2008年10月の市場展開を「ブラッディオクトーバー」と命名してみる
2008年11月03日 12:00
【日経平均株価の上昇率上位ランキングをグラフ化してみる(10月30日版)】や【今年倒産した上場企業をグラフ化してみる(10月31日版)】にもあるように、2008年10月の市場展開は呆れ返るほどの乱高下が繰り返され、多くの人が阿鼻叫喚し、また「退場」を余儀なくされた。ここではこのような値動きを示した10月の市場展開を、投資家らの血が多く流されたことから「ブラッディーオクトーバー(血みどろの10月)」と当方(不破)が勝手に命名し、いくつか記録を残しておくことにする。
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●日経平均株価の日足チャートでその「異常さ」を再確認する
10月の株価がいかに急なものかは日経平均株価の動向を見れば一目瞭然。
直近半年間の日経平均・日足チャート(背景が薄いのは10月部分)
チャートの読み方について説明しておくと、縦の1本1本(ローソク足)が一日の値動きを示す。長方形の上辺と下辺がその日の終値と初値のどちらかを示す。そしてそのローソク足が陽線(上の図なら赤色)なら「上辺が終値」「下辺が初値」、陰線(緑色)なら「上辺が初値」「下辺が終値」ということになる。
もし一日の市場展開中に終値や初値を超えて株価が上下に推移することがあれば、上辺と下辺で構成される長方形から線(ヒゲ、などと呼ばれる)がつけられることになる。詳しくは【検索をして色々と調べるとよいだろう】。
さて直近半年間のチャートを見ると、10月に入ってからローソク足が異様に長く伸びているのが分かる。9月までの長さと比べると、明らかに長すぎる。「ローソク足が長い」ということは、「初値と終値の差が大きい」ことを表すから、それだけ一日単位で大きく株価(この場合は日経平均株価)が動いたことになる。
「たまたまこの半年内で10月だけ、9月まではもみあいをしていたのでは?」と思う人もいるだろう。それでは1年単位で日足チャートを見てみることにする。
直近1年間の日経平均・日足チャート(背景が薄いのは10月部分)
直近1年間といえば今年1月・3月の暴落時期も含まれる。しかしそれらと比較してもローソク足は10月のそれの方が長いことがわかる。しかも10月中一度や二度どころではなく、それこそ毎日のように大きく値が動き、長いローソク足が形成されている。
●数十年単位で見ても「特異な事態」
先の6か月チャートを見れば、そしてその他の情報からもお分かりのように、10月は乱高下を繰り返しながら全体としては大いに株価を下げている。そして当然ながらその下げ幅も異常値を示している。それが分かるのが次のグラフ。
直近20年間の日経平均株価推移(月次チャート)(クリックして拡大表示)
ローソク足の長さ、つまり上下だけを見ると、同じような長さのものは数年に一度見受けることができる。直近では2000年4月(初値2万0327.79円、終値1万7973.70円)あたりが該当するだろう。さらにさかのぼれば、バブル崩壊後に相場が急落する過程でもっと長いローソク足を見つけることができる。
過去に何度かあった。
しかし今の株価水準は
過去の事例の数分の一。
低い株価で同じ下げ幅なら
影響は非常に大きくなる。
しかしそれらはいずれも、株価水準がそれなりにあったころの話。ITバブルがはじけ、日系平均株価が2002年あたりの「金融危機」で7000円台を付けたころ前後はその株価水準にマッチした上下幅を記録(=短いローソク足)している。ところが9月~10月、とりわけ10月は株価水準を無視した下げ幅(=長いローソク足)を見せている。つまり2008年10月は「株価水準が底辺に近い状況だったにもかかわらず、株価の上下幅が数倍だったころのと変わらないほどの下げ幅を記録」したという異常事態が起きたわけだ。
「大したことないネ」
体重50Kg→30Kg(-20Kg)
「(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル」
例えるなら、体重200キロの人が20キロ減量しても10%分にしかならず「大したダイエットではないね」といわれかねないが、同じ目方(20キロ)を体重50キロの人が落として30キロにまで減らしたら(40%の減量!!)大騒ぎとなりすぐに病院に担ぎこまれるだろう。それくらいの特異な状況だったわけだ。
●下落率上位の多さを再確認し、その理由を考える
この異常さは、現時点で日経平均株価の下落率・上昇率それぞれ十位のうち「下落率第二位・第四位・第五位・第六位」「上昇率第一位・第四位・第八位」までが2008年10月に集中していることからも容易に理解できるはず。
日経平均株価推移と、日経平均株価下落率上位10位・上昇率5位までまで(2008年は10月30日時点の株価)(クリックして拡大)(再録)
これだけの乱高下を繰り返しながら9月~10月において株価が急落した理由はいくつか考えられる。CDSやサブプライムローンなどの金融商品の連鎖的な破たん、それらの破たんがワールドワイドにドミノ倒し的に進展していること、為替の大規模な変動、幾つかの新興国におけるデフォルト騒ぎ、商品市場のひと相場の終えん、それらに端を発する(過度にふくらんだ)ファンドの解約要求に対してファンド側が損得抜きでの換金売りを行ったことなど、材料はフルハウスどころかロイヤルストレートフラッシュの役を作っても足りないほど。
直近半年の円ドル為替レートの推移(背景が薄いのは10月部分)
当方は為替は詳しくないので言及を避けるが、円ドル為替レートのチャートを見ても、やはり10月に通常ではありえないような大きな動きを見せているのが分かる(9月に兆しは見受けられたが)。日本は全般的に輸出産業の規模が大きいため、円高になると業績上不利となり、株価にマイナスの影響を受けやすい。全般的には円高にふれたのも、株価下落を後押しした一因といえる。
これだけの異常値が繰り返されたのだから、投資家らによる「ブラッディーオクトーバー(血みどろの10月)」が演出されても何らおかしくはない。投資は詰まるところ「自己責任」に尽きるのだが、それを差し引いてもこの展開は少々酷に過ぎた気がする。
この下落相場をチャンスと見なし、新規に証券口座を作って株式投資を始める人が多数現れているという報道を最近よく目にするようになった。確かにその判断は間違ってはいないのだろうが、10月と同じような乱高下が二度とおきないという保障も無い。「魑魅魍魎(ちみもうりょう)うごめくこの世界へようこそ」と祝いの言葉を述べると共に、くれぐれも用心すべし、と付け加えておくことにしよう。
11月の相場展開が「ヘリング・ノベンバー(無茶な&地獄の11月)」にならないとは誰も言い切れないのだから。
(最終更新:2013/08/02)
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