日本の外貨準備高推移をグラフ化してみる(上)……現状と過去5年間の推移

2008年12月12日 06:30

外貨イメージ先に【「IMFへ1000億ドル」の意味と効力】で日本の外貨準備高について触れた後、いくつかの質問をいただいた。その中の一つが「日本の外貨準備高の推移はどうなっているのか」というものだった。先の記事では動向そのものは記事本旨とは別のところにあったのであえて触れなかったが、せっかくなのでデータをまとめてグラフ化し、流れを見てみることにした。

スポンサードリンク

まずは外貨準備高について。詳しくは先の記事や日銀の【外貨準備とは何ですか?】に詳しく説明されているが、要は

●外貨準備そのもの説明
・通貨当局が為替介入に使用する資金。
・通貨危機などによって、他国に対して外貨建債務の返済などが困難になった場合に使用する準備資産。
・内訳は「外貨資産(預金、証券等)」「IMFリザーブポジション(IMF加盟国が出資金に応じてほぼ無条件で借りられる相当額)」「SDR(IMFから引き出せる資金の権利)」「金(ゴールド)」。
・日本では財務省(外国為替資金特別会計)と日本銀行が外貨準備を保有している。

●外貨準備の運用上、用途の説明
・日本企業が海外で儲けたお金を日本に還流する際、円が買われドルが売られるが、その額がぼう大なため、そのまま放置すると円高が進行してしまう。
・それを防ぐため、日本銀行や財務省などの通貨当局が米国債などの外貨建て資産を購入し、バランスを調整する。
・結果として外貨建て資産が増え、外貨準備高が大きくなる。


というところ。もちろん外貨のまま蓄積されているので、国内でそのまま使う事は出来ない。

それでは早速日本の外貨準備高の動向について。具体的には財務省公式ページ内における【外貨準備高の発表ページ】から逐次データを抽出。まずは、直近である2008年11月末現在の外貨準備高の構成について。

2008年11月末における日本の外貨準備高(億ドル単位)
2008年11月末における日本の外貨準備高(億ドル単位)

元資料ではもっと細かな区分がされているが、ここではあまり意味が無いのでざっとまとめておいた。このうち「外貨(証券)」は各種国債・社債など、「外貨(預金)」はドルやユーロなど、「金(ゴールド)」はそのまま「金」を指す。ちなみにこれらはすべて時価総額(ドルベース)であり、ドルそのものの場合には変動はないが、他の通貨や具体的物品の場合には計測時毎に変化していく(詳しくは後述)。

続いてドルベースの外貨準備高合計。区切りのよいところで5年分のデータを引き出し、グラフ化したのが次の図。

外貨準備高の合計推移(単位:億ドル)
外貨準備高の合計推移(単位:億ドル)

グラフの縦軸の区切りの問題もあるのだたろうが、2004年に入ってから急激に増加を見せたあと、漸増状態を維持している。国力のバックボーンとなる外貨準備が多いことは良いことではあるが、そのまますぐに国内向けに使うことができないのは少々残念(身体を切り売りするのと同じ、ということでもある)。

次のこの「外貨準備高の合計推移」を主要項目別に分けてみたものと、主要項目毎の推移を折れ線グラフ化したのが次の図。

主項目別外貨準備高推移(積み重ね)(単位:億ドル)
主項目別外貨準備高推移(積み重ね)(単位:億ドル)
主項目別外貨準備高推移(単独)(単位:億ドル)
主項目別外貨準備高推移(単独)(単位:億ドル)

いくつか解説と推測をしてみることにする。まずは先に「後述」とした価値の変化について。「外貨準備」は言葉通り基本的には外貨(多くはドル)で蓄積される。換算先もドルのため、ドル通貨そのもので蓄積されればそのまま足していけば良いが、証券の場合には価値の変動がある(大部分はむしろ国債や公共債などのため、現状では大きな変動はないようだが)。

また、金(ゴールド)については、実はここ数年貯蔵量は2460万トロイオンス(約765トン)から変わっていない。金そのものの相場が上昇しているので、その分ドルベースで換算したときの価値が上がっているというわけだ。

ここ5年間の動向としては

・外貨預金額が5年ほど前に一時的に上昇すると共に外貨準備高も急激に上昇、その後半年ほどで元に戻っている。
・外貨預金額が上昇し、その後元に戻る過程で外貨証券額が上昇している(逐次購入したのか?)。
・それまで横ばいだった外貨証券額は2006年頭以降漸増している。
・外貨証券額の増加と共に外貨預金額は減少を続けている(預金を元に証券を買い増ししたものと推定)。


などが見て取れる。

ともあれこの5年間に外貨準備高は6割ほども増えている。しかもドル預金そのものはむしろ減る傾向にあるので、外貨証券額が急速に増加していることで間違いないだろう。先の説明をたどれば、それだけ外貨証券(アメリカ国債などの外貨建て資産)を買わねばならない事態=円高防衛策が展開されていることになる。

にも関わらず円高が漸次進行しているのは見ての通り。グラフを良く見ればお分かりの通り、実は今年に入ってから外貨準備高の増加、および外貨(証券)の額は横ばい(厳密には証券は微増、預金が微減という程度)を続けている。もしかすると積極的な為替安定策が控えられているのか、あるいは遂行するだけの予算が割り振られていないのかもしれない(外貨(証券)を買う減資となる外貨(預金)が減っているのは、それが原因の可能性がある)。他にも「それだけ為替防衛策をしているにも関わらず円高圧力が大きくて防衛し切れていない」可能性も否定できない。

また、対ドルでユーロが大幅に減少している関係で、ユーロ通貨及びユーロ建ての証券が対ドルで目減りしているのも一因だろう。


■一連の記事:
【日本の外貨準備高推移をグラフ化してみる(上)……現状と過去5年間の推移】
【日本の外貨準備高推移をグラフ化してみる(下)……最新の外貨準備構成比率】

(最終更新:2013/08/01)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ