【更新】2008年10月度の外食産業の売上は前年同月比でプラス1.3%・外食回避傾向が続く中、低価格ファストフードが堅調
2008年11月26日 12:00
日本フードサービス協会は11月25日、協会会員会社を対象とした外食産業の市場動向調査における2008年10月度の調査結果を発表した。それによると総合売り上げは前年同月比でプラス1.3%となり、先月のマイナスから転じることとなった。天候が比較的温暖だったことに加え、低価格帯のファストフード業態が好調なのが全体を牽引していると協会側では分析している([発表リリース])。
スポンサードリンク
今調査はファストフードやファミレス、パブレストランや居酒屋、ディナーレストラン、喫茶店などを対象に行われたもので、対象数は事業者数が183、店舗数は28882店舗(既存店はそれぞれ178、25035)と、先月と比べて事業者数・店舗数共に増加している。昨今の新陳代謝・淘汰も中休み状態に入ったのかもしれない。
全業態すべてを合わせた10月度売り上げ状況は、前年同月比で101.3%と前年同月を1.3%上回り、先月から転じてプラスを見せることになった。業界内でもほっと胸をなでおろしていることだろう。業態別では相変わらずファストフードが堅調で、リリースコメントにもあるように、低価格帯、言い換えれば庶民の味方的なポジションにある店舗の堅調さが頼もしい。群を抜いた伸び率を見せていためん類は、今回計測月ではマイナス。店舗数は増加傾向を続けているものの、客数が大きく減少している。そろそろ店舗数増加に客入りの増加が追いつかず、半ば飽和状態に到達した可能性もある。客単価の伸び率はばらつきがあり、「その他」項目で大きく伸びているのは先月と変わらず。協会サイトによればこの項目には「総合飲食、宅配ピザ、給食など」が含まれているため、目新しいスタイルの店舗や事業が外食の新しい力として芽を伸ばしつつあるのかもしれない。
一方ファミリーレストラン部門の伸び率は全般的に今「ひとつ」(今月は幸いにも)。中華が一番健闘している図式はこれまでと同じで、ファミレス系では唯一売上をプラスにしている。焼き肉部門が振るわず、商品単価を工夫するなどして客単価のかさ上げをするも、それ以上に客数が減ってしまい売上高が落ちているのも先月と同じ。事業そのもの・ビジネスモデルが破たんするほどではないが、雰囲気を変える必要があることは間違いあるまいる
客数データ、しいては売上高は天候に左右されるところが多い。10月は東京では雨天日数が多かったものの、比較的温暖な日々が続き、外食店舗には好条件な状態。消費者の消費性向の減退、特に割高感が大きい外食を敬遠する動きが強い中で、売上をプラスに納めたのは各企業の奮闘や(繰り返しになるが)低価格帯ファストフードの貢献によるところが大きい。
全店データ(既存店、新店合わせて)
ここ数か月続いていた「新築されためん類のお店が非常によく頑張っていることが分かる」という傾向はついに連続記録を終え、今回は0.5%と小さいながらも売上を前年同月比でマイナスを記録してしまった。上記でも触れたが拡大路線における「めん類拡大計画」は一息ついた状態といえる。これが「一休み」なら良いのだが、飽和点だとすると今後は生存競争が激化し、互いの店舗が厳しい経営を迫られることになる。先月まで言及していた「過剰供給」のような状態でなければよいのだが。
低価格帯ファストフードが
全体を引っ張る形。
めん類は一休憩か
バブル崩壊か?
小麦や原油の高騰は世界的な傾向として表れてい「た」。昨今は商品先物市場も落ち着きを見せ……るどころか下落傾向にある。原油にいたっては直近最高値の1/3にまで急落している始末。今後少しずつ商品価格にも反映されて、価格面での魅力を付加させることができるだろう。ただしそれ以上に景気の悪化が懸念されており、外食利用のモチベーションが急激に低下している状況は一朝一夕に変わることは無い。外食産業には厳しい時代が続く。
リリースでも言及され今本文でも何度か触れた、「低価格帯のファストフードの堅調さ」は【「借金してでも浪費」から「生活防衛」へ~リセッション入りするアメリカで変わる消費者行動】でも伝えているように、景気後退で先行するアメリカで顕著に見られる傾向である。上場している外食企業でも、これらに属する銘柄の株価は比較的堅調で、業績もそれに応えるだけのものを提示している。
ただし「ファストフード」「低価格帯」の条件を満たしても、個別の戦略ミスなどでこの「波」に乗れない企業があるのも事実。単に通常のセールスを続けるだけではなく、「不況」「サイフが堅い」「IT化」「主要購買層」など各種状況を見極めて、自社の商品にマッチした展開を模索する必要があるのだろう。
(最終更新:2013/08/01)
スポンサードリンク
ツイート