「バナナダイエット」が市場に与えた影響をグラフ化してみる

2008年12月01日 12:00

バナナイメージ総務省統計局は11月28日、最新版の家計調査データを公開した。そのデータにおいて、価格が上昇した主な品目における対前年同月増減率の推移が提示され、多くの品目で減少傾向が見られることが明らかになった。一方、昨今ちまたを騒がせている「バナナダイエット」の素材となる「バナナ」においては、漸増的な購入量の増加が見られ、特にテレビ放送で話題性が高まった後は急激にその量が増えたことが確認された(【発表ページ】)。

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統計局では世帯を対象として、家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査し、そのデータを「家計調査」として公開している。この調査結果は、国の景気動向の把握、生活保護基準の検討、消費者物価指数の品目選定及びウエイト作成などの基礎資料として利用されているほか、地方公共団体、民間の会社、研究所あるいは労働組合などでも幅広く利用されている。

今回取り上げるのは追加参考資料として提示された【追加参考図表の2(PDF)】。価格が上昇した主食についてのデータが掲載されているが、「食パン」「他のパン」「米」「カップめん」「チーズ」「卵」「食用油」などほとんどの項目で連続して実質減少の結果を見せている。日本人が突然小食になったことは報告されていないので、可処分所得の減少や食品の値上げに「我慢」で対抗していることと推測される。提示データの中では唯一「スパゲッティ」が上昇を続けており、「安価なパスタを食する回数を増やしている」可能性を示唆している。

スポットライトをあてる項目は「バナナ」について。バナナは2006年頃から「バナナを朝食に適量食べる(肥満の要因となる脂質・糖質の代謝をうながす酵素や、繊維質が豊富に含まれている)」というダイエット法が口コミで広がっていた。その手法の簡単さ(満腹感を得られる、バナナを食べるだけというシンプルさ)から多くの人に受け入れられ、SNSのmixiなどネット界わいで浸透速度が加速。さらに9月19日にTBSの「ドリームプレス社」という番組で森公美子氏がこの方法でダイエットに成功したことが伝えられるに及び、爆発的な人気を博することになった。

今回統計局では2007年10月から2008年10月までの「バナナ」に関するデータを公開しているが、それを見ると2008年1月頃からじわじわとバナナの消費量が増えていることが分かる。

バナナの増減率と消費者物価指数
バナナの増減率と消費者物価指数

グラフの見方は「増減率」は前年同月比。「名目」は金額そのもの、「実質」は消費者物価指数を修正値として考慮したもの。購入価格が上がっても単価が上がれば購入「量」には変化が生じないため、「バナナがどれだけ多く買われたか」を見るには、「実質増減率」を見ればよい。

グラフを見ると2007年中はむしろ減少傾向にあったバナナの実質購入量が今年に入ってから増えはじめ、3月~4月を節目に大きく上昇しているのが分かる。これは「バナナダイエット」ブームの火付け役の一つとなった書籍『朝バナナダイエット』の発売によるところが大きい。その後口コミが広がり、mixiなどでも話題となって実質購入量は増加。ただし8月まではバナナそのものの単価が上がる傾向は見られなかった。

しかし9月19日にテレビ放送で大々的に「バナナダイエット」が伝えられるに及び、消費量は大きく増大。9月に購入量は急上昇のカーブを見せることになる。これを受けて需給バランスに変化が生じ、10月には大きくバナナの単価も上昇。ところがバナナ価格の上昇と相まって「ブーム」による瞬発力がピークを過ぎたこともあり、実質購入量は減少の傾向を見せている。

バナナにおける9~10月の日別名目支出金額推移。放送以降継続的にバナナの購入量が増えていることが分かる
バナナにおける9~10月の日別名目支出金額推移。放送以降継続的にバナナの購入量が増えていることが分かる

とはいえ、それでもバナナの購入量は前年比で3割強プラスを見せているのは事実。女性への訴求力が強い「ダイエット」という項目について、分かりやすい成功例を提示し、かつシンプルで誰にでも、そしてすぐに実行可能な方法という、「人気が出る要素」をフルハウス状態で示された以上、バナナが飛ぶように売れた社会的現象が起きたのも十分納得ができる。

9月から10月にかけての「猫も杓子もバナナバナナ」という状況は、多くの人が記憶に新しいことだろう。当方(不破)も近所の100均やスーパーで、入り口すぐそばに山積みされた段ボール箱に「今話題のバナナ」などのコピーと共に、うなるほどのバナナが陳列され、見る見るうちに女性陣に買われていく様子を何度となく確認することができた。今ではその「騒動」も収まりつつあるが、店舗内の陳列状態を見ると、バナナそのものの売れ行き具合が堅調であることに変わりは無いようだ。

……あるいはここ数か月、スパゲッティ以外の主食品の購入量が減少を見せているのは、価格の高騰や可処分所得の減少以外に「バナナを食べているから」と推論してしまうのは、いくら何でも考えすぎだろうか。まさに「そんなバナナ」というところか(笑)。


(最終更新:2013/09/05)

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