採用「減る」は「増える」の約2倍! 大学卒・院卒でも厳しさを増す就職戦線
2008年12月10日 12:00
リクルートワークス研究所は12月9日、民間企業における2010年卒業予定の大学生・大学院生の採用見通しに関する調査結果を発表した。それによると新卒者採用見通しは前年と比べて「減る」が「増える」を大幅に上回り、大学卒でも就職状況が厳しい現状にあることを再認識するデータが導き出された。業態別ではとりわけ「銀行」「不動産業」に採用のハードルが高くなる傾向が見られる(【発表リリース、PDF】)。
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今調査は従業員5人以上の民間企業7260社を対象に10月16日から11月12日まで、郵送・電話・FAXにて行ったもので、回収数は3118社。
全体における2010年卒者(2010年春に大学・大学院を卒業する予定の学生)の新卒採用見通しについて尋ねたところ、全体では8.3%の企業が前年と比べて「増える」と回答している。一方でその2倍近い15.7%は「減る」と明言しており、就職の門戸が狭くなったことをうかがわせる。
新卒見通し
同様の条件で調査した前年度のデータと比較すると、「増える」が大幅に減り「減る」が大幅に増えていることが分かる。「増える」「減る」の関係は去年とはまったく正反対の立ち位置になってしまった。それだけ企業側が事業と景気の厳しさを実感していることが把握できる。また「分からない」という回答も5ポイント強増えており、判断がつきかねる状況であることがうかがえる(あるいは「増える・減る」ではなく「どれだけ減る」か決めかねている、ということなのだろうか)。
これを主な業種別で見たのが次のグラフ。ただし回答数が少なく数字上のぶれが懸念された「証券」「クレジット」「医療・福祉」「電気・ガス・熱供給・水道業」については省略してある。
業種別2010年新卒見通し
全般的に「減る」が「増える」を上回っており雇用状況が厳しいことがうかがえる。注目すべき点などを箇条書きにすると次のようになる。
・「減る」が「増える」を上回る業種がほぼすべて。雇用状況は厳しい。
・運送業は元々燃料高騰時に自然淘汰されたからか、ガソリン価格が安定した現状では近郊しているように見える。
・飲食店や宿泊業は「減る」「増える」がほぼ同数。浮き沈みが激しい、勝ち組・負け組の二極化の傾向にある、ということか。
・銀行と不動産業は「増える」が皆無。また、銀行は「分からない」が6割を占めているのに対し不動産業は「変わらない」が5割強、「減る」が2割強を占めるという違いがある。
「建設」や「製造業(機械)」などの厳しさはすでにご存知の通りだが、注目すべきは「銀行」と「不動産業」。両社とも金融危機の荒波をダイレクトに受けた業種であり、新規雇用に対しても厳しい姿勢で臨む必要があると思われる。
ところが「不動産業」が「変わらない」「減る」であわせて8割近くを占め、状況が厳しいのには違いないが判断をある程度まとめているのに対し、「銀行」は6割以上が「分からない」としており判断を留保している企業が多数であることが把握できる。これをどのようにとらえるかは諸説想定されるが、「不動産業は業界と自社の現状をある程度理解し、人員をどうすべきかについて決定を下せる」のと比べ「銀行は業界・自社の厳しさは理解できているものの、攻めに入るか守りを決め込むかを判断しかねている。あるいはもしかするともう少し経てば事態が好転するかもしれないと思っている」というフシがあると見てよいかと思われる。
就職活動を行う学生がどの業種を選ぶかは個々の自由だが、採用する企業側の業種レベルでの思惑や戦略の傾向を把握しておくことは決して悪いことではない。また、新卒の受け入れの増減で、その業種全体が自らの次年度以降の業務状況を、「拡大する」「縮小する」などどのように展開すると考えているのか、ある程度把握することもできるだろう。
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