サブプライムからCDS、そしてクレジット「カード」クランチへ
2008年11月19日 08:00
【ロイター通信】が伝えるところによると、アメリカのクレジットカードの発行会社は昨今の不景気の中で、顧客の「債務不履行」の割合が急増しているとして、口座解約・利用限度額の引き下げ・カード金利の引き上げなどを実施してきたこと、しかしそれ以上に不履行の割合が増加しており、各カード会社の経営を圧迫する可能性があることや、金融危機に拍車をかける事態におちいるのではないかと問題視されている。
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元記事によれば元ゴールドマン・サックス会長のジョン・ホワイトヘッド氏は「住宅ローンの状況と非常に似ている」とコメントし、アメリカン・エキスプレスなどメジャーどころのカード発行会社にとって、由々しき事態が進展していることへの懸念を発している。もちろん「貸し倒れ」による損失を最小限にとどめるため、各企業も対応策を打ち出している。
・与信基準の強化(貸し出しを「返せそうな人」にしかしない)
……銀行の60%が7月以降カードの発行基準を厳密に。
・クレジットカードを勧誘するダイレクトメールの発行部数の減少
……発行対象を絞り込む。「誰でもカード作りましょう」体制からの脱却。
・一部のカード保有者への金利引き上げ(平均3%ポイント)
……貸し倒れの際のダメージ最小化。
・人員削減などコストカット
・銀行持ち株会社への移行
……アメリカン・エキスプレスの例。政府からの資金援助を得やすくなる。
さらに年間で最大の消費期間となる今年のクリスマス期は、景気そのものの悪化を受けて、例年に比べて酷い結果に終わるだろうことが今から予想されている。元記事によれば前年比2ケタ台の落ち込みも十分ありうるとのこと。さらには「年末年始は派手に」とばかりにクレジットカードを使って乗り切り、年明け以降にカードの支払いが出来ずに債務不履行に陥る(チャージオフ)人が増加、来年にはその率は10%にも達するだろうとの予測が語られている。すでにJPモルガンでは3.6%から5.0%、バンク・オブ・アメリカでは4.67%から6.4%の上昇が見られるという。
●サブプライムローンからCDS、そしてクレジットカードクランチへ
クレジットカードの利用状況の変化はすでに【富裕層にも及ぶ不景気の波・アメックスの四半期決算から見え隠れする、アメリカ経済の現状】や【「カード利用率2ケタ台減少」「プライベートブランドの売上2倍」ウォルマートに見るアメリカの消費性向の変化】でもお伝えした通りだが、今件もあわせて二言でまとめると「クレジットカードを使ってローンで消費をする人たちの間の焦げ付き率が増加している」「富裕層の間でもカードの焦げ付きが増加しており、クレジットカード会社は貸し倒れの負担増加に頭を痛めている」ということになる。
↓
カードの貸し倒れ増加
↓
カード会社の防衛策
1.金利引き上げ
2.与信基準強化
↓
既存カード利用者の
負担増≒さらなる貸し倒れ
なぜ貸し倒れが増えるかといえば、理由はきわめて簡単で「不景気でふところ具合が怪しくなったから」。カードの返済はいわば長期的な借金返済。将来の収入を前借りするようなもの。ところがリストラにあったり給与を引き下げたりすると、支払い負担が重たくなり、お手上げの人が増えてくる。
貸し倒れが増えればカード会社側もリスクを減らすため、「金利の引き上げ」「査定強化」を図る。前者はますます既存のカード利用者の負担を増やして「貸し倒れ」のリスクを引き上げ、後者はカード支払いを前提としていた商品(例えば自動車)の売れ行きを減少させる。いわゆる「マイナススパイラル」におちいっているというわけだ。
サブプライムローンに始まった「金融危機(クレジットクランチ)」はCDSやCDOなどの金融派生商品の仕組みの崩落という面に飛び火し、さらに今「クレジットカード」に炎上しようとしている。いわば「クレジットカードクランチ」が起きつつある。
元記事でも指摘されているように「年末くらいは派手に過ごしたい」とばかりにクレジットカードを使って買い物をし、年明け以降にやっぱり支払いが出来ずに債務不履行状態となるパターンが急増する可能性は十分にある。住宅ローンと共にアメリカの消費行動を支えてきたクレジットカードの強固な基盤が揺らいだ時、アメリカ人の消費性向、さらにはアメリカの経済そのものにどのような事態が起きるのか、非常に気になるところではある。
(最終更新:2013/08/02)
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