ゲーム・エンタメ系雑誌の部数変化をグラフ化してみる

2008年11月18日 06:30

ゲーム・エンタメ系雑誌イメージ先に【少年・男性向けコミック誌部数の変化をグラフ化してみる】でまとめてグラフ化した、【社団法人日本雑誌協会】のデータ。このデータには少年・男性向けコミック誌だけでなく、多種多彩なカテゴリーに分類された雑誌の印刷実績が含まれていた。当サイトの色合いにあったものや、過去の記事に関連するものもいくつか見つけられたので、何回かに分けてグラフ化し、色々と考えてみることにする。今回は「ゲーム・エンタメ系雑誌」について。

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具体的なデータは、直近が2008年4月~6月のもので、1年前に該当する2007年度のものは2006年9月1日から2007年8月31日までのものの平均。いずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたもので、雑誌社側の公証部数ではなく、また「販売部数」でもない。時期的にはだいたい1年程度のへだたりを経たデータであり、どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところだ。

また、季節によって販売性向が変わる雑誌の場合、2007年が「年間平均」で2008年が「4~6月平均」なので直接比較するにはやや難があるが、今回取り上げる雑誌群にはその心配は要らないようだ。むしろゲーム系の場合にはビッグタイトルの発売に伴い雑誌も売れるというように、乱数的な要素が多いといえる。

それでは早速、まずは2007・2008年度における印刷実績を見てみることにする。

2007年度と最新データによるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績。
2007年度と最新データによるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績。

無理に「ゲーム・エンタメ」でひとくくりにしてしまったため、ゲームや声優やアニメやユニックスが混じっているという、カオス的なグラフになってしまった。しかし大体の傾向はつかめるはずだ。

まず最初に目に留まるのは「Vジャンプ」の圧倒的な売れ行き。ただでさえ同ジャンル他紙から群を抜いているのに、今年は去年からさらに印刷実績を大きく増やしている。まさに「一人勝ち」状態。アニメ系では「ニュータイプ」がやはりトップで、「Vジャンプ」ほどではないが成長を遂げている。データが公開されている範囲ではゲーム系では「電撃PlayStation」がトップ。

ゲーム系の雑誌に、かの「週刊ファミ通」が入っていないのにお気づきの人も多いはず。実は「週刊ファミ通」は「印刷証明付き部数」を公開していない。俗にいう「公称」こと自称印刷数が50万部とはなっているが、「印刷証明付き部数」がないため2008年分のデータを見つけることができなかった。同じ出版社で発売している同じ業界向けの「ファミ通DS+」は発表しているのに、なぜだろうか。不思議である。

ともあれ、ゲーム系漫画誌では「Vジャンプ」、ライト感覚なエンタメパソコン誌では「週刊アスキー」、アニメ系では「ニュータイプ」が先頭に立っていることが分かったが、これらの雑誌の直近成長率はどのようなものか。各誌の(ほぼ1年間における)販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)

雑誌毎の差異が非常に大きく出ているのが第一印象。ネガティブな面では「ゲーム系」はほぼ壊滅的な状態にあることが分かるが、他のジャンルではすべての雑誌でマイナスを示しているわけではなく、「印刷数を落としている」「印刷数を増やしている」の二種類に区分化できることが見て取れる。例えばアニメ系なら「アニメージュ」の落ち率はきわめて大きいが、印刷数トップの「ニュータイプ」や「ニュータイプ THE LIVE」は堅調、「コンプティーク」なども前年比+10%以上の伸びを見せている。

ゲーム系の雑誌の印刷実績が軟調なのは、先のマネー系雑誌と同様に「できるだけ早い情報を望む」読者が雑誌からインターネット(パソコンや携帯経由)にスライドしているのが一因と思われる。特に最新機種をターゲットにしているにも関わらず「ファミ通DS+Wii」の下落率は3割を超え、危機的ですらある。「週刊ファミ通」が「印刷証明付き部数」を公表しないのも、あるいはここあたりに理由の一つがあるのかもしれない(似たような状況にあるのか、あるいは一度公開したら再び非公開にすることは困難であり、先行きを考慮した上でのリスクの高さからの判断)。


本文中で「読者性向が雑誌からインターネットにスライドしつつある」という言い回しを使った。実際に印刷部数を減らしている雑誌の多くで、インターネット上の情報展開を積極的に行っており、自らの「雑誌の読者」を「自社のウェブサイト」へ誘導して「ファンの引っ越し」を模索する動きが見られる。しかし雑誌の販売と異なり、「無料で」情報公開を実施しているウェブサービスでは、「読者は増えてもビジネスにならない」状態が続いていることは否定できない(広告収入もあるが微々たるものだろう)。

●ゲーム・エンタメ系雑誌が
生き残るために
これから求められること
(1)雑誌そのものの魅力の向上
(「Vジャンプ」などの成功事例を参考に)
(2)読者を奪われているネットの有効活用
(「奪い合い」ではなく
「相互補完」「相乗効果」を)

中には「ウェブ広告」と「雑誌広告」をペアにして販売する雑誌社も登場しているという話を耳にする。お互いに不足している部分を補完し、広告を出す側には両方のメリットを得られるような「商品」を展開するというわけだ。これなら思惑通り(雑誌の販売数の減少以上にウェブの利用者数が増加する)にいけば、雑誌の売上がそれなりに落ちても広告費で雑誌の経営を成り立たせることは出来る。しかしこれも「絵に描いたモチ」にしかならない可能性は高い。

「雑誌よりもウェブの方がメリットが大きい」と読者に判断されがちなジャンルにおいては、今後も雑誌の印刷部数(≒販売部数)は減少していくだろう。いかに「雑誌そのものの売上を落とさず、むしろ上げていくのか」(売上を伸ばしている「Vジャンプ」「コンプティーク」「ニュータイプ THE LIVE」が何故好調なのかをチェックすれば、答えは見えてくるはず)、そして「読者を奪われている対象のウェブをうまく活用するのか」、今後この業界の雑誌においてはこの2点を考えねばならないと思われる。

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