【更新】「継続企業の前提に関する事項の注記」を確認してみる

2008年11月16日 12:00

「継続企業の前提に関する事項の注記」イメージ先の「面白開示」や「遅延企業」のチェックをしている際に、それらと同様に目に留まったのが「継続企業の前提に関する事項の注記」という文言。上場企業にとってはイエローアラートからレッドアラートに近いシグナルなのだが、この一か月、とりわけ先週一週間にあまりにも多くの企業がこのレッテルを貼られてしまっている。中間決算報告書の提出時期だから多くなる、というのもあるが、ここで改めて確認し、事態を把握することにする。

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「継続企業の前提に関する事項の注記」とは

まずは「継続企業の前提に関する事項の注記」について。証券取引法に付随する「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」においては第八条の二十七にて、次のように記載されている。

第八条の二十七  貸借対照表日において、債務超過等財務指標の悪化の傾向、重要な債務の不履行等財政破綻の可能性その他会社が将来にわたって事業を継続するとの前提(以下「継続企業の前提」という)に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合には、次の各号に掲げる事項を注記しなければならない。
一  当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
二  継続企業の前提に関する重要な疑義の存在
三  当該事象又は状況を解消又は大幅に改善するための経営者の対応及び経営計画
四  当該重要な疑義の影響を財務諸表に反映しているか否か


「継続企業の前提に
関する事項の注記」は
自ら「経営破たんの可能性」が
あることを認めつつ
それを打開していく意思も
あることを示している

つまり単純な売上金や純利益などの数字以外に、「この状態は企業として継続していくのは難しいかもしれないな」と監査人や企業(主に前者)が判断した場合、その理由と共に「継続企業の前提に関する事項の注記」が表記されることになる。これは第三者に対して「ここの企業は企業として持続できないかもしれない、そう判断するだけのネガティブな材料があるよ」という宣言に該当することになる。同時に「そのようなマイナス要素は認めるが、それを打開するための対策を打つよ」という決意をも意味する。

表現が非常にラフだが、例えるなら「自分は身長が●×▲センチなのに体重が◎×△キロ、BMI値が■○で非常にオーバーウェイト、医者からは『このままの体重ではあと一年も生きられない』と宣告された状態にある。でもこれからこれこれこういったダイエットプログラムに従ってスリム化を目指していくよ」という宣言に該当するものと考えれば良い。

上場企業では「体重増えすぎ」は、例えば「債務超過」「多額の借入金の返済日が近づいているが返す目処が立っていない」「社債の償還がとどこおっている、あるいはそうなる可能性が高い」「本業の儲けが出ていない状態(営業利益がマイナス)が継続している」などが該当する。いずれもこのままの状態が続けば、先行きは明るくない。

1週間で13社もの「継続企業の前提に関する事項の注記」

それでは過去一か月にさかのぼり、「継続企業の前提に関する事項の注記」に関するお知らせを挙げた企業(記載除外、つまり問題はとりあえずクリアしたものは除く)をリストアップしてみることにする。リンクは省略。

08/11/14 22:00 セイクレスト 継続企業の前提に関する事項の注記についてのお知らせ
08/11/14 20:50 フィンテック グローバル 継続企業の前提に関する事項の注記に関するお知らせ
08/11/14 17:43 イエローハット 「継続企業の前提に関する注記」に関する追加情報について
08/11/14 17:00 ワールド・ロジ 継続企業の前提に関する事項の注記に関するお知らせ
08/11/14 16:50 塩見ホールディングス 「継続企業の前提に関する注記」に関するお知らせ
08/11/14 16:00 コマーシャル・アールイー 継続企業の前提に関する事項の注記についてのお知らせ
08/11/14 15:30 テラネッツ 継続企業の前提に関する注記のお知らせ
08/11/14 15:30 ユニバーサルソリューションシス 継続企業の前提に関する注記に関するお知らせ
08/11/14 15:30 ニチモ 継続企業の前提に関する事項の注記に関するお知らせ
08/11/13 17:00 アゼル 継続企業の前提に関する事項の注記についてのお知らせ
08/11/13 14:03 アメリカン・インターナショナル 継続企業の前提に関する事項の注記についてのお知らせ
08/11/13 13:20 エス・バイ・エル 「継続企業の前提に関する注記」の対象から除外のお知らせ
08/11/11 19:50 アセット・インベスターズ 継続企業の前提に関する事項の注記に関するお知らせ
08/11/7 16:00 イエローハット 「継続企業の前提に関する注記」に関するお知らせ
08/11/4 15:47 フルキャストホールディングス 継続企業の前提に関する事項の注記についてのお知らせ
08/10/29 19:45 カーチス 「継続企業の前提に関する注記」の記載除外に関するお知らせ
08/10/27 16:00 石川島建材工業 継続企業の前提に関する事項の注記についてのお知らせ
08/10/24 16:00 原弘産 継続企業の前提に関する注記のお知らせ
08/10/23 18:05 ブロッコリー 「継続企業の前提に関する注記」に関するお知らせ


特に11月10日~14日の週に集中している(13社)のが分かる。これは3月末決算企業の第2四半期決算の公開締め切りが14日にあたるため。決算発表と共に、その内容から「継続企業の前提に関する注記」に関するお知らせが添付した企業が多いことを意味する。

例えば10月23日にブロッコリーが提示した[「継続企業の前提に関する注記」に関するお知らせ(PDF)]では、連結・個別財務諸表それぞれについて、「これまでの会社の施策説明」「数字的な決算状況が悪化していることと、それによって注記がついたことの説明」「注記事項に対してどのような対応策を打ち出すかの説明」が記されている。

ブロッコリーが10月23日に提示した「継続企業の前提に関する注記」に関するお知らせ。ごちゃごちゃしているように見えるが、構成はきわめてシンプル。
ブロッコリーが10月23日に提示した「継続企業の前提に関する注記」に関するお知らせ。ごちゃごちゃしているように見えるが、構成はきわめてシンプル。

「注記」がつけられた状況は各社毎によって異なるが、「お知らせ」の構成は概して似たようなものだ。


「継続企業の前提に関する注記」は、上場企業が投資家に対して「うちは危ないかも」と事前に教えてくれる貴重なシグナルといえる。もちろんこのシグナルを発した企業すべてが経営破たんをするわけではなく、復活を果たして大躍進を遂げるところも無いわけではない。

選択イメージその鍵を握るのは「現状に対してどのような改善策を打ち出すのか」という「今後の話」の部分。その内容が、現実度の高いものなのか、それとも現実認識が甘く「絵に描いたモチ」に過ぎないものなのかは各自で確認する必要がある。その上で「これなら大丈夫」と判断できれば、将来性を買うという選択肢もあるだろう。

もちろん、面倒くさいことが嫌いな人、リスクはできるだけ小さくしたいという人は単純に「継続企業の前提に関する注記」がついた企業は選択の対象外とすればよい。少なくともこれで、この注記に関するリスクからは逃れることができる。また、関連企業(取引先大手や大株主)も調べ、万一の時の連鎖ダメージをも考慮しておくとさらに安全度は高まるにちがいない。

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