不況下でも「強い」企業たち

2008年12月09日 06:30

強固な企業イメージ【アメリカ自動車メーカー「ビッグ3」の最新販売実績などをグラフ化してみる】にも挙げられているように不景気の中で消費者の可処分所得が減少し、多くの企業が売上を落とし、業績を悪化させている。しかしそのような状況においても、アメリカでは一部の企業が業績を維持、あるいは順調に伸ばし、株価も堅調さを見せている。それはまるで「不景気という荒波」の中を上手にサーフィンしていく様相ですらある(【USA TODAY】)。

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そしてそれらの会社の上役は、その事実を経済アナリストや投資家、メディアに対して隠すことなく伝えている。例えばマクドナルドの場合、CEOのJim Skinner氏は「ハンバーガーには不景気への対抗性がある」と語る。たばこ業界のフィリップ・モリスの財務最高責任者Hermann Waldemer氏は「たばこ業界は不景気時においても柔軟性をもって対処できる」、玩具工業連合会会長のCarter Keithley氏も「おもちゃ産業には不景気に対する抵抗力がある」とコメント。

完全に不況にも動じない産業があるわけではない。しかしいくつかの業種においては、それに近い状態、すなわち耐久性が強いようにも見える。また、多くのベンチャー企業が景気悪化による支援の先細りと財務状態の悪化に苦しんでいる中でも、汚染処理を行う技術に関わる企業やライフサイエンス(生命工学)に携わる企業が多額の支援を受け、常世の春を楽しんでいる。

「ハンバーガー業界には
recession-resistant
(不況対抗性)がある」
~マクドナルドCEO:
Jim Skinner氏~

一般生活用品をまかなうP&Gや健康医療品のジョンソン&ジョンソンは減らない顧客のニーズに応える形で利益を生み出しているし、グーグルなどのインターネット関連会社は「より安いものをインターネット上で買い求めようと消費者が求めるため」(【不景気でもオンラインショッピングは大健闘・「サイバーマンデー」は15%増】)、検索件数が増加。それに伴い利益も底上げされている。マクドナルドの第3四半期における収益は前年同月比で6%増加した。

不景気で可処分所得が減り、消費者は高級品を買い求めるのをひかえるようになる。しかし食品や衣料品、薬などは多少の減少はあっても止めることはできない。また、お菓子やお酒、たばこなどの手短なし好品もまたしかり。いわく「庶民はおサイフ事情に苦しんいる。しかし手身近な快楽を得ることで、その苦しみから逃れ、人生を楽しみたいと考えてるのもまた事実」。

おもちゃ業界は世帯当たりの可処分所得が減れば、それに対応した定価のおもちゃを生み出してすぐさま市場に対応する。医療技術関係の市場は堅調なまま。経済がうまく回らなくなっても、消費者は食事をするし、食生活のかたよりなどから病気にもなりうる。人の「生」に対する欲求は変わらないからだ。

元記事では「不況下でも順調な企業」の具体例が示されている。

HomeAwayイメージHomeAway(休暇用住宅レンタルサービス)
 30万件もの住宅を保有。ヨーロッパからの観光客に人気(ホテルが飽きられている、宿泊料金も割安)。住宅価格の急落などで持ち家を持て余しているアメリカ人から、借り入れられる物件は湯水のようにわいてくる。

Abbott Laboratories(医薬品・医療機器メーカー)
 130か国で医療品や健康食品を販売する。研究開発費も増大中。

Silicon Valley Bank(技術創出やライフサイエンス事業に特化した銀行)
商業や産業ローンに重点を置くことで、サブプライムローンをはじめとする「不動産市場崩壊」からは難を逃れる。不況にあまり動じないベンチャー企業(中期的な技術開発やライフサイエンス)への融資を中心としている。「他社と比べればうちは保守的で中道的かもしれない。しかしそれが自分自身と顧客にとって利益となる」とは同社CEOのKenneth Wilcox氏。

ウォルマートイメージWal-Mart(いわずと知れた世界最大の小売業者)
多くの同業他社が売上の低下に苦しむ中、「低価格・高品質の商品がここにある」と多くの消費者がウォルマート(Wal-Mart)に集まっている。アナリスト説明会でもCEOのLee Scott氏は「状況は極めて良い(extraordinarily well)」とし、その理由について「創設者が『不況に強い企業』として育て上げたからだ」と説明している。ウォルマートでは常に契約店との間で保守的な財務状態の維持、商品について定期的・継続的な品質向上を要求しており、それが絶対的な品質の自信につながっている。

CFO(財務担当最高責任者)Tom Schoewe氏はアナリスト説明会において「今現在、どれだけの会社があなた方(アナリスト)に対して、『今日の財務状態が1年前と比べて強固なものになっている』と説明できますか?」と逆に質問。アナリストたちはもちろん、ウォルマート社自身の他の幹部をもうならせたという。


懸命な企業たちは他社が不況にあえぐ中、新しい海外市場を探してアメリカ国内の不調をカバー。さらにはキャッシュフローを強化して、時にはライバル企業を買収するなどの行動も取り、財務基盤を強固なものとする。そして研究開発や長期的な投資事業に資金を投入していく。不景気を乗り切ったあと、そのような会社が健全で強固な体質を得るようになる。

消費者に身近で欠かせないもの、不況に置かれた状況でも消費が損なわれることはないものなど、「不況に強い産業・市場」はどこの国にも存在する。もちろん日本においても、だ。例えば(上記アメリカの事例でも挙げられているが)、月次報告をしている産業の一つである外食産業では、2008年10月度の業界側月次報告において(【2008年10月度の外食産業の売上は前年同月比でプラス1.3%・外食回避傾向が続く中、低価格ファストフードが堅調】)、業界団体自らが

特に、比較的低価格帯のファーストフード業態が好調で、全体を牽引している。


とコメントし、不況で外食全体が横ばいかやや軟調の中でも、きわめて堅調に推移している企業があることを示している。

アメリカやヨーロッパなどの景気動向、国内の各種指標を見る限り、景気後退局面は今しばらく続く様相を見せている。このような状況が続けば、他の企業が軟調に推移する中で「不況耐久性」を持つ企業が相対的に浮かび上がってくるだろう。その「きざし」を見つけることが、「お宝銘柄」探しにつながるのかもしれない。


(最終更新:2013/08/01)

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