食料自給率「低い」8割・「高めるべきだ」9割に
2008年11月20日 08:00
内閣府は11月17日、食料・農業・農村の役割に関する世論調査の報告書を公開した。それによると日本国内の食料自給率に対して9割以上の人が「今後高めていくべきだ」と考えていることが明らかになった。現在の食料自給率が低いと考えている人も前回調査と比べて大幅に増加しており、昨今の資源高や「食の安全問題」をきっかけに、消費者の間で自給率に対する再認識が行われているようだ(【発表リリース】)。
スポンサードリンク
今調査は食料輸入に対する意識などを確認するために行われたもので、20歳以上の男女を対象に個別面接聴取方式によって2008年9月11日から28日に行われた。有効回答数は3144人、男女比は1455対1689。年齢階層比では男女共に50代がもっとも多く、ついで60代、70歳以上となっている。
食料自給率については現在カロリーベースで45%に引き上げることが目標値と定められ、さまざまな運動が進められている(【食料自給率1ポイント増加の40%にまで回復。されど理由は……】、【7年間で39%から45%へ・食料自給率向上計画】)。また、民間の調査でも「自給率は上げていくべき」という回答が多数を占めている(【自給率「上げていくべき」増加中 現在9割 認知も高まる】)。
今回の調査では食糧輸入や自給率に関するさまざまな設問とその回答が掲載されているが、食料自給率について見てみると、まず「現在の食料自給率に関する意識」が目に留まる。こちらは「低い」「どちらかというと低い」を合わせた「低い」の認識が79.1%と8割を占めている。注目すべきは以前の調査結果との比較で、年を経るごとに「自給率が低い」と考えている割合が増加していることが分かる。この間、実際の自給率が劇的に変化したわけではないのに、である。
現在の食料自給率は高いか低いか
現時点の認識においては男女別・年齢階層別でさほど大きな変化はない。
現在の食料自給率は高いか低いか(男女・年齢階層別)
男女別ではやや男性の方が、年齢階層別では中堅から定年退職世代あたりまでが、やや危機意識が強いように見える。しかし大まかに見れば「約8割は低いと考えている」という認識で間違いない。
それでは8割が「低い」という認識の食料自給率について、今後どうすべきと考えられているのか。実に9割以上の人が「高めるべき」と回答している。
今後食料自給率をどうすべきか
こちらも「現在の食料自給率への認識」同様、女性よりも男性、中堅から定年退職世代あたりまでが、特に防衛意識(自給率を高めるべきだ)と答えている。戦後の食糧不足経験世代を逆算すると、むしろ60代から70歳以降の値が高くなりそうな気がするのだが、事情は色々と複雑そうだ。
昨今の商品市場の高騰(現在はやや落ち着きを取り戻しているが……)によって経済が容易に混乱におちいったことや、昨今の「チャイナフリー」問題や「農薬入り冷凍ぎょうざ」に代表されるような「食の安全」問題をきっかけに、食料の自給に関する関心は高まりつつある。
一部には「カロリーベースの自給率計算などナンセンス。日本の事情を考えれば、生産性の低い農作物を自国で作るのは効率が悪すぎる」という意見もある。しかし昨今の事情を見ればお分かりのように、単に効率云々だけでは解決できない問題が多々あることが認識されつつある。「効率」は各種機能が完全に作用した場合に検討されるべき課題であり、食料の需給については機能不全におちいることが(何しろおてんとさまが相手なのだ。昨今の場合には商品先物の市場操作など「人間の飽くなき欲望」という要素も加わっている)多々あることを想定しなければならないからだ。
今調査では「それでは食料自給率を高めるために何をすべきか」などについても設問が設けられ、回答が得られている。それについては機会があればまたあらためて見てみたいところだ。
(最終更新:2013/08/01)
スポンサードリンク
ツイート