腰を抜かすほど驚くような話ではないのかもしれない。
絶対値推移ではやや分かりにくいので、これを各項目別に分け、さらに2003年の値を100%にした形で折れ線グラフにしてみる。
アメリカ家計の債務額推移(2003年の値を100%とした場合)
横の時間軸が変則的なのでやや流れがつかみにくいが、銀行ローンをはじめとして消費者金融などすべての項目で2003年と比べると漸増していることが分かる。住宅ローンは頭打ちをしているようだが、その分他の借金が増えているので合計額も増加を続けている。
【サブプライムからCDS、そしてクレジット「カード」クランチへ】でも触れたように、アメリカでは今現在、クレジットカードの焦げ付きが問題視されている。FRBも先日利用者が破たんしないよう、さまざまな規制を設けた(【アメリカでカード会社に新規制・金利の一方的な引き上げの禁止】)。これは利用者を救う手である一方、貸し出し側の負担を増加させることになり、「貸し手の破たん」「リスク増大」「利用者への(利率アップなど)負担増加」というマイナススパイラルに陥る可能性がある。今後も注意深く動向を見守る必要がある。
ローン、借金、そして多数の金融工学で用いられてきたレバレッジも、いわば「未来からの借入」に過ぎない。アメリカ発の金融(工学)危機は、単に「借入の返済を迫られている」だけに過ぎないのかもしれない。アメリカ家計の借金額動向を見るに、そんな考えすら浮かんでくるのだが、どうだろうか。
■改定・増補記事
【アメリカの家庭内借金事情をグラフ化してみる(改定・増補版)】
(最終更新:2013/08/08)
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