電通最新データから広告売上の変化をグラフ化してみる
2008年12月10日 19:40
日本国内における広告代理店最大手の[電通(4324)]は12月5日、11月単月度の売上高を発表した。それによると全社売上は1210億9000万円となり、前年同月比で86.2%の値にとどまったことが明らかになった。急速な景気後退が後押しする形で既存四大メディアとされる新聞・雑誌・ラジオ・テレビいずれも-5~-20%強ほどの規模縮小を見せる一方で、新メディア媒体の売上高はかろうじて伸びるなど、「時代の流れ」を感じさせるデータとなっている(【発表リリース、PDF】)。
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11月単月度の売上高総計は1210億9000万円。テレビの売上がもっとも大きく616億7700万円を占め、テレビという媒体が(既存四大メディアの中でも)いかに大きなメディアであるか、そして多くの広告費を展開しているかが分かる。特に今月はテレビの割合が目立つ。
電通・11月単月度売上高(億円)(既存四大メディアは赤で着色)
ちなみにいくつか解説を加えておくと、
・「テレビ」にはタイム広告とスポット広告の合計
・「OOHメディア」とは「Out of Homeメディア」のことで、交通広告や屋外広告などのこと
・「インタラクティブメディア」とはインターネットやモバイル関連メディアを意味する
・「クリエーティブ」とは制作部門によって考案、計画、制作された(独自)コンテンツのこと
・「その他」には衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツの業務を意味する
である。
11月単月となるが、全体に占める各項目の売上構成比を見ると、テレビだけで過半数、既存四大メディアが合わせて7割近くを占めているのが把握できる。テレビの大きさは「広告代理店にとってテレビは運命共同体・一蓮托生である」ことが再確認できる。
電通・11月単月度売上高(全体に対する構成比)(既存四大メディアはチェック模様)
このデータを、同時に公開されている前年同月比で見ると、違った印象を受けることができる。
電通・11月単月度売上高(各項目ごと・前年同月比)
そして今回はさらに、過去一年間分のデータをさかのぼり、業務別の前年同月比比較をグラフにしてみる。
電通・業務別前年同月比推移(過去1年間分)
電通・業務別前年同月比推移(過去1年間分、全体と四大既存メディアのみ抽出)
大型媒体の広告のほとんどは広告代理店経由でやりとりが行われる。そして電通はまぎれもなく国内最大手の広告代理店。会社毎の付き合いや特性もあるが、電通の広告動向は日本国内における広告動向にほぼイコールなものと見て良い。その上で見直してみると、色々な広告事情が見えてくる。
・8月にオリンピック特需があった一方で、それ以降はその反動、および景気の急速な後退で、各業務とも広告費の削減が顕著なものとなっている。
・そのような中でも、より少ない予算でより効果的なレスポンスが期待できるインタラクティブメディア、手堅いOOHメディアなどは減少率が少ない。
・インタラクティブメディアは伸び率こそ落ちてはいるが前年同月比でプラスを維持している。また、OOHメディアは古式豊かで手堅いことから、減少率もおとなしめ。
・全社売上高動向はテレビの売上に左右されるところが大きい。変動率もほぼ連動している。
・テレビは起伏が激しい。
・既存四大メディアの中でも紙媒体系の2種(「新聞」「雑誌」)の凋落ぶりが目立つ。オリンピック特需も恩恵を受けていない。「雑誌」は下落の一途をたどっているが、それ以上に急速に降下しているのが「新聞」。
特に「雑誌」「新聞」の売上減はすさまじいものがあり、広告収入を主たる事業収益の一つとしている新聞・雑誌自身にとっても頭の痛い問題であるはずだ。
また、売上構成比で過半数を占める「テレビ」も状況はあまり思わしくない。当サイトでも何度か記事にしているが、本事業である広告収入が首も回らない状態となり、当然それはそのまま電通などの広告代理店の収益にも連動する。唯一今後も伸びが期待できるインタラクティブ関係の広告は、規模的に見ればケシツブ程度にしかならない。
11月では実に7割近い売上を占める四大既存メディア。このままではずるずると売上が落ちていくのは否定しようがない。代替・穴埋めとなるメディアは(情報の展開という観点はともかく)事業の本柱として貢献するほどの売上は上がらない。と、企業として経営を維持するためには、後者を少しずつ育成しながら、応急手当てとして前者の落ち込みをどうにか阻止しなければならないという結論に至る。
このような広告動向と、【現首相の広告税導入意向】をあわせて考察すると、現在のさまざまな状況が何となくつかめてくる人もいるのではないだろうか。具体的にどのようなものかは読者一人一人の考えにお任せする。
ちなみに欧米の既存メディア、特に新聞媒体では「インタラクティブ系広告」をどうにか一人前に仕上げるべく、ドーピングと表現して良いほどの経営資源を投入して成長を促している。うまく収益をあげるようなビジネスモデルの模索が続いている状態だが、少なくとも前のめりに走っていることは間違いあるまい。
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