「正社員として採用されないから……」派遣社員が派遣社員である理由

2008年11月08日 12:00

派遣社員イメージ厚生労働省は11月7日、働き方の多様化に伴う現状を把握するために行った調査の結果「平成19年就業形態の多様化に関する総合実態調査結果の概況」を発表した。それによると、非正社員の中でもパートタイム労働者は「時間やお金の都合でパートが適切だから」と積極的事由でパートタイムを選んでいるのに対し、派遣社員(派遣労働者)は「正社員として働ける会社が無かったから」という消極的理由・消去法による選択肢として派遣社員の立場を選んでいる人がもっとも多いことが明らかになった。一方で類似条件を持つ契約社員と比較すると、技術・技能においてアピールするものが無いという違いもあり、本人の問題に帰する部分も見受けられる(【発表ページ】)。

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今調査は事業所へは2007年10月1日における状況について10月1日から31日まで、個人へは10月1日の状況について10月1日から11月20日までの間に行われたもので、有効回答数は事業所が1万0791件、個人が2万8783件。調査方法は事業所が調査票の郵送・調査員による回収、個人は事業所に調査票を配布し個人が郵送。なお「労働者」には正社員以外に派遣労働者、出向社員を含み、「契約社員」「嘱託社員」「出向社員」「派遣労働者」「臨時的雇用者」「パートタイム労働者」「その他」を合わせて「正社員以外の労働者」とする。

2007年時点において事業所に勤める労働者のうち、非正社員は37.8%を占めるという調査結果が別項目で出ている。そのうち代表的な就業形態「契約社員」「派遣労働者」「パートタイム労働者」に対し、なぜそれを選んだのか尋ねたところ、それぞれの就業形態毎に異なる結果が出た。

主な就業形態の現在の就業形態を選んだ理由(上位8つまで)(労働者割合、複数回答3つまで)
主な就業形態の現在の就業形態を選んだ理由(上位8つまで)(労働者割合、複数回答3つまで)

パートタイム労働者は「時間」「お金」など自分自身の事情を考慮した上で積極的な理由でその就業形態についていることが分かる。特にフレキシブルに時間を使えることに大きなメリットを感じているようだ。

・パートタイム
「お金と時間」(積極的要求)
・契約社員
「正社員になれない」(消極的要求)
「スキルを活かしたい」(積極的欲求)
・派遣労働者
「正社員になれない」(消極的要求)

「積極的欲求」が無いのが
派遣労働者の特徴

一方派遣労働者は時間やお金よりむしろ、「正社員として働きたいのだが働ける会社が無く、仕方なく派遣労働者として働いている」という自身の消極的選択肢の結果そのポジションにいるという回答がもっとも多くなっている。自分の立ち位置に積極的か消極的か、それがパートタイム労働者と派遣労働者との大きな違いといえる。

「正社員として働ける会社がない」という選択肢は、契約社員も多くの回答を寄せている。しかし契約社員は同様に「専門的な資格・技能を活かせる」という項目でも多くの賛意を示している(むろしこちらの方が多い)。契約社員の立場の人は、正社員でありたいという思いと共に、自分が持つ能力や資格をフルに活かしたい、そのためには契約社員の方がよいという積極的判断をしていることになる。

もちろんそれぞれの項目でもっとも多い賛意を得られた選択肢以外でも多くの人が回答をしており、すべての人がみな同じ意識を持っているわけではない。しかし傾向として「パートタイム労働者はお金と時間の事情から積極的に」「契約社員は正社員になれないから消極的にだが、同時に自分のスキルを活かしたいので積極的に」「派遣労働者は正社員になれないので(そして場合によっては能力不足もあり)消極的に」今の立場で働いていると見てもよいだろう。


世間では派遣社員に対し、仕事に対する責任感などの問題点も指摘されている。今回のデータを見る限り、その問題点は「自分が手がけている仕事に対して積極的になれるだけの理由が存在しないから」と考えることもできよう。

握手イメージ「正社員になれない」という点においては、事業所側でも派遣社員を利用する理由について「正社員を確保できないため」という理由が上位についている(【非正社員の活用理由は「コスト削減」がトップ・労働力調整や人材確保の面も】)。諸条件の希望や調整もあるだろうが、このミスマッチを乗り越えることができれば、双方の「積極的理由」を満たすことが可能になるかもしない。

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