株価の下落によるストレスや睡眠不足から解消される方法
2008年11月18日 06:30
【92%の女性が「経済でストレス」~金融危機で深まるアメリカのストレス社会化】や【安眠を得るための7つの秘けつ】にもあるように、アメリカ発の金融危機(金融工学危機)は実体経済、さらにはアメリカ人の心身そのものにも深い影を落としつつある。経済的な悩みでストレスをため、睡眠不足におちいる人が増加しているとの話もちょくちょくニュースとして入ってくる。【The Wall Street Journal】ではついに「睡眠」と「投資」を共に提示して「両方を解決してぐっすり眠りましょう」という主旨の記事まで掲載された。日本ではあまり当てはまらない部分もあるので、概要をざっくりと紹介してみることにする。要件を一言でまとめると「ポートフォリオを工夫して、精神的な安定と安らかな睡眠を手に入れましょう」というものだ。
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本文では冒頭で「このハードな市場展開においては『リスクに寛容になる』なんて言葉は矛盾してるね」とばっさりと切り捨てている。想定外の事態が起きていることもあり、あちこちの投資家向けサイトで確認が出来る「どれくらいリスクを取るか、リスクを避けるか」などという判定はまったく役に立たない状態だ。特に10月の「ブラッディー・オクトーバー」で40%もの下落を味わった人には、先週から今週にかけてさらにじわじわと自分の財産が削られていく様子を、何もせずに我慢することなど、精神的に耐えられないに違いないと嘆いている。しかしそのような状況でも、次のようなポートフォリオ(投資資産の組み合わせ)をすれば、苦痛に悩まされることなく、投資を続けることができるとしている。
その方法とは。
国債と株式の比率を1対1にすることだ。つまり総投資資産のうち、国債の評価額が1、株式の評価額が1になるように、調整を行うということ(追加・新規購入のための現金はまた別扱い。手持ちの現金を全部有価証券にしろ、というわけではない)。
国債と株式を1対1にした場合のメリット・デメリットとは
10年単位でポートフォリオを考えれば、国債・株式が1対1の組み合わせと(「国債・株式等分」)、株式の割合を8割に増やしたもの(「株式8割・国債2割」)とでは、ほとんど同じパフォーマンスを得ることができると元記事では述べている。そして現状では「国債・株式等分」のポートフォリオを組んでいる人は、「株式8割・国債2割」の人と比べれば安穏な日々を過ごしているに違いないと説明している(※国債は株式ほど昨今の変動の影響を受けていない)。資産を確保しておくだけが目的なら、国債を多く持っていればそれで十分。その方がリスクが低くて確実だ。「国債・株式等分」ならば株式の評価損に頭を抱え、損切りをしてもだえ苦しむリスクも少なくなる。
ただし、インフレ率やこれまでの傾向を振り返れば、数十年の単位で考えると株式の比率が大きいポートフォリオ「株式8割・国債2割」はよりよい成果を上げる。これもまた事実。記事では具体例として、1987年のブラックマンデー直後にポートフォリオを組んだと仮定。現在までの21年間にどれくらいのリターンを得られたかを試算している(配当はすべて再投資に投入、年に一回リバランスを行い、割合を調整するという設定)。仮に国債と株式を50%・50%で編成した「国債・株式等分」の場合、年平均で10.0%の資産増加が望めることになる。最高の年では13.8%のプラス、最悪の年は9.1%のマイナスだ。
「国債・株式等分」……-14.6%
「株式8割・国債2割」……-24.8%
ところが株式を80%、国債を20%にした「株式8割・国債2割」の場合、市場動向に大きく影響を受けることになる。この場合は年平均で国債と株式の半々の場合と比べてわずかに好成績な10.3%の資産増加となる。ただし最高は17.6%のプラス、最悪は14.2%のマイナスと、起伏が非常に大きくなる。
ちなみに現時点では、2007年10月からの1年間で試算した場合、「国債・株式等分」では14.6%のマイナス、「株式8割・国債2割」では24.8%(!)のマイナスとなる。さらに過去21年間において「国債・株式等分」のポートフォリオでは「株式8割・国債2割」の95%のパフォーマンスの状態を維持している。そして大抵の場合において「より低リスクで」という条件も加わって、この好成績だ。もちろんこの「国債・株式等分」ポートフォリオを採用している人は、精神の安ねいと安らかな眠りが得られることになる。
確かに国債の割合を増やすことで、リターンは少なくなるかもしれない。しかし上記にもあるように、実は中長期でみれば違いはさほど変わらないという現実がある。元記事では次のような試算も行われている。仮に1987年に2万5000ドルを「株式8割・国債2割」のポートフォリオに組み込んで一切追加投資をしなければ、19万6000ドルになっている。国債・株式等分では18万5000ドル。その差は1万1000ドル。
ドルコスト平均法も有効な手立てといえる。仮に毎月100ドルをポートフォリオに追加していけば、「株式8割・国債2割」なら26万1621ドルに、「国債・株式等分」なら25万1732ドルになる。世間一般に言われているほど、大きな差が生じていないことが分かる。
もちろん強気相場なら「株式8割・国債2割」の方が良いに決まっている。それだけ株価の上昇に預かることができるからだ。しかし「国債・株式等分」を選べば、市場が混乱して他人が頭を抱え精神を痛めストレスを溜めて睡眠不足におちいっている時にも、比較的安穏とした日々と睡眠を得ることができるの。これは数千ドル以上もの価値はあるに違いない。
冒頭でも触れたように、そして【過去60年間の日経チャートと「7%」「20年サイクル」・本当に「長期投資」は必勝法なのか】でも記事にしたように、日本の株式の場合にはアメリカの相場のように右肩上がりで成長しているとは「言いがたい」傾向を「現時点では」示しているため、このような話がそのまま成り立つとは限らない。しかし低リターンであっても低リスクな金融商品をポートフォリオに組み込んで、中長期的な資産形成を行うのは決して悪い話ではない。
そして何より精神的な安ねいを得られるのは、投資家にとって何ものにも代え難い価値のあるものに違いない。
(最終更新:2013/08/02)
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