「ケータイSNS」の傾向を強めるmixi
2008年11月12日 12:00
先日11月5日、日本国内最大手のSNS【mixi】を運用する【ミクシィ(2121)】の2008年第2四半期決算が発表された。業務は比較的堅調で一時の爆発的な伸び率ほどではないが堅調な成長振りを見せていることなどが報じられていたが、特段気になることもなく、チェックはしていなかった。今日付けの記事【mixi、リクルートと共同でバナー広告のデザインを一般ユーザーから募集】を書き上げた際、「せっかくだから」とばかりに短信と、さらに【決算説明資料(PDF)】を見たところ、改めて確認できたことがあった。「mixiはケータイSNSへの道を歩みつつある」ことに。
スポンサードリンク
●ページビュー数ではすでに「パソコン1」対「ケータイ2」に
もちろんmixiは元々パソコン向けのSNSとしてスタートしており、現在でもパソコンでほぼフル機能を使うことができる。むしろパソコンで出来ることの方が多い。しかしSNS(不特定多数への公開ではなく、特定の人への公開も可能なコミュニティ)という性質上、より多くのユーザーがアクセスできる環境を持ち、手身近に存在する携帯電話の方が相性はよい。
mixiの携帯電話への対応はパソコン版オープン直後の2004年3月16日。機能は逐次充実していったが、パソコンからしか新規登録ができなかったため(要は「パソコンユーザーの補完的機能」としてとらえ方だった)、伸び率は今ひとつ。しかし【携帯電話からの新規登録と、セキュリティ強化に関するお知らせ】にもあるように、2006年12月4日に仕様が変更され、携帯電話のみでもmixiの登録・利用が可能となってから爆発的に携帯電話経由の会員数が増加。やや伸び率を鈍化させつつあったパソコン経由の会員数を補完してなお有り余るほどの登録者が押し寄せることとなった。
登録会員数の内訳は公開されていないので詳細は不明だが、パソコン・携帯電話それぞれのページビュー数では2007年8月に初めて携帯電話経由の値がパソコン経由のを上回り、以降ずっと「携帯電話経由のページビュー数が全体に占める割合を増やしつつある」傾向が見られる。
2006年4月以降の月次ページビュー数(棒グラフ部分)とユーザー数推移(折れ線グラフ部分)
パソコン:漸減→横ばい
携帯電話とパソコンではアクセスの仕方が異なるので一概に比較はできないが、相対的な伸び率を見ても「パソコン会員はピーク時を過ぎてやや減少のあと、横ばい」なのに対し「携帯電話会員は急速な成長。現在も緩やかながらも成長過程にある」ことが分かるだろう。
ちなみに2008年9月時点の数字はパソコン経由のページビューが49.9億なのに対し、携帯電話経由は97.8億。すでにパソコン対携帯電話の比率が1対2に迫っている。この比率がさらに携帯電話寄りになることは容易に想像がつく。
●ビジネスの面でも「ケータイ有利」に
mixi(ミクシィ)が携帯電話への傾注を進め、またそれを会社側も否定する所か歓迎している向きがあるのは、単に会員数・ページビュー数の成長が見込めるからだけではない。mixiの主な収入源である広告(全体売上の85.9%)において、パソコンよりも携帯電話の方が、今後の成長が見込めるからだ。
ページビューあたりの広告単価概算(それぞれの広告売上をページビューで除算)
一見するとパソコンの方が広告単価が高い。しかしパソコンは2007年夏(そう、パソコンと携帯電話のページビュー数が逆転したころだ)以降上下を繰り返しつつも全体としては横ばいのまま推移している。一方携帯電話は緩やかながらも上昇基調にあり、この傾向は現在もなお継続している。
これは携帯電話の方が(アクセス者のリアクションが良いことなどを理由に)広告単価がパソコンより高いこと、パソコンのネット広告がやや飽和状態に近い状態にあるのに対し、携帯電話の広告はまだまだ伸びる余地を持っていることなどが原因として挙げられる(競争が激しいほど広告単価も上がる)。
・携帯の広告価値:緩急成を持続
(広告領域拡大の余地あり)
さらにグラフ上のパソコンの値は「ほぼ全ページに渡って掲載されている広告」による売上をパソコンのページビュー数で割った値だが、携帯電話の場合は「一部ページにのみ掲載されている広告」による売上を「携帯電話の全ページビュー数で」割った値なのに注意する必要がある。つまり、純粋な「広告が掲載されているページ」の広告単価・価値は、これをさらに上回ることが容易に想像できる。それはまた同時に今後「未開拓(広告を設置していないページ)」に広告を設置することで、売上そのものを現状からさらに上げられる可能性をも秘めていることを意味する。
冒頭などでも触れたように、携帯電話の機能が充実すればSNSはパソコン経由よりも携帯電話経由の方が、利用者にも運営側にも何かと都合が良い。恐らくミクシィ側もmixiの開設当初は携帯電話がここまで機能を拡充し、多くの人に使われるとは思わなかったし、携帯電話によるSNS利用がこれほどまでに多くの人に愛用されるとは想定していなかったのだろう。
それでも(企業としての)ミクシィ側は状況に応じて柔軟に対応策を打ち出し、紆余曲折を経て、利用者の求めに応じた運営スタイルを構築し、変化を続けている。今後、時代の流れが求めるならば、(SNSの)mixiは今以上に携帯向けに傾注していくだろう。気がつけばmixiのことを尋ねると「そういえばパソコンでもmixiって出来たよね」と語る人がほとんどすべてになる、という時代もやってくるかもしれない。
スポンサードリンク
ツイート