日本の外貨準備高推移をグラフ化してみる(下)……最新の外貨準備構成比率
2008年12月12日 06:30
日本の外貨準備高についてデータを探して「グラフ化してみる」シリーズの下編。こちらでは外貨準備の内部構成を調べてみることにした。
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本来ならドル建て・ユーロ建てなど細部のデータをグラフ化できれば一番なのだろうが、財務省からそのようなデータは公開されていない。発行側、例えばアメリカ国債の場合は発行側データが逐次公開されているので、以前グラフ化したものを最新版のものに差し替えて紹介することもあるだろうが、ここでは本筋の話ではないので省略する。
財務省では11月10日、情報開示の一環として、外貨準備として保有する外貨建て証券の内訳を発表してる。これは初めての出来事とのこと(【リリース、PDF】)。このデータによれば、外貨証券の満期構成としては1年以下の短期が3割以下、1~5年が5割近く、5年以上の長期が3割足らずとなっている。
保有外貨証券の満期別構成割合
どちらかといえば中期(といっても個人投資家の多くにとっては十分長期だが)的な投資スタンスで運用を行っているようだ。
また、国債とそれ以外の債券の割合については7割近くが国債を占めている。非常に堅実な投資をしていることが分かる。
保有外貨証券の国債・非国債の構成割合
なお国債以外の債券には公共債(例のアメリカ政府系住宅金融機関の社債)なども含まれる。
「運用というけれど、どれだけ損得勘定しているのか」という疑問もあるだろう。実は同日に【運用実績に関する資料(PDF)】も公表されている。2003年度から2007年度までの5年間のものだが、利回りはいずれもプラス、しかも毎年運用益が増加する傾向にある。
外貨定期預け金及び外貨証券に係る運用資産利回り
今年はさすがに相場が色々と混乱している関係もあり、2007年度の利回りをさらに上回るとは考えにくい。それにしても大した運用実績といえる(元々運用益を上げることが目的ではないとはいえ)。むしろ逆に、運用益を上げることを目的としていないため、下手にじたばた動かさずに手堅く運用したことが、堅調な結果を生み出したともいえよう。
以上、公開データだけでグラフ化などを試みた次第だが、今まで「なんとなくこんなもんかな」という程度だった「外貨準備高」について、少しは具体的に把握できただろうか。繰り返しになるがこれらはあくまでもベースが「外貨」であり、日本国内で直接使えるわけではない。くだんのIMFの1000億ドルも「10兆円相当」かもしれないが「10兆円」そのものでは決してない。
「イメージ的な印象や感情的な表現」でやもすれば本当の姿から目をそらされがちな「お金の問題」について、ほんの少しでも良いから事実を認識したり、興味を持っていただければ、これほど嬉しい事はない。グラフを作成した甲斐もあるというものだ。
■一連の記事:
【日本の外貨準備高推移をグラフ化してみる(上)……現状と過去5年間の推移】
【日本の外貨準備高推移をグラフ化してみる(下)……最新の外貨準備構成比率】
■関連記事:
【アメリカ国債の引き受け先をグラフ化してみる】
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