悪材料の宝石箱状態…2008年11月分の景気動向指数は現状8か月連続の下落、先行き2か月連続の下落

2008年12月09日 06:30

内閣府は12月8日、2008年11月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでいる状況には変化はなく、先行き指数も先月同様に減少傾向を見せるようになった。基調判断は先月同様にキツい表現の「景気の現状は引き続き厳しさを増している」であり、引き続き予断を許さない状況にある(【発表ページ】)。

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金融・雇用不安で消費はマイナス、ガソリン価格低下も効力薄く

文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】上ので解説済みなので、そちらで確認してほしい。

11月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス1.6ポイントの21.0。
 →8か月連続の低下。「悪化」がさらに約5ポイントも増えている。「やや悪くなっている」「やや良くなっている」などの中間的考え方が減少。
 →家計は株価の大幅な下落と雇用情勢の悪化などが災いし消費マインドが極端に悪化。企業は原油は下がったものの、金融危機の深刻化や世界的な景気減速、円高傾向、設備投資の見送りなど、悪材料の宝石箱状態。
・先行き判断DIは先月比マイナス0.5ポイントの24.7。
 →2か月連続のマイナス。
 →景気や株価の先行き不安、消費マインドの悪化などが懸念。ボーナス減少の見込みも大きく作用。


2001年パターンを踏襲中・現状判断は「方眼紙追加」モードか

それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

上でも触れているように、株価の大幅な下落と雇用不安により消費マインドが急速に冷え込み、先月同様に小売・住宅など高額商品が取り扱われる部門での下げが目立つ。ただでさえ住宅関連は「まだまだ下がるかも」などの思惑から買い控えが起きているのに、二重の負担がかかった形だ。また、円高の進行だけでなく海外、特にアメリカの景気失速がもとによる受注の減少を嫌気して、輸出関連の不調から製造業の下げも大きい。雇用関連はいわずもがな。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

「現時点ですでにITバブル崩壊後の不景気時期にあたる2002年~2003年(日経平均株価が7000円台を記録)の時期の水準に近い状態が続いている」とは2か月の言。先月にはそのラインを下にぶち抜き、11月ではさらに下げ続ける様子を見せている。特に雇用関連指数では15.7とグラフ上の下限値15.0に近づく様相すら見せており、言葉通り「方眼紙追加」モードも近い。直前の小反発の位置が前回の2001年初頭のパターンと比べて低めのところに位置していたことから、「今回の下げ・底は前回よりもヒドいことになるのでは」という懸念があったが、それが今現在、進行中の形となっている。

・下落傾向確認。
・「雇用と全体の下落逆転」は
継続中。
・合計のDIは2002~03年の
不景気時代水準を突き抜けた。
→確実に前回不況時より悪化。
雇用関連の下げは
「方眼紙追加」モードへ。

注意すべきは今年に入ってから繰り返し指摘しているように「前回(2001年~2002年)の急落時には、家計や企業、雇用動向DIにぶれがあったのに対し、今回の下落では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」こと。景気状況があらゆる局面で悪化したことを表しているが、これは今年後半から急激に加速した資源高(特に「サブプライムローンショック」「8.17.ショック」と呼ばれるサブプライムローン問題関連)が引き金。ただし資源高そのものはそれ以前から兆候が見られていたことが確認されている。やはり市場の大幅下落が引き金となったのだろう。お金の周りが悪くなるのだから当然なのだろう。

その後市場は落ち着きを見せ……というより資源高を演出していた投機筋の撤退と、景気そのものの悪化による需要減で安値を見せているが、今度は景気悪化で各種マインドは低下の一途をたどっている。資源高値で景気が悪化し需要が減り、その後資源が安値をつけても、景気は回復せずに需給バランスは崩れたままという、おかしな状況が続いている(恐らくは投資ファンドが、需給バランスを調整すべき「資金」を根こそぎ引き抜いてしまったため、バランサーがなくなったからだろう。あるいは「デフレ」の前兆の可能性も)。

一方これまでの傾向として見られた「直近の最底値の際には雇用関連の指数が全体指数より下側に大きくクロスして落ち込む傾向」が4月以降継続していることが注目に値する。11月では全体指数も下げを見せたがそれ以上に雇用関連指数は下げている。これを「全体」「雇用」間の乖離と見るのはやや難があるため、もう少し調整の時をおく必要がありそうだ。つまりまだ現況景気感は下げる可能性が高い。

景気の先行き判断DIについては、先月に続き今月も下げてしまった。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

現況同様に先行きでも「飲食関連」がわずかながら復調している。これは月次の外食チェーン店のレポートにもあるように、低価格帯の外食チェーン店が順調に成績を伸ばしているからだろう。また、雇用関連の数字も多少上がっているが、これは「これ以上下がるわけがない」という期待感も含まれているものと思われる。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

総合先行きDIはすでに3か月前で2001年後半時期における最下方の値に達している。それ以降はやや横ばいかほんの少しだけの上げで推移していたが、10月で大きく底値を突き抜けてしまった。この傾向は「現状判断指数」と変わらない。10月におきた株安や景気の悪化がいかに大きなインパクトを与えたのかが分かる。「現状」同様に雇用関連の数字の下落度合いが、2001年の不況と比べてまだ足りないように見受られるが、11月はわずかに上向く気配を見せている。これが「だまし」で次月以降再び下降するのか、あるいはこのまま上昇トレンドに移行するのか(過去の事例からすると、数か月のもみ合い期間を要する)、気になるところだ。

少なくとも2003年以降よく見受けられるようになった上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」がまだ確認できず、クロス・逆転も起きていないことからも「まだ底ではない」ことは確認できる。

発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)に関して事例を挙げてみると、

・石油製品価格の下落により、石油製品の販売量は前年並みに回復したが、自動車関連部
品の売上が低迷している(ガソリンスタンド)。
・そろそろ忙しくなる時期であるが、依然動きがない。客から、雇用調整で仕事がなくな
り、生活に余裕がないという話を聞く(美容室)。
・前年に比べ買上点数が減少し客単価の伸び率も低下傾向にあることから、客は価格にシビアで慎重な買物をしている様子がうかがえる。米と酒の買上点数が増加し、冷凍食品の売上が9割以上まで回復しており、内食化が一層明確になっている(スーパー)。
・紅葉シーズンの秋季入込は悪くなかったが、年末年始の忘年会、新年会の予約状況や問い合わせ状況を見る限り、決して状況が良くなっているとは考えにくい(観光型ホテル)
・ガソリンや灯油の価格が落ち着いてきたものの、企業の業績悪化に伴う給与の不安から住宅需要は冷え切っている(設計事務所)。
・高額商品の購入歴のある客が、主に株価の低迷や経済情勢の低下予想等の理由で購買を控える傾向が強くなっている(百貨店)。


など、全体的に不況感が浸透していることが分かる(大別項目で「良」「やや良」の事例が存在しない状況に変わりは無い)。また、資源価格が下がっても消費者の消費モチベーションが回復しないことや、富裕層・大量購入層ですら買い控えに走っている様相が把握できて(アメリカでも同じ現象が起きている)、普段噂されていることが裏づけられると共に、景気悪化を再確認できる。


金融危機の悪化で
景気感は一挙に急落。
富裕層にも節約機運高まり
消費は一挙に減退へ。
実体経済にも
大きな影響が進行中。

掲載は略するが、先に【3割の企業が「年末には資金繰り悪化」】でも触れたように、資金繰りの悪化で年末が綱渡り状態になりかねないという記述があちこちのコメント欄で見受けられる。12月はどう考えても11月分データより状況が改善するようには見られない。「年末商戦」は1年でもっとも大規模なかきいれどきだけに、非常にゆゆしき事態といえる。

本文中でも以前から何度か指摘しているが、今回の景気悪化が2001年から2002年にわたった景気悪化のパターンを踏襲するのなら、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数との乖離(かけはなれること)」現象が見られるはず。11月のデータを見る限り、9月の時点でかすかに見えた景気感反転の兆しは粉々に吹き飛び、さらなる下落すら容易に予想できる。各コメント欄の内容もしかり。

外部的要因に振り回される感が大きいだけに、なかなか手の打ちようが無いのも事実。また、上記文中でも触れたが本来の経済原理・原則である需給バランスによる自然的な調整も、投資ファンドが中抜きをしたまま場を離れてしまったため、自然回復には時間を要する可能性も高い。そして現況となった金融危機(「金融工学危機」)は終わりを見せるところがない。

ここ数か月は厳しい状況が続くだろう。国内だけでなく世界中で同じような現象が起きているため、恐らくは日本国内一国だけで云々しても手のうちようがない、という判断が正しい。国内的な混乱をできうる限り押さえ(状況の混乱を望むものもいるが、彼らの「扇動」に惑わされることなく)全体が下落する中でもダメージを最小限に備えつつ、反転の時のための活力を保持しておきたいものだ。

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