アメリカでカード会社に新規制・金利の一方的な引き上げの禁止

2008年12月20日 12:00

カードイメージアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)と同貯蓄金融機関監督局(OTS)は12月18日、消費者向けクレジットカードとその他リボルビング機能を持つカードに関する規制を強化し、消費者を保護することで合意した。新規制自体は2010年7月1日から適用されるが、関連カード会社に対し前倒しでこの規制に対応するよう当局側では求めている(【発表リリース】)。

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今回の新規制における主な取り決め・行動指針は次の通り。

・借り入れ開始から1年間における利率の引き上げや、カード残高に応じて利率引上げを行うなど、予想していなかった利率の引き上げから消費者を保護する。
・借り入れ期間を区切り、その区切りを超えると利息を上げる「2サイクル」の仕組みを禁じる。
・カード利用者がクレジットカードによる支払をするのに(金利引き上げに対応するのに)十分な時間を設ける(金利引き上げに対し45日前の事前通知と21日の支払猶予期間を設ける)。
・不公平な、利息を極大化する支払方法の使用を禁じる。
・現時点でサブプライム層(所得・借り入れ信用が比較的低い層)が使用しているクレジットカードの使用手数料を減少させることで、彼らの支払い残高が減らせるよう注力していく。


当局側では今回の新規制について「利用者保護を前提に設定した」と語ると共に、クレジットカードや預金口座における透明性・公正度が高まり、各カード会社間の競争が活性化されることで、消費者の負担が軽くなることを期待していると語っている。

【「借金のワナ」……アメリカ家計の借金の時代推移をかいま見る】【富裕層にも及ぶ不景気の波・アメックスの四半期決算から見え隠れする、アメリカ経済の現状】【サブプライムからCDS、そしてクレジット「カード」クランチへ】などで説明したように、アメリカでは1980年代以降「気軽に借り入れできる『魔法のカード』」としてクレジットカードが急速に普及。特に低所得者の間で広範囲に広まり、同時に「借り入れすぎてカードの借入金が返せなくなる」というカード問題が発生していた。

そして最近では「金融(工学)危機」「金融信用収縮」などの影響もあり、

・貸し手側(カード会社側)……貸し倒れリスク増大と査定基準強化のため金利引き上げ
・借り手側(利用者側)……収入減やローンがおりないためクレジットカードへの傾注度増加


という現象が起き、結果としてますますクレジットカードによる消費者の破たんが増加するという「ネガティブスパイラル」が起きている。

クレジットカードイメージ今回のFRBのクレジットカードへの規制は、このような状況においてカード利用者側にはコスト削減に役立ち、突然の金利上昇(アメリカではこれを「レートジャッキング」と呼んでいる。金利(レート)を自動車整備のジャッキを使うように上げていくから、らしい)を回避できる効用が期待できるが、その一方でクレジットカード会社にとっては負担が増すことになる。

FRBなどでは新規則の前倒し履行を各カード会社などに求めている。しかしそれぞれの会社がそれに応じるかどうか、応じた結果各会社の財政がさらに悪化する可能性など、さまざまな懸念材料があり、今後の動向を注意深く見守る必要がある。

何よりFRBなど政府当局が自ら率先して、クレジットカードに対して様々な枠組みを設けねばならないほど、クレジットカード利用者(とカード会社)の現状は経済的に不安定な状況に置かれていることを認識せねばならないだろう。


(最終更新:2013/08/01)

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