工場や介護、医療場面での活躍が期待できる「体重支持型歩行アシスト」、ホンダが試作機発表
2008年11月09日 12:00
[ホンダ(7267)]は11月7日、体重の一部を支えることで、歩行や階段の昇り降り、中腰の姿勢をする際に腰にかかる負担を軽減する「体重支持型歩行アシスト」の試作機を公開した。同社が開発しているロボットASIMOの技術を応用したとのこと(【発表リリース】)。
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体重支持型歩行アシスト
体重支持型歩行アシスト
「体重支持型歩行アシスト」は”自力歩行が可能な”使用者本人の体重の一部を機器が支えることで、脚の筋肉と関節(股・ひさ・足首関節)の負担を軽減するという仕組みを持っている。「歩行アシスト」そのものはシートとフレーム、そして靴で構成されるシンプルな構造(重量は6.5キロ)。靴をはいてシートを持ち上げるだけで、手軽に装着が可能。さらにホンダ独自の「人の重心方向」へアシスト力(支える力)を向かわせる機構と、脚の動きに合わせたアシスト力の制御によって、さまざまな動作や姿勢での自然なアシストを可能とした。
主な特徴は次の通り。
1.手軽に使える乗用型
・機器につながった靴を履き、シートを持ち上げるだけで、アシストを開始できる。
・身体に機器を固定するベルト等がなくてもアシスト効果を得ることができる。
・脚の間に機器を配置する構造としたことで、幅を取らず、動きやすい。
2.体重を支持するアシスト手法
・モーターの力により、靴とシートとの間にあるフレームをひざのように曲げ・伸ばしすることで、シートを押し上げて体重の一部を支え、脚の筋肉と、関節(股関節、ひざ関節、足首関節)の負担を軽減する。
・シートとフレームが体と脚の動きに追従する独自の機構を開発。アシスト力が、人の脚の力と同様に身体の重心付近に向かい、歩行や階段昇降、中腰など様々な動作・姿勢でのアシストを可能とした。
3.自然なアシスト力制御
・靴に内蔵したセンサーなどの情報で2個のモーターを制御し、脚の動きに合わせてアシスト力の左右配分を変えることで、自然な歩行を実現する。
・ひざの屈伸にあわせてアシスト力を調整し、階段昇降や中腰などひざへの負担が大きな動作・姿勢での効果を高めた。
重量は前述したとおり6.5キロと、サポート系機器としては軽い部類に属し、電源には(携帯電話でもよく使われている)リチウムイオン電池を利用。1回の充電で約2時間の稼動が可能。利用者によってサイズを調整するが、特定サイズに対してはプラスマイナス5センチの範囲で利用が可能(つまり大柄の人向けの「歩行アシスト」は小柄な人には使えないということ)。
動画を見てもらえばお分かりの通り、「歩行アシスト」を装着したからといって使用者の行動が極端に制限されることはなく、ごく普通に歩いたりしゃがんだりすることができる。杖を使って歩くと、その杖に重量の一部を負担させることができ、歩行が楽になるが、そのようなサポートを「歩行アシスト」によって、「使っていることを気にせずに」利用できるようなものと考えれば良い。また、装着がきわめて簡単なのもポイントで、自力で歩けるような人ならば「自分自身で」装脱着もできなくはない。
ホンダはASIMOなどのロボットの歩行研究から得られた成果を元にこの「歩行アシスト」を開発。今後は工場など実際の使用環境での有効性を検証していく予定だという。
工場内での実証実験の様子
医療や介護分野での
活躍が期待できる
動画や写真にあるようにホンダ側では、どちらかといえば中腰で過ごす時間が長い流れ作業での利用状況を想定しているようだ。しかしその一方で、例えば足腰が弱ってきたシニア層や、病気や怪我でリハビリ中の人に使うという方法も十分以上に考えられる。シンプルなだけに、応用範囲も多彩な方面へと考えられよう。
ASIMOなどの技術開発用・披露用ロボットについては一部で「予算や工力の無駄」と揶揄する向きもある。しかし中長期的な視点で見れば、今回の「歩行アシスト」のように短期の蓄積では決して成しえない、素晴らしい成果を生み出す「金鉱山」となりうる。それだけに、ある大手電機メーカーが「金食い虫だから」という理由だけでロボット開発ラインを打ち切ったのは、きわめて残念でならない。
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