自転車の販売動向をグラフ化してみる

2008年12月21日 12:00

自転車イメージ先に【バイクの国内需要をグラフ化してみる】で日本国内の自動二輪車の販売動向を確認した際、スクーターなどの原付第一種の販売が落ちているのは「自転車などへシフトしている」のが一因という主旨のコメントを掲載した。本当に自転車にスライドしているのなら自転車の販売数は伸びているはず。少々気になるところがあり、また掲示板からリクエストをいただいた(ハバネロ氏より)こともあって、せっかくだからと調べてみることにした。

スポンサードリンク

自転車の販売台数のデータについては、【自転車産業振興協会】【データベース】のデータを利用した。また、販売数全体の推移ではなく、販売台数が伸びているか否かを知るのが目的のため、データの中でも「国内販売動向調査」、つまり代表的な小型店舗(従業員3人まで)100店を選び毎月販売台数を抽出し、全国の販売動向を確認するものについてグラフ化を試みた。

なお今調査についてはデータそのものは1999年度分から用意されているものの、途中で何度か調査方法が変わっており、連続して使えるデータとしては2003年度分からのものとなる。また今年度はまだ終了していないので年単位の直近データは2007年度分となる。

まずは単純に月別販売台数実績。

月別販売台数実績(店舗あたり)
月別販売台数実績(店舗あたり)

新車と中古車の合計を示したものだが、ごらんの通り毎年3~4月がかきいれどきになる。これはご存知の通り教育課程において新学期が始まる時期で、「入学・進学祝い」に自転車を購入してもらう、あるいは通学・通勤用として購入するために、需要が急増するからである。

これでは少々分かりにくいので、前年同月比を計算したのが次のグラフ。

月別販売台数実績(前年同月比、店舗あたり)
月別販売台数実績(前年同月比、店舗あたり)

ここ数年間は大体において前年同月比でプラスを推移していたこと、サブプライムローン問題が表面化した去年夏以降は一時期減少したものの、それ以降はむしろ「節約志向」ということもあり増加しているのが分かる。また、直近の不景気な状況の中でも、売上が「さほど」落ちていないことも確認できる(元々大繁盛しているわけではない、という考え方もできるが)。

また、これを年ベースで算出されている「主な種類別」で積み上げグラフにしたのが次の図。

年間販売台数(台/店、種類別)
年間販売台数(台/店、種類別)

2007年度はやや落ち込み基調を見せたが、それでもここ数年の間は順調に販売台数が増えている。中でも家庭用自転車である「ホーム車」、そして絶対数は少ないものの増加割合が大きい「スポーツ車」「電動アシスト車」は注目に値する。

これらのデータを見る限り、「バイクのシェアを自転車が食っている」かどうかまでの確証は取れないものの、「自転車が不況の中でも健闘している、むしろ(相対的に、はもちろん絶対数としても)堅調に推移している」ことが読み取れる。

数字から見れること、数字だけでは見れないこと

「国内販売動向調査」の月報では、消費ウォッチャー指数の具体的コメント同様に、各販売店の動向を店員らの生の声として読み取ることができる。気になるコメントをいくつかまとめてみると、次のようになる。

・ショッピングセンターや量販店で購入した客が修理やオプション付加を断られ、自転車屋に持ち込むケースが増加している。それらの店では技術が無いのか、売り切りのパターンが多く、量販店などに対する利用者の不信を買っている(パーツや用品の売上が伸びたとの声も)。
・売上が躍進する店がある一方で、新車販売が落ち修理が増えている店舗も。
・スポーツ車の売れゆきが堅調。ただしメーカー商品について「価格が上がり品質が落ちるばかり」といった厳しい「プロの意見」も多い。


くだんの「景気ウォッチャー指数」のコメントと比べると、堅調・軟調な意見が合い入り混じっている感が強く、販売戦略と運(地域性など)次第でかなり業績を伸ばしている店が数多く見受けられるのが幸いであり、勇気付けられもする。

また、掲示板で指摘され確認したのだが、バイクの「原付第一種(スクーターなど)」の販売台数を、電動アシスト車やスポーツ車(MBT)が追い抜く可能性が出てきた。

スポーツ車と電動アシスト車の2008年月次生産台数
スポーツ車と電動アシスト車の2008年月次生産台数
スポーツ車と電動アシスト車の2008年月次生産台数(月次累計)
スポーツ車と電動アシスト車の2008年月次生産台数(月次累計)

先の記事にもあるように、「原付第一種(スクーターなど)」の2008年における販売予想台数は29万7000台。10月時点でスポーツ車と電動アシスト車はそれぞれ23万8438台・23万2711台を生産している。生産台数=販売台数ではないことなど、直接比較するのにはやや難があるが、利用者層が近接している「原付第一種(スクーターなど)」と「スポーツ車」「電動アシスト車」において、立ち位置の変化が生じている雰囲気を感じることはできる。また先の店員らのコメントにもそれをうかがわせるものがいくつか見てとれる。

同じ「近隣地域への移動の足」という観点で利用される手段として、「原付」から「スポーツ車」「電動アシスト車」へのトレードダウンが起きている可能性は十分に考えられよう。


自転車屋イメージ自転車業界そのものはそれほど大きな市場規模のものではない(2500億円程度という話もある)。また、一時期は廉価な海外産の自転車がショッピングセンターや量販店などで展開され、自転車専門店が販売に窮した時期もあった。

当然淘汰された店も少なくなかったが、「匠の技」を強みとし、販売戦略の展開に成功した少なからぬ店舗に引っ張られる形で、この不景気の中でもたくましく、むしろ昨今の景気状況を好機ととらえているようにすら見える。それが本当だとすれば、非常に喜ばしい話ではある。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ