消費スタイル調査から読み解くデパート不調の原因

2008年11月27日 06:30

デパートイメージWebマーケティングガイドは11月25日、インターネット調査会社のボーダーズとの共同調査の結果を発表した。その結果によると、年収や職業の違いにより消費スタイルに違いがあることが明らかになった。その一方で、昨今のスーパー・デパート(チェーンストア)における売上低迷の一端ともいえる現象も、数字的データとして確認することができた。ここではその点に的を絞って紹介を行うことにする(【発表リリース】)。

スポンサードリンク

今調査は10月20日から10月21日の間にインターネット経由で15歳~49歳の男女に対して行われたもので、有効回答数は624。年齢階層(10歳単位)・男女比率は均等割当。

今調査では家電・食料品・衣料品の3種項目において、どこで購入するかについて年収毎のデータを調査、その結果を公開している。実店舗で購入する人が多いのは当然のことだが、商品の種類や年収により、異なった傾向が見られる。特に注目したいのは「衣料品」「家電」に関する購入場所の調査結果。

衣料品の購入場所(世帯年収別)
衣料品の購入場所(世帯年収別)
家電の購入場所(世帯収入別)
家電の購入場所(世帯収入別)

食料品の多くは日持ちの問題や「手にとって鮮度などを確かめた上で買いたい」「単価が安いので手数料・配送料を考えると採算が合わないものが多い」などの事情から、ある程度単価の高いもの・珍しいもの・日持ちして買いだめできるものでないと、インターネット経由で買われる機会は少ない(それでも最近はデパート系のサービスとして、他の商品とまとめ買いして手数料を実質的に節約できる、野菜などを買えるサービスも登場しているが……)。

ところが家電や衣料品なら少なくとも鮮度の問題は無い。単価も高めなので手数料・配送料もあまり気にせずに済む。一方で衣料品の場合は「試着して自分の好みと合うか」「サイズはぴったりか」「袖あわせなどの微調整も含めた購入時におけるカスタマイズ・フォローができるか」などの項目で不安が生じる・不可能といったデメリットがインターネットには存在する。

特に衣料品におけるデメリットは、時として致命的なものになる可能性が高い。だからこそデパートなどでその場で試着し、係の人に微調整をしてもらい、購入してもらうことになる。にも関わらず家電では全体として4割前後、衣料品でも3割後半から4割の人が実店舗ではなくてインターネット経由で購入すると答えている。

もちろんこのアンケート自体がインターネット経由で行われているため、ある程度ネットに精通している人が調査母体となっているため、世間全般と比べれば多少はインターネット関連の回答に有利に働いている可能性はある。全消費者の割合(インターネットをほとんど、あまり使わない人も含めた)で考えるのなら、今回の調査結果からマイナス数%くらいの修正をする必要があるだろう。しかしそれを差し引いても、多くの人が「実店舗での買い物」から「インターネットでの買い物」に流れていることが確認できる。

ネット経由での買い物
・家電……4割
・衣料品……3割強~4割

特に衣料品はデパートの
得意分野だったはず。

インターネットに
お客の多くを奪われた形。

デパートの業績不調の一因!?

インターネットでの買い物をする理由としては、別機関の調査結果として「時間と身体を拘束されない」「お値打ち度が高い」が上位についている(【「そこに商品があるからだ」ではなく……インターネットで買い物をする理由】)。わざわざ実店舗で実物を触らなくても買えるものはもちろん、多少デメリットがあってもこれらメリットの方が大きければ、多くの人は実店舗での買い物からインターネットに流れてしまうだろう。

月次のデパート・スーパーの売上成績(直近では【2008年10月度のチェーンストアの売上高、前年同月比-1.6%】)では売上構成比こそ食料品に及ばないものの、従来デパートなどがメインとしていたはずの衣料品や住関品が大きく売上を落とす傾向が強まっている。不景気だ、店舗数が少なくなっている、サービスに問題がある、販売店舗が多様化した(100均やアウトレットモール、ディスカウントストアなど)などの原因も指摘されているが、やはり最大の原因は「インターネットによる購入手段に客が流れた」ことにあるに違いない。百歩譲って家電は家電量販店との争いもあるだろうが、衣料品は(紳士服など一部を除けば)本来デパートなどの独壇場だったはず。そのエリアが侵食されているのだから、全体としての売上が頭打ちになっても当然といえる。

特に今回のデータを見ると、衣料品・家電共に比較的高収入の層がインターネットを多く利用しているのが、デパートからすれば痛いポイント。単純に考えれば収入が多いほど可処分所得も増え、多くの品物を購入してくれる「上客」となりうるはず。それらの多くがネットに移行してしまっては、「たまったものではない」というのがホンネに違いない。


デパートで衣料品や
家電商品を売るには
インターネットでは
出来ない「メリット」を
提供する必要がある

一方で、食料品においては先に言及したように(種類にもよるが)実店舗での購入メリットが大きいため、家電や衣料品ほどインターネット経由で買う、という人は多くない。また、この食料品という分野はデパートなどにおいては、数少ない堅調な、売上を伸ばしている分野でもある。

仕立て屋イメージ実はここに「ヒント」がある。食料品をインターネットで買う人はあまり多くなく、デパートでは大いに売れている。それは実店舗で買った方がメリットが多いから。「当たり前のことを偉そうに言うな」ととがめる人もいるだろう。それでは逆に質問したいのだが、現状において「家電や衣料品を実店舗で買うことによるメリットは、どれくらいある」だろうか。また、インターネット経由の購入によるメリットと比較した時、どちらがよりメリットが多いだろうか。よほどの思い入れか、代えがたい長所が無い限り、メリットが多い方が選ばれるのは当然のこと。

残念ながら単純なメリットの「数」では、インターネットにデパートなどがかなうとは思えない。ならば「数は少なくとも代えがたい」ものを提供する必要がある。それは何だろうか。実際に売れている「食料品」や、このデパート・スーパー不況の中でも売上・客足を伸ばしているようなスタイル・戦略の店舗に正解が見え隠れしているに違いない。


(最終更新:2013/08/01)

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ