イエシロアリの仕組みを解明・樹木からのバイオエタノール精製技術に使えるかも?
2008年11月20日 08:00
理化学研究所は11月14日、木材の害虫として知られているイエシロアリについて、その木材をえさとする仕組みの要である「腸内に共生する微生物群」の仕組みの一端を解明したと発表した。特殊な細胞が木の成分をエネルギーとして空気中の窒素を吸収、さらにはリサイクルまでしてアミノ酸やビタミンを合成しており、これがイエシロアリの栄養分につながるのだという。イエシロアリ体内における木質を用いたエネルギー精製の仕組みが解明されたことで、樹木などからバイオエタノールを精製する技術が開発できるのではないかと期待されている(【発表リリース】)。
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イエシロアリは木造住宅の大敵として知られており、実際大きな被害をもたらしている。一方でそのシロアリが持つ強力な木質分解能力が、人の食料と競合しないセルロースなどの原料からの次世代バイオ燃料開発への応用という観点において注目を集めている。ところがその能力の要となる「イエシロアリの腸内にいる共生微生物」の大部分が培養できず、検査できないため、どのような仕組みで微生物が木質をイエシロアリの栄養分に変えているのかなどの仕組みが分からなかった。
研究グループでは以前確立した方法を用いて、イエシロアリの腸内でセルロース分解を担う原生生物Pseudotrichonympha grassii(シュードトリコニンファ・グラッシイ)の、その細胞の中だけに生息するCfPt1-2細菌のゲノム配列の完全解読に成功。その結果、この細菌は、原生生物が木質分解した産物の一部をエネルギー源にして空気中の窒素を吸収し、さらに、原生生物の窒素老廃物を分解して、窒素供給源としてリサイクルしていることが判明した。
研究グループが明らかにしたCfPt1-2細菌の役割
シロアリのえさの木材には生物が行き続けていくためには欠かせない窒素分がほとんど含まれていない。そのためシロアリの繁殖力に必要な窒素分の確保がどのようにして行われるのかが謎だったが、今回の研究で明らかになった共生細菌が「空気中から窒素を吸収して」いることが判明した。この細菌が空気中から吸収した窒素を用い、生命活動に欠かせないアミノ酸やビタミンを合成し、さらに窒素老廃物をリサイクルすることにより、イエシロアリと原生生物は窒素欠乏に陥ることなく、驚異的な木材分解力と増殖力を発揮しているものと推測される。
今回このように、イエシロアリのえさである木質を栄養分に変える仕組み、共生細菌の働き方が解読されたことにより、この細菌の仕組みを用いた木質のバイオマス利用法、さらには害虫の防除法の研究につながるのではないかとして
イエシロアリの驚異的な繁殖と、木質しかエサにしていないのにどうしてあそこまで強じんな生命力・繁殖力を持つのか、その素朴な疑問を解消し、将来のエネルギー問題を解消するカギの一つが見つかったことは非常に興味深い。具体的な応用例と活用方法の探究にはまたまだ時間がかかりそうだが、木質の投入でさまざまな養分などが精製できる「仕組み」はきっと何かに応用できるはずだ。
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