少年・男性向けコミック誌の部数の変化をグラフ化してみる(2008年7月~9月データ)

2008年11月29日 12:00

少年・男性向けコミック誌イメージ【社団法人日本雑誌協会】は11月28日、2008年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、正確さという点では各紙が発表している「公称」部数よりはるかに高い。今回は、読者層を考慮してもっとも興味がそそられるであろう「少年・男性向けコミック誌」のデータをグラフ化し、前回からの推移を眺めてみることにする。

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具体的なデータは、【直近が2008年7月~9月のもの】。先に記事にしたのは直近データが4月から6月のものだったので、それから3か月が経過したことになる。いずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたもので、雑誌社側の公証部数ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情があり、そのまま比較すると問題が生じる雑誌もあるが、その場合は個別で説明していくことにする。ともあれどこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところだ。

まずは少年向けコミック誌。週刊少年ジャンプがトップにあることに違いは無いが……。

2008年4~6月期と最新データ(7~9月期)による少年向けコミック誌の印刷実績。
2007年度と最新データによる少年向けコミック誌の印刷実績。

「ジャンプ」は直近データで279.1万部。販売実数はこれよりも少なくなるので、250万部前後だろうか。一方、どの雑誌も大きな変化は見られないことも分かる。3か月程度の時間経過で販売数が大きく変わるような事態は滅多に起きないからだ。つまりは雑誌における勢力範囲に変化はないということになる。

続いて男性向けコミック誌。こちらも世間一般のイメージ通りの印刷部数展開。

2008年4~6月期と最新データ(7~9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績
2008年4~6月期と最新データ(7~9月期)による男性向けコミック誌の印刷実績

前期と比べ比較的若年層向けの「ヤングマガジン」「週刊ヤングジャンプ」の順位が入れ替わっているのが目立つが、それ以外はほとんど大勢に変化はない。中堅層向けの漫画誌「ビックコミック」シリーズが意外に健闘している図式もこれまで通り。

さて、一応2期間の印刷部数を棒グラフ化したわけだが、続いてこのデータを元に各誌の販売数変移を計算し、こちらもグラフ化してみることにする。短期間の変移ではむしろこちらのデータの方が重要だろう。

要は約3か月間にどれだけ印刷部数(≒販売部数)の変化があったかという割合を示すものだが……。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
細かい変化は
・季節特性
・提出データの特性
による誤差の可能性

ここで「季節特性」を考える必要がある。直近の「7~9月期」は夏休み・盆休みが期間に入るため、「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数が減る(=販売数が減る)」ことを念頭においておく必要がある。お盆休みでがらがらの通勤電車の中で、数少ない出勤途中のサラリーマンが雑誌を購入して読むとしても、通常の平日のそれと比べたらさばける数はかなり少なくなることは、想像するに難くない。一方で学校が休みになり子どもたちが自宅にいる時間が長くなるため、子ども向けの雑誌は(種類によっては)印刷数が増える可能性もある。

また「季節変動」とは別に計測上の変動として、提出データが前回は概算値(下三桁切り捨て・四捨五入など)だったのに対し、今回はある程度細かい数字(下一桁まで具体値)の雑誌も見受けられる。この場合、現実的にはほぼ同じ値だったとしても、計算上は印刷部数の変化が生じてしまう。

これらの可能性を考慮すると、上下3%の変移は「誤差」として考えても差し支えないものと思われる。

よって今回のデータで気になるのは、プラスはぎりぎり「コロコロコミックス」、マイナスは「週刊少年サンデー」「少年サンデー超(スーパー)」「少年エース」の3誌ということになる。このうち「週刊少年サンデー」「少年サンデー超(スーパー)」2誌は前回のデータでも大きなマイナス値を示しており、「急速に印刷数を落としている」可能性を示唆していることになる。

続いて男性向けコミック。

雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)
雑誌印刷実績変化率(少年向けコミック誌)

前回データと比べれば変移は少ないこと、直上で説明したように「プラスマイナス3%くらいは誤差の範囲」であることを考慮すると、プラスでは「ヤングアニマル嵐」「ビックコミックスピリッツ」が、マイナスでは「ビックコミックスペリオール」「コミックバンチ」「月刊コミック特盛」が目立つ。

「ヤングアニマル」シリーズが堅調なのは以前の記事でも触れたが、今回のデータでは「ビックコミックスピリッツ」の健闘振りが目立つ。これは同じ小学館の週刊ヤングサンデーの休刊に伴い、同誌から約半数の連載漫画が移籍した効果が現れ始めたものと思われる。他方、「月刊コミック特盛」は今回も下げ幅が特盛状態。減少単位が大きいのが原因だが、先行きが不安でならない。


今回参照したデータにおいては、前回の記事と比べると計測間隔期間が短く、さらに雑誌の販売性向にかなりの違いが生じる「夏休み・盆休み」が間にはさったため、大きな変異はあまり見受けられなかった。それでもなお、いくつかの雑誌においては状況の少なからぬ変化が起きていることがうかがえる。

今件データについては前回同様に他の種目別についてもいくつかあらためて解説することにするが、恐らくは大きな変化はないだろう。……というより3か月で売上が急変するような事態が起きたら、それはそれで一大事。むしろ次の最新データ公開(同じペースだと3か月後)とあわせ、一定期間単位の変移を見た方が有益かもしれない。

今回の差異でマイナスを示していただけなら「季節特性」「計算上の問題」で片付けられる。しかし次回のデータでも同様の結果を示したら、「季節特性」などでは説明がつかなくなるからだ。出版社側は返本率が高ければ折を見て印刷部数を調整するから(返本率の高い雑誌の印刷数をそのままにしていては、損失が増えるばかり)、印刷数はほぼそのまま雑誌の販売部数と考えてよい。印刷部数が動いていれば、販売数も同様に動いていることに他ならない。

今回特にキツい下げ幅を見せた「少年サンデー」シリーズや「月刊コミック特盛」(「少年エース」は何か特異なこと、例えば人気連載の終了やピークを過ぎた事件でもあったのだろうか?)の動向には気をつけたいところだ。


■関連記事:
【少年・男性向けコミック誌部数の変化をグラフ化してみる】

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