25歳未満の非正規雇用率は72%に急増中、ただし……

2008年11月22日 12:00

時節イメージ内閣府は11月21日、2008年度版「青少年白書(平成20年版)」を発表した。それによると雇用者全体に占める非正規雇用者の割合は年々増加する傾向にあり、特に15~19歳は72%・20~24歳は43%と高い割合を占めている。ただしこの「雇用者」には「パートやアルバイト」も含まれていること、そして同年代における高等教育(大学や短大、専修大学)への就学率も同様に増加していることを考えると、「学生のアルバイトの割合が増加した」と考えてよい結果といえる(【発表リリースページ】)。

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「青少年白書」は青少年の現状と青少年に関する施策を広く国民に紹介し、その理解を得るため昭和31年(1956年)から、関係省庁などのの協力の下に内閣府が編集・発行しているもの。つまり各種データは既存の公的機関の調査資料が元になっている。また、今回発表されたデータを元に12月上旬をめどに、書店などで紙媒体版が入手できる予定。

今調査資料によれば、データが開示されている1982年以降年を経るごとに「全雇用者にしめる、正規職員・従業員『以外』の雇用者(いわゆる「非正規雇用者」)比率」は増加の一途をたどり、1997年以降は急増しているグラフが描かれているのが分かる。

正規の職員・従業員を除いた雇用者の比率の推移
正規の職員・従業員を除いた雇用者の比率の推移

とりわけ24歳以下の若年層においてその上昇率は著しく、直近データの2007年においては15~19歳は72%、20~24歳では43%の人が「非正規雇用者」であることが分かる。

単純に「若年層が正社員になれない」わけではない理由

このグラフとデータだけを見ると「若年層は正規社員への道すら閉ざされている、非正規雇用で穴埋めされる対象になっている」という結論に達してしまう。しかしそれは早計といわざるをえない(白書ではデータの提示だけで解説は行われていないのも一因だが)。

ここで提示されているのは「雇用者全体に占める、非正規雇用者の割合」。それでは「雇用者」の定義とは、と元資料上に提示されているおおもとのデータである【就業構造基本調査】をたどると、次のように説明されている。

・雇用者・・・・・・・・・会社員、団体職員、公務員、個人商店の従業員など、会社、団体、個人、官公庁、個人商店などに雇われている者。
・「雇用者」の雇用形態による分類(役員以外)……「正規の職員・従業員」「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」


つまり、上記グラフ上に反映される「非正規雇用者」には「契約社員」「派遣社員」以外に「パート」や「アルバイト」も含まれることになる。

そしてさらに、文部科学省が発表している学校基本調査速報の【最新版データ】によれば、1990年前半をピークに数そのものは減っているものの、高等教育機関(大学、短大、専修学校など高校より先の学業機関)に通う人の割合は増加の一途にあり、2008年では76.8%に達しているのが分かる。今回の調査結果の直近データである2007年においても、その割合はさして変わらない。

ほぼ同一の調査期間に区切って抽出した、高等教育機関への就学率など(文部科学省・学校基本調査速報から)
ほぼ同一の調査期間に区切って抽出した、高等教育機関への就学率など(文部科学省・学校基本調査速報から)

つまり、

・若年層では「雇用者全体に占める非正規雇用者の割合が急カーブで増加している」
・しかし同様に同じ年齢層で「高等教育機関」への就学率も増加している。
・「非正規雇用者」に該当する者の多くは「大学などでアルバイト・パートとして働いている人」がカウントされている可能性が高い。高等教育機関の就学率増加により、その分非正規雇用者の割合も増加しているという考え方。
・ただし伸び率で見ると「非正規雇用者の増加率>高等教育機関への就学率」であることから、高等教育機関に就学しなかった(=中学校・高校が最終学歴)の正社員としての雇用状態は一般的に厳しくなっているものと推定される。


などが確認・推測できる。

「高等教育機関への就学率が76.8%マイナス数%」「非正規雇用率が15~19歳で72%、20~24歳で43%」ということから、単純計算で仮に「高等教育機関に就学した人が全部アルバイト・パートなどによる非正規雇用としてカウント」「中卒・高卒の人が正社員としてカウント」されれば、大体つじつまがあう計算になる。実際には高等教育機関に就学した人すべてが「雇用者」としてカウントされる(アルバイトなどをする)わけではないし、中卒・高卒の全員が就職できるわけではない(ただし高卒の人に限れば就職率は直近データで94.7%と高めである(【文部科学省・平成20年新規高等学校卒業者の就職内定状況】)。あるいは、「高校卒業後、大学にはいかず、就職活動に失敗、または意図的にフリーター・派遣生活を続けている層」が増加している、と考えるべきかもしれない。

ともあれ、最初のグラフから単純に「若年層に対する正規雇用分の労働力が、非正規雇用で充当されてしまっている」と考えるのは早計と考えるべきだろう。むしろ25歳以上、つまり高等教育機関卒業後における年齢層でも非正規雇用分が増加していることに、注意と関心を寄せるべきである(これが現在の派遣社員問題につながるわけだが……)。

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