「カード利用率2ケタ台減少」「プライベートブランドの売上2倍」ウォルマートに見るアメリカの消費性向の変化

2008年11月04日 06:30

ウォルマートイメージ先に【「エビアンを止めて水道水に」「本は買わずに図書館で」~米消費者に浸透する「トレードダウン」や「節約心」】【「借金してでも浪費」から「生活防衛」へ~リセッション入りするアメリカで変わる消費者行動】などで、景気後退に伴いアメリカの消費者の消費行動が大きく変化している様子をお伝えした。アメリカを本拠地とする小売最大手のウォルマートのアメリカ部門のCEO、Eduardo Castro-Wright氏が語ったところによると、ウォルマートでも自社店舗における商品の販売性向に変化のきざしが見えているという。具体的には利用客において、クレジットカードは極力使わず、手持ちの現金を使い切るような傾向が見られるというものだ(【USA TODAY】)。

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具体的な事例として挙げられたのは、赤ん坊用の粉ミルクの買われ方。給料が出て間もない、まだサイフの中身に比較的余裕がある月頭にまとめ買いをする傾向が見られるという。かつてはこんなことは無かったとのこと。

クレジットカードイメージまたクレジットカードの利用額も、2008年の第2四半期(4月~6月)においては、前年同期比比で2ケタ台の落ち込みを見せた。2007年の第1四半期(1月~3月)では前年同月比で2ケタ台の成長を果たしたが、それと正反対の結果が出ていることになる。カード利用者が激減し、現金による買い物客が増えた理由について、ウォルマートで3年重役を務めてきたCastro-Wright氏は、「お客様のクレジット与信が激減したから、あるいは使い果たしてしまったからだと思われる(Credit has been declining dramatically/They have maxed out on their credit limits)」とコメントしている。いわく「この与信減少によって、お客様は自分が苦労して稼いだお金の使い道について、一生懸命考えなければならなくなるだろう」「お客の中には、本当に厳しい時代を迎えたことを実感しているだろう」とのこと。

アメリカだけでも4000店舗を数えるウォルマート。アメリカでは9割の世帯が1年間に少なくとも一度はウォルマートを使用するというデータも出ているほどメジャーな店であるだけに、このような消費者の消費性向の変化は非常に大きな影響を与えている。

ウォルマートの内部調査にも、その「変化」は色々な面で映し出されている。

・家計の安全(personal financial security)を最大の悩み事に挙げている消費者は80%に達している。1年前は「ガソリン価格の高値」が最大の悩み事で、家計の安全は65%だった。曰く「家族に満足な食事を提供できるほどのお金が用意できるのだろうか」。
・生活必需品の売上が伸びている。PB(プライベートブランド)商品にいたっては2倍増。ただしウォルマート側では販売商品の取り扱い割合を変更する予定はない。
・自動車での来店者が減った。また、失業者と思われる人たちが、得た少額の稼ぎを手に数点の商品をひんぱんに買いに来ることが多くなった(まとまった金額がなかなか手に入らないため、少しでもお金が手に入った時点で優先順位の高いものから買いにくるということ)。
・4か月前と比べ、月頭と月中における売上が2.5%増加した。これはこの時期に給与支払いが多いことを起因とするもの(≒手元に残しておける現金が少ない)。


ウォルマート側ではこのような状況に対応するため、設備投資を抑え、新店舗の展開を止める政策を決めているとのこと。一方で(他の企業は削減するかもしれないが)慈善活動への経費を削減することはない、と言及している。


ウォルマートイメージ「「借金してでも浪費」から「生活防衛」へ~リセッション入りするアメリカで変わる消費者行動」で触れたように、実質的にリセッション入りしているアメリカにおいても、業務成績を維持する、あるいは伸ばす企業は少なからず存在する。恐らくウォルマートもその一つになるのだろう。しかし少なくともその内情は、好景気の時とは大きく様変わりするに違いない。

特にカード利用・カード払いをライフスタイルに組み込んでいたアメリカの消費者にとって、それが事実上使えないような人たちが多数を占める事態になった時、消費性向にどのような変化が生じるのか。注意深く見守る必要があるだろう。

(最終更新:2013/08/02)

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