少年・男性向けコミック誌部数の変化をグラフ化してみる
2008年11月17日 08:00
先にテレビ局の第2四半期決算のデータをまとめている際に、各種データの検索をしていたところ、テレビ業界同様に新メディアに押されつつある雑誌業界について興味深いデータを見つけることが出来た。【社団法人日本雑誌協会】がまとめたもので、主要定期発刊誌の販売数を公開したデータだ。現時点における最新のデータと、去年に該当するデータの二つの公開が確認できており、それぞれが非常に興味深い内容を示している。そこで今回は、読者層を考慮してもっとも興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化してみることにする。
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具体的なデータは、直近が2008年4月~6月のもので、1年前に該当する2007年度のものは2006年9月1日から2007年8月31日までのものの平均。いずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つま「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたもので、雑誌社側の公証部数ではなく、また「販売部数」でもない。時期的にはだいたい1年程度のへだたりを経たデータであり、どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところだ。
まずは少年向けコミック誌。週刊少年ジャンプがトップにあることに違いは無いが……。
2007年度と最新データによる少年向けコミック誌の印刷実績。「月刊少年シリウス」は2007年度データが無いので空白。
「ジャンプ」は直近データで278.5万部。かつては600万部を誇っていたかの雑誌も今や半分以下の印刷数でしかない。と、いうことは販売実数はこれよりも少なくなる。一時はジャンプを超したともいわれていた「週刊少年マガジン」は「ジャンプ」よりミリオン単位で少ない値を示している。
個人的に意外だったのは「月刊少年マガジン」の印刷数。月刊誌のため一概には比較できないが(※1号あたりの冊数のため週刊と月刊で4倍する云々という計算ではなく、購入層の問題)、100万部近い冊数を刷っていることになる。また全般的にはコンビニや駅の売店でよくみかける度合い≒印刷数という印象が強い。
続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。
2007年度と最新データによる男性向けコミック誌の印刷実績
比較的若年層向けの「ヤングマガジン」「週刊ヤングジャンプ」が印刷部数で上位に並び、それに中堅層向けの「ビックコミックオリジナル」が続いている形になる。関東地方では毎週木曜日に発売される、若年~中堅向け男性漫画誌としては「モーニング」と「ヤンマガ」が二大勢力のように見えるのだが、モーニングはヤンマガに対しかなり遅れを取っていることになる。
さて、一応2期間の印刷部数を棒グラフ化したわけだが、続いてこのデータを元に各誌の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。「月刊少年シリウス」は2007年度データが無いので変移が計算できず、ここでは除外する。
要は約1年の間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すものだが……。
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
ほとんどの雑誌で前年比でマイナスを示している。大御所のジャンプがプラスを見せているのはさすがだが、その他には元々印刷部数が少ない「ドラゴンエイジ」が大きな伸びを見せている以外はほぼマイナス。
どちらかといえばマイナー誌に減少率の高い傾向が見られるが、その中でも大手の「週刊少年サンデー」が7.4%ものマイナス・「週刊少年マガジン」が6.2%ものマイナスを示しているのが気になる。水曜の定番週刊コミック誌も足元がおぼつかない状態ということか。
続いて男性向けコミック。
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
「月刊コミック特盛」は減少率も特盛状態。1年間でほぼ半減というのは少々冗談にならない数といえる。また、メジャー誌の「イブニング」や「ビックコミックスペリオール」が10%以上の減少率を見せているのも気になる。
その一方、「ヤングアニマル」系は奮闘を見せている。他の雑誌との差別化がうまくいっていることや、例の人気漫画『デトロイト・メタル・シティ』効果があるのだろう。クラウザー様万々歳、というわけだ。
今回参照したデータにおいては、2007年度において印刷証明付部数がついていないのもあり、それは除外した。知名度の高い雑誌も多いだけに、グラフに盛り込めなかったのが残念。ただし、印刷証明付部数の無い雑誌は一様に「さばを読んでいる」「下駄を履かせている」感が強く、データ検証の際に参考になりそうにも無く、仕方が無いのだろう。
一部雑誌の堅調・非常な下げ率を除けば、売店や本屋で見かける多くの雑誌で、1年間に数%の割合で印刷部数を減らしていることが分かる。出版社側は返本率が高ければ折を見て印刷部数を調整するわけだから(返本率の高い雑誌の印刷数をそのままにしていては、損失が増えるばかり)、印刷数はほぼそのまま雑誌の販売部数と考えてよい。つまり、実際の雑誌部数もこれだけの勢いで販売数を落としていると考えて問題は無い。
そう考えると、雑誌業界の厳しさは今後も続きそうな気配である。
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