【更新】アメリカの家庭内おサイフ事情をグラフ化してみる
2008年12月21日 12:00
先日[NIKKEI Net]において、アメリカの家計資産が1年間で600兆円目減りしたことや、その7割が株式や不動産であることなどが報じられていた。個人ベースでは想像もつかない額だが、あれだけ多くの人間を抱えるアメリカという国なら、全員分を集めれば十分ありうる値なのだろう。興味が尽きぬ話ではあるので、元データを探してグラフ化することにした。
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具体的な値はアメリカの連邦準備理事会(FRB)の公式サイトにおける【データベースページ】から抽出したもの。このページの中の「Flow of Funds Accounts」内【Flow of Funds Accounts of the United States - Z.1】から、直近のデータである2008年12月11日発表分データをダウンロード。その中で102ページに掲載されている「家計と非利益団体の財務諸表(Balance Sheet of Households and Nonprofit Organizations)」が該当するデータとなる。
まず2つほどお断りを。データは2003年~2006年は年ベース、2007年以降は四半期ベース(Q1、Q2、Q3、Q4)で用意されている。グラフもそのまま利用しているので、横軸(時間軸)は均等ではないことに注意されたい。また、各数字はあくまでも「アメリカドルベース」。国外向けで計算する場合には(例えば円ベースなど)その時その時の為替レートが関係してくるため、大きく変化する可能性がある。例えば2003年では1ドル=120円前後で推移していたが、現時点では1ドル90円前後の領域にある。2003年当時の1ドルと今の1ドルでは相当な価値の違いが生じている、と見なすこともできるわけだ。
それでは早速、まずは家計の総資産推移を。
アメリカ家計の総資産推移
見事に(!?)サブプライムローン問題をはじめとした「金融(工学)危機」が表面化した2007年夏以降、家計の資産も目減りしているのが分かる。
それではこれを、主要項目別に区分してグラフ化する。
アメリカ家計総資産推移(兆ドル)
アメリカ家計総資産推移(主要項目別、兆ドル)
主要項目資産が2007年夏以降目減りしているのが分かる。特に「不動産」、そして「その他(保険などの金融資産)」の目減りが目立つ。前者はともかく後者の減少に「?」を浮かべる人もいるだろうが、この項目には「投資信託」も含まれており、これが大きく評価額を下げているのが主な要因。
その一方、「耐久消費財など」「預金」が絶対額はわずかだが増加しているのも確認できる。前者は……この期に及んでさらに物欲魔神が出動して買い物を増やしている、というわけではなく、商品単価そのものが値上げしてしまい、結果として出費を増やさざるを得ない状態に陥ったのが事実だろう。
他方元記事でも指摘されているが、預金額は確実に増加している。
アメリカ家計における預金額推移
内訳を見ると通常預貯金と定期預金が確実に増加しており、まやかしではなく本当の意味での「預貯金」を積み増ししているのが確認できる。これはこれまで「貯蓄より投資・消費」の傾向が強かったアメリカ人のライフスタイルが、金融・経済危機に直面したことで貯蓄という生活防衛手段に重点を置きつつある傾向の一つかもしれない(とはいえ、貯蓄の増加傾向そのものは2003年から見受けられるのだが……)。ただし2008年に入ってからは貯蓄への余力も無いようで、預金額そのものは横ばいになっていることも付け加えておく。これは先に【「借金のワナ」……アメリカ家計の借金実情をかいま見る】で指摘したこと(借金づけでほとんど貯蓄が出来ない)の裏づけにもなる。
手持ち資産が減少すると消費が抑制されるのは【株価が安いとどんな良いこと・悪いことがあるのか再確認してみる】で説明した通り。この消費動向は日本でもアメリカでも変わらない。これだけ資産が目減りすれば、(手持ちの現金や収入が減る要素とあわせ)消費そのものが抑えられることは間違いない。「大量生産・大量消費」が国是ともいえるアメリカのライフスタイルが、あるいは変わるきっかけになるのかもしれない。
ちなみに家計が持つ株式の評価額推移のみを抽出してグラフ化したのが次の図。
アメリカ家計所有株式評価額推移
金融(工学)危機直前の最高値から約1/4に目減りしている。これで凹むな、といわれてもムリがあるというものだろう。
■改定・増補記事
【アメリカの家庭内おサイフ事情をグラフ化してみる(改定・増補版)】
(最終更新:2013/08/06)
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