直近の「アメリカのリセッション」における経済状況の違いをグラフ化してみる
2008年12月03日 08:00
アメリカが正式にリセッション入りしたことを受けて、さまざまな方面で影響が出始めている。主に判断を行う人間の心理状況の変化によるものだが、例えば先日のアメリカ市場は大幅安の展開となったし、原油先物市場も「巨大な消費国のアメリカが景気後退するということは、それだけ需要が減る」との思惑から売り込まれ、大きな下げを見せている。【NewYorkTimes】ではこの「リセッション入り」に絡み、近年のリセッション期間と現在進行中のリセッションにおいて、主な経済指標でどのような類似点・違いがあるかをグラフで説明している。今回はこれを見てみることにする。
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近年のリセッション期間と現在進行中のリセッションにおける、各種経済指標から見た類似点・相違点(クリックで拡大表示)
グラフでは4つの指標、すなわちGDP(国内総生産)・個人消費・雇用状況・住宅費の推移から、過去のリセッションと今回のリセッション(現在すでに1年近くを進行中)との相違を見せている。
「GDP」においては直近までは多少ながらも拡大を見せていたが、2008年第3四半期でマイナスに転じてしまっている。しかしその幅は小さく、5%前後の大きな下げを見せた1980年代以前のリセッションのような状況ではない(ただし「これから」そのような変化を見せる可能性は否定できない)。むしろ現状では1990年代以降の2回のリセッションのそれに近い。
「個人消費」は直近四半期でマイナスに転じている。過去のリセッションにおいてはその多くで「リセッションから脱する」期間にマイナスからプラスへの転換を見せている。パターンが踏襲されると仮定するなら、「今後さらにリセッションが、少なくとも四半期は継続する可能性」を示唆している。
「雇用状況」は現時点においては、過去の事例と比べるとそれほど悪くない。このまま事が済めばベストだが、冷静に考えれば今後さらに悪化すると考えた方が無理が無い。ただし直近過去2回のリセッション時期において、雇用の悪化はそれ以前の場面と比べてさほど悪くない値でとどまっており、大きなネガティブイベントがない限りはこのままの水準で推移する可能性もある。
最後に「住宅価格」。これが今までのとは大きく異なる点。「Year-over-year」つまり前年との変化率を示したものだが、これが大きく下落している。今回のリセッションはサブプライムローンの破たんにおける住宅市場の崩壊・大幅下落が一因であり、結果として大きな住宅価格下落を引き起こしている。それが住宅価格の急落を生み出しており、過去のリセッションと異なる点といえる。2回前の1990年7月~1991年3月におけるリセッションでも一時期マイナスに転じる場面はあったが、ここまで大きな下げ率を見せるのは(グラフに反映されている期間の限りでは)存在しない。
これらグラフの内容を見る限りにおいて、今回のアメリカにおけるリセッションは
・雇用状況などを見ると全体的には古いパターンではなく、1990年以降の新しいリセッションのパターンに当てはまる可能性が高い。
・住宅価格の下落がこれまでと大きく異なる。自動車に並び住宅はアメリカの消費、経済を支えるキーアイテム。これが大きく下落していることは、今回のリセッションがこれまでとは異なる様相を見せる可能性が高い。
・個人消費を見ると「これから」さらに状況が進展する可能性がある。
などの状況が観測できる。4項目だけでアメリカのリセッション全体を見ることは不可能なので、非常にぶれが大きい予想ではあるが、まったく的外れというわけではないとも考えている。願わくば自動車関連の指標が加わっていると、もう少し精度の高い「予想」が出来たのだが……。
ともあれ今は、次の四半期(つまり現在進行中の2008年第4四半期)において、どのような指標上の推移が見られるのか。注意深く見守りたいところだ。
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