バンダイナムコのキャラクター別売上をグラフ化してみる
2008年11月21日 06:30
先に【主要テレビ局銘柄の第2四半期決算をグラフ化してみる】などで各テレビ局の財務諸表や付随資料をチェックした時に「この際だから他社の資料もチェックして面白いものがあれば図表にしてみようか」という考えが頭に浮かんだ。あのバフェット氏も「有価証券報告書を読むのが一番楽しい」と述べているように、各種諸表や関連資料に目を通すと、その会社の実情が色々とつかめてくるようで、楽しくなってくる。今回は【バンダイナムコホールディングスの株主総会出席レポート】や【アニメセクター銘柄の決算を比較してみる】などでもチェックを入れた、残念ながら今は株主ではないもののその機会を狙っている【バンダイナムコホールディングス(7832)】の資料から、同社の主力事業の一つであるキャラクター関連商品について、キャラクター別の売上を見てみることにする。
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注意事項をいくつか。現在こそバンダイナムコホールディングスとなってはいるが、かつてはバンダイとナムコは別々の会社として別個の存在だった(正確には現状は~ホールディングスの傘下に各社が収まる形)。別々の会社の時のデータは各財務諸表などはあるものの、キャラクタ別売上までは掲載されていない。データとして取得できたのはバンダイ個別が2006年3月期以降、グループ全体はデータの公開を始めた2008年3月期以降のみ。
もう一つは最新データについて。現状では2009年3月期は第2四半期までしかデータが掲載されていない(当然のお話)。短信では業績予測として通期の予想データも掲載されていたが、今回はあえてそれを無視し、単純に第2四半期データを2倍に増加して表組みした。
この理由は次の通り。短信の予想データは「年末商戦のかさ上げを反映」し、ややポジティブな数字が計上されている。しかし現時点においては今年度前半期より後半期の方が景気後退の影響は大きく出るのはほぼ間違いなく、仮に年末商戦の効果があったとしても、プラスマイナスすれば(プラスは年末商戦、マイナスは景気後退分)ほぼゼロになると予想した方が妥当性が高い。それゆえ、今回はあえて単純倍増で予想値を算出した。
さて早速グラフを見てみることにする。まずはグループ全体のデータを元にしたもの。これは昨年度からしか公開されていないので、データも2期分だけになる。
バンダイナムコHD・グループ全体キャラクタ別売上推移(億円)
先に説明したように年末商戦の売上をきつめに見積もっているのでやや下落しているように見えるが、会社自身の業務予想でもさほど大きな違いはないので、実際もこのようなものだろう。ざっと見で分かるのは「ガンダム、強いよね」ということ。前売上の4割近くを『機動戦士ガンダム』シリーズではじき出している。さらに2008年3月通期の全体売上高は約4600億円なので、『機動戦士ガンダム』だけで1割強の売上を占める計算。
また、子ども向けとして人気の高い「パワーレンジャー」も、バンダイナムコのキャラクタ部門を支える大きな柱となっていることが分かる(ちなみに『BEN10』とはアメリカのアニメヒーロー)。
ただその一方、今期だけの特性なのだろうが、『機動戦士ガンダム』シリーズの売上が大きく落ち込んでいるのが気になる。作品毎の展開ペースによって大きく左右されるのだろうが、今期の売上減の少なからぬ部分が「ガンダム不調」にあることも確認できよう。
続いてバンダイ個別のデータ。こちらは幸いにも2006年3月通期からのものが用意されていた。
バンダイ個別キャラクタ別売上推移(億円)
こちらのデータを見た上での傾向は次の通り。
・「ガンダム」「スーパー戦隊」「アンパンマン」「仮面ライダー」などの定番タイトルは非常に強固な地盤を築いている。
・一方で「プリキュアシリーズ」※のように、新規で確実な売上を確保するラインも登場。しかし多くは一過性のもので、題材タイトルの流行りすたりによる影響が大きい。
・自社アイテムの「たまごっち」、大黒柱の「ガンダム」の落ち込みが目に留まる。
・「プリキュアシリーズ」以外に定番となるようなキャラクタ(のアイテムライン)が生み出されていない。
※プリキュアシリーズそのものは2004年2月から展開
こちらもやはり2009年3月期は年末商戦部分をややキツめに見積もっているため、実際にはもう少し上乗せされるだろうが、やはり辛い状況であることは容易に想像がつく。特にグループ全体でも見られた傾向である「大黒柱のガンダムの落ち込み」が辛い。ただし個別では「ガンダム」の落ち込みを「スーパー戦隊」と「プリキュアシリーズ」が補う形となっており、全体の売上減はその他シリーズの低迷が原因のように見受けられる。
全体を見た限りでは、やはり以前出席した総会でも語られていたように、キャラクタビジネスが少々厳しめの時期にさしかかっていることが分かる。キャラクタ商品は元ネタとなる作品がヒットしなければ売れないし、放送なりDVDの展開スケジュールがずれこめば大きな痛手を受けることになる。当たればでかいが外れても痛手は大きく、さらに原作のヒット度合いやスケジュールは関連グッズ展開側(今件ではバンナム側)がコントロールできない面が多々ある。
支える四銃士
「機動戦士ガンダム」
「スーパー戦隊」
「アンパンマン」
「仮面ライダー」
このようなリスクを避けるため、できるだけ多くの「儲かるキャラクタライン」を確保するのがキャラクタビジネスでは欠かせない。バンナムならば「ガンダム」「スーパー戦隊」「アンパンマン」「仮面ライダー」がそれに該当する。しかしこの数年来、「プリキュアシリーズ」以外に新たな「ライン」を創造できないでいるのも事実。ただでさえ趣味趣向の多様化・分散化、さらに日本では少子化が進む中で、新しいラインを生み出せずに既存ラインで食いつないでいくだけでは今後の成長は難しい。
「それなら今は売上比率の低い海外展開をもっと重視すればよいではないか」という考えもあるかもしれない。実際、2009年第2四半期における売上のうち、実に3/4までが日本国内だけで占められている。その一方、展開商品の特性もあるだろうが、営業利益は日本国内においては67.4%に過ぎず、他地域の80%代後半と比べるとかなり効率の悪いビジネスを強いられているのが分かる。この数字だけを見ると「海外積極展開」は最良の手法の一つにも見える。
「プリキュア」以外に
見つからないのが問題
しかし実際には、アメリカ地域の売上・利益の伸びはかんばしくなく、ヨーロッパやアジア地域の規模はまだまだ小さいのが実情。急に何か戦略転換をしようとしても、一朝一夕では難しい。
バンダイナムコは企業全体としては、現時点ではまだ体力はあるように見受けられる。ただしこのまま同じことを繰り返していたのでは、先細りは目に見えている。余力のあるうちに「機動戦」を展開し、業務成績の成長が見越せる戦略を打ち出さないと、ジリ貧におちいることは想像するに難くないだろう。
(最終更新:2013/08/01)
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