3割の企業が「年末には資金繰り悪化」
2008年11月10日 06:30
帝国データバンクは11月6日、資金繰りに関する企業の調査結果を発表した。それによると支払額が多くなる年末に向けて、資金繰りが厳しくなると答えた企業は1万0954社中3367社にのぼり、全体の30.7%を占めていることが明らかになった。また、悪化時期は今年の夏以降と答える企業が多く、その原因などとあわせると夏、とりわけ「リーマン・ブラザーズショック」の9月以降に景気が急速に落ち込んでいる様子がうかがえる(【発表ページ】)。
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今調査は2008年10月22日から31日にかけて行われたもので、有効回答企業数は1万0954社。現時点においては資金繰りが厳しいと答えた企業は26.3%、厳しくなっていないが59.4%という回答が出ている。
「資金繰りが厳しくなった」と回答した企業に対し、いつごろから悪化したのかと尋ねたところ、その多くが8月以降と答え、8月と9月の2か月だけで3割近くを占めていた。
資金繰りの悪化時期
中でも9月は「リーマン・ブラザーズの破たん以降、急に金融機関が融資に対し、非常に消極的になった」という具体的な意見もあり、証券銀行のリーマン・ブラザーズの破たんが(金融信用収縮、金融機関の防衛反応と巡り)資金繰りのさらなる悪化のきっかけとなった可能性が、十分に考えられる。
2008年末の資金繰り見込みについては、「厳しい」と回答した企業が30.7%に達している。
2008年末の資金繰り見込み
「多少緩和される」が4.7%、「現在も年末も大丈夫」が38.0%など幾分救われる面もあるが、「年末厳しい」の回答企業は中小企業では全中小企業のうち33.2%・大企業では全大企業の21.6%に達しており、中小企業の方が約11.6ポイントほど高い値を示している。年末にかけて特に中小企業で資金繰りの悪化が懸念されよう。
資金繰りの悪化原因であるが、現在厳しい企業では「売上低迷」「仕入れコスト増大」「貸し渋り」がトップ3、今は厳しく無いが年末に厳しくなる企業では「売上低迷」「仕入れコスト増大」、そして「売り掛け金回収難」「取引先の倒産」など、取引先の問題が自社にも及ぶ「連鎖型の苦境」が上位についている。
資金繰り悪化要因(複数、3つまで)
売上低迷やコスト増が
資金繰り悪化の主要因に
なりつつある
特に企業においては収益をあげるために必要不可欠な「売上」「生産コスト」の2点において、それぞれ「売上が低迷する」「仕入れコストが増大する」というマイナスの要素が指摘されている。モノを作るコストがかさめば(販売単価が変わらなければ)利益は減るし、売上そのものが減れば当然在庫は増え、利益も減少する。金融機関の貸し渋り・貸しはがしが社会問題化しているが、現時点ではすでにそれ以上に、資源高と景気そのものの低迷が、企業に大きな影響を与えていることが分かる(もちろんそれだからこそ、金融機関の貸し渋り・貸しはがしが致命傷になりかねないのだが……)。
仮に【株価下落で頭を抱えていた銀行が何とかなるかも!? 金融庁、自己資本比率規制の特例措置案発表】などの施策で金融機関の貸し渋り・貸しはがし状態が改善のきざしを見せても、景気そのものが安定・回復しない限り、企業の資金繰りが良くなるのかどうか、疑わしいところがある。幸いにも資源高の要素については世界的な不景気に伴う需要縮小や投機マネーの事情から収まる傾向にあるが、売上低迷については景気が回復しないと解決できないだろう。
今後も引き続き、とりあえず直近においては色々な意味でピークに達しうる年末に向けて、今まで以上に状況を注視していく必要があるものと思われる。
(最終更新:2013/08/02)
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