2008年10月の新設住宅戸数、前年同月比19.8%増

2008年11月29日 12:00

住宅イメージ国土交通省は11月28日、2008年10月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると10月の新設住宅着工戸数は前年の同月比で19.8%増の9万2123戸となり、4か月連続の増加を示したことが明らかになった。着工床面積も同じく4か月連続して増加しているが、持ち家の数字が減少しているのがやや気になるところ(【発表リリース、PDF】)。

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具体的な内訳は持家が4.3%の「減少」、貸家は35.4%、分譲住宅は28.9%の「増加」。「持家」では民間資金・公的資金双方の値が減少したため、全体として「持家」分野でも減少したというコメントが寄せられている。「分譲住宅」でも一戸建住宅が減少するなど、個別世帯向け住宅のニーズが減っている雰囲気が見られる。地域別ではすべての地域でプラスの値が出ているが、先月ほどの勢いはさほど見られない。

改正建築基準法の施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が2007年夏以降の住宅市場における混乱と、新設住宅戸数の減少をもたらした(俗にいう「官製不況」)。そして昨今では資源高・賃金上昇、金融機関の貸し渋り・貸しはがし傾向の強化などの要因が強まると共に、不景気に伴う主な購買層の消費者の消費性向の低下が住宅需要を押し下げ、業界全体に大きなプレッシャーを与えている。その上、同業他社の破綻も相次ぎ、各不動産業者にとって(心理的、イメージ的に)少なからぬマイナス影響を与えている。上場企業でも建設・不動産セクターの破たんが次々に伝えられ、尋常ならざる状況であることをうかがわせる。

ただし今年の10月に前年同月比で比較される昨年10月は、昨年7月・8月同様に改正建築基準法の施行からまだ日が浅く、大幅に数字が下振れしていることもあり、その反動から「前年同月比」の値が大きく上に振れたように見えたものと推測される。「前年同月比」がプラスだからといっても、油断は出来ない。

新設住宅戸数の変遷
新設住宅戸数の変遷(2008年10月分まで)

昨年8月~10月の大低迷から上昇傾向を継続していていた前年同月比割合だが、今年に入ってから一進一退の攻防……というより、前年同月比マイナス5%あたりを天井とし、上げては弾かれて下げ、また上げては下げを繰り返す状況が6月くらいまでは続いていた。今回発表分の2008年10月分は、この数か月の発表分同様に改正建築基準法の施行により大きく不動産・建設業が下向きを見せた2007年夏期以降の数字と比較したものであり、あくまでも「比較論」としてのプラスの感が強い。

「新築住宅戸数」は新築された住宅戸数で、実際に消費者に売れた数ではない。需給の関係が(供給数は増えるばかりで需要側は縮小の一途をたどっている)大きく供給過多に傾き、新築数そのものを抑える傾向が不動産業者に見受けられること、その不動産業者も在庫処分が出来ずに破たんし、大安売りの物件が言葉通り「軒を連ねている」ところが相次いでいる現状を見るに、油断は決して甘いものではない。

さらに昨年同月比で大きくプラスを見せているが、今月においてもその数は10万には達していない。改正建築基準法とは無縁だった2年前は毎月10万件台の数字を見せていることを考えると、まだまだ全回復とは程遠い状態であることが分かる。

着工床面積概要(前年同月比16.7%増)も戸数同様に増加しており、全体では4か月連続の増加を見せた。「宿泊業、飲食サービスの-6.3%」と、減少している用途が存在しているのは気になるところ。

耐震強度偽装問題を教訓にした
「改正建築基準法」の施行

・行政の不手際などで
新築戸数などが激減
・昨年夏で底打ちに見える。
・3月再び下落・失速感。

最悪期の「去年」比で幾分堅調に
……見えるが最終消費者へのリーチを
考えると楽観視はできない。
一昨年との比も弱い。

国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【「最近の建築確認件数等の状況について」発表リリース】)。これによると今回発表された10月分データでは4.2%マイナスとなり、9月分データの18.3%プラスからは転じてマイナスを見せている。来月分の住宅着工は今月以上に不安定な数字展開が想定される。「4号建築物」と呼ばれる木造2階建てなどの小規模建築物、つまり個人向け住宅の確認件数が減少しており、10月の新設住宅戸数データ同様、「一般世帯向け新規住宅のニーズ」が減っていることが見て取れる。

今回の10月分データは、ここ数か月来同様に、直近の「どん底期」と比べれば現状がずいぶん改善されていることを見せるものといえる。だがその勢いも失速の可能性が出てきた。さらに繰り返しになるが、これらはあくまでも「建築する住宅戸数」関連の数字に過ぎない。実際に各不動産企業はこれらの物件を完成させて買主に受領させ、代金を受け取らねばビジネスになりえない。

昨今の住宅の供給過多状態を見るに、新築住宅戸数が堅調に推移しても、それらが「売れない」限りは、現場の不動産会社の不景気感は継続する。9月以降関連上場企業の倒産件数は急増しており、かの企業たちが流すリリースの文面の端々からは、「サブプライムローン」「不況」の言葉と並び、金融機関によるし烈なまでの「貸しはがし」「貸し渋り」という言葉が相次ぎ、厳しい状況が見て取れる。また「採算分岐点ぎりぎりでもとにかく在庫を減らそう」とばかり、手持ち不動産を売りこむ攻勢をどこの業者も行っているようで、ポストを埋め尽くさんばかりの住宅販売チラシが確認できる状況にある。週刊誌でも最近ではあちこちでごく普通に見受けられる1000万円単位の値引きを、さも「他では教えない飛び切りのテクニック」と称してアピールする始末。

需要側の財布のひもがゆるくなり、需給・価格共にバランスがとれたと確認されるまでは、各部門とも慎重な対応が求められよう。現状では先はまだ遠そうだ。

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